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「カカオ・トレース」の波及力

ベルギーに拠点を置くチョコレートメーカーであるピュラトスが、チョコレートの販売で得た利益の一部を産地に還元するというサステナビリティ・プログラム「カカオ・トレース」。「パティスリー アプラノス」(埼玉県さいたま市)のオーナーシェフ、朝田晋平さんは、その効果の程を肌で体感したという。

生産者の家庭に家電が増え、後継者も確保

「ベトナムの産地には2度赴きました。いずれも同じ生産者を訪ねたのですが、1回目と2回目とでは生活が明らかに異なっていたのに驚きました。例えば、家電が増えていて、暮らし向きが変わっていたんです。いいカカオをちゃんとつくれば確実に高く買ってくれるんだ、とその生産者は言っていました。印象的だったのは、その家庭の子どもがお父さんの農園を継ぎたいと言っていたこと。これはすごいことですよね」

朝田さんが使っているのは「カカオ・トレース」の認証を受けた「ショコランテ・ベトナム」。雑味がなく酸味も強くない。ダイレクトかつストレートにチョコレートの味が出ている材料のため使いやすいのだそうだ。そして「その価値に対して価格が抑えめ」だとも。そんな朝田さんの手による商品が以下の3つだ。

焼きショコラ“極” 520円(税込)
チョコレートの味わいをストレートに感じてもらいたい。そんな思いから軽やかな食感と口溶けの良さを重視したため、小麦粉を使わず、少量のアーモンドパウダーと卵とチョコレートのみのサンファリーヌ生地で仕立てた。ムースでもなく焼き菓子でもない、軽快な舌触りのためか、チョコレートの存在感が軸となる味わいだ。

ショコラトリー 1,200円(税込)
小麦粉の量を控えてパウンドケーキとしてしっかりと焼いた一品。「ストレートにチョコレートの味を出したかった」と朝田さん。実は冷蔵庫で冷やしても、温めてアイスクリームと一緒に食べても美味しい。

トロワガーデナー 510円(税込)
前出の「焼きショコラ“極”」の生地を土台に据え、チョコレートムースとシャンティショコラを重ねた作品。ナッツの香ばしさが時折顔を見せつつ、濃厚なチョコレートの重奏感を楽しめる。常連客のファンが多いそうだ。

「カカオ・トレース」が顧客との会話のきっかけにも

朝田さんは、ショウケースの商品POPでは「カカオ・トレース」について敢えて明示していないという。その理由を問えば、顧客との会話のきっかけとしてとても「ツカえる」からだとか。

「チョコレートの原料や製造方法、そして産地の様子については当然ながらご存じないお客さまのほうが多いのですが、カカオ・トレースについて口頭でご説明すると多くのお客さまが関心を持ってくださるんです」

職人のクリエイティビティを刺激し、生活者の欲望を沸き立たせる。ひとつの材料で両者の体験価値を高めるという仕事をしているのが、ピュラトスという材料メーカーの本質なのかもしれない。

Patisserie APLANOS /パティスリーアプラノス
048-826-5656
〒336-0027 埼玉県さいたま市南区沼影1-1-20 フィオレッタ武蔵野103
10:00-19:00
火定休
http://aplanos.jp/

ピュラトスジャパン
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-2-22
https://www.puratos.co.jp/ja