製粉は、機械の声を聴く仕事
田中製粉では、昭和20年代から70年以上使用し続けている14台のロール式製粉機を用いて製粉を行っている。「段階式製粉方法(*)」の工程を12~14回ほど繰り返し、さらに目の細かいふるいにかけることできめの細かい小麦粉づくりを行うのだそうだ。
作業そのものは機械に任せることができるが、小麦の粒度を調整するためにローラーの間隔を計ったり、機械を止めるタイミングを判断するなど、理想の品質を実現するためにはやはり人の手が欠かせないという。
また、長く使い込んだ機械のため、製粉作業中にベルトが外れてしまったり、切れてしまったりと日常的なトラブルも少なくない。ベルトの音や粉の流れからその異変に気づき、瞬時に対応するのは職人の仕事だ。
気温によってはベルトの伸び縮みが頻繁に起こるため、天候に応じた調整にも気を遣わねばならない。日々工場内を歩き回り、よく見て、よく聴くことが何よりも大切になる。
月に一度はメンテナンスの時間に充てる。ローラーの滑りをよくするために、回転軸のベアリング(軸受け)部分に油を差すのが主な作業だ。職人たちは全部で何十箇所とあるベアリングをチェックし、機械本体から、高いところは柱を登って油を差して回る。
それでもやはり経年劣化は避けられないので、その場合はベアリングそのものを交換することになる。工場内の設備はあちこちが複雑に絡み合い、連動して成り立っている。そのためひとつ外すだけでもなかなかの大仕事になるという。
大規模な修繕が必要な場合には、製造元のメーカーに依頼することもある。しかし田中社長によると、製粉機をはじめ古い機械が多いため、既にメーカーそのものが閉業している場合も少なくないそうだ。
「たとえばどこかの部品が壊れてしまった場合、うちの機械だともう製造元が存在しないとか、部品の生産が終了しているということは往々にしてあります。ですがそれも金型の職人さんや建具屋さんに依頼して部品を新調してもらうとか、どうにかやりようはあるんです。
先代を務めた父や六代目の祖父はとにかく器用な人だったので、自分で木を買ってきて部品をつくってしまうようなこともありました。ふるいをかけるシフター(写真上)の中の木板にも、父が昔つくって差し替えたものが使われています。
やはり古くから大切にしてきたものなので、自分たちで手をかけられるところはできるだけ自分たちでやっていきたいですね」
田中製粉
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