2024 共通テスト化学 回答・解法

実は、共通テスト1日後には出来上がっていたのですが、細かい解説をつけようと思って放置していました。結果蛇足になりそうな気がしたので、そのまま出します。優柔不断はよくないね。

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大問1

問1

正答:④
解法:NH₄⁺ H₃O⁺ はそれぞれ NH₃と H₂O に H⁺ が配位して、[Ag(NH₃)₂]⁺ は Ag⁺ に NH₃ が配位してできたイオン。

問2

正答:①
解法:16g のメタン(1mol) が気化するので、気体の状態方程式 PV=nRT に P=1.0×10⁵ n=1 R=8.3×10³ T=300 を代入すると、 気化後体積 V₁= 24.9(L) 一方で、液体状態の体積 V₂ = 16÷0.42 = 38(mL) 単位を合わせた後、V₁ ÷ V₂ を計算する。

問3

正答:④
解法:ろ紙はコロイドを通過させ、セロハンはコロイドを通過させない。

問4a

正答:④
解法:
① 6.10×10² (Pa) において丁度 0℃で昇華する。そこから下の圧力では、それより低い温度で昇華が始まるので誤りではない。
② 圧力を加えるということは状態を表すグラフ内の点が上向きに移動するということ。題の場所の上方向は液体の範囲であるから、氷は融解する。誤りでない。
③ 三重点では固体・液体・気体が共存する。正しい。
④ 9×10⁴ (Pa) は 水の沸点が100℃である 1.01×10⁵ (Pa) より低い圧力条件下。グラフを見ると 沸点は圧力が大きければ大きいほど高くなるので、9×10⁴ (Pa) における沸点は明らかに 100℃より低い。誤り。

問4b

正答:③
解法:
① グラフを見ると、0℃水の密度は 0.9998 (g/cm³)  0℃氷の密度は 0.917 (g/cm³) 。密度が大きいものは同質量で比べたときに体積が小さくなる。よって、氷1gの体積は 水1gの体積より 大きい。正しくない。
② グラフを見ると、氷の密度は 0℃で最小ではあるが最大ではない。正しくない。
③ 12℃水の密度は およそ 0.9995 (g/cm³)  -4℃過冷却水の密度はおよそ 0.9994 (g/cm³)。よって12℃の水の密度は -4℃での過冷却の水の密度より大きい。正しい。
④ グラフを見ると、4℃の水の密度が最も大きいため、4℃以下の水は上方にに移動する。(というか液面から冷却しているので、『上方から動かない』がより正確か)正しくない。

問4c 

正答:⑤
解法:氷の溶解熱 6.0 kJ/mol に対して 6.0kJ の熱を与えたため、1molの氷が解けた。したがって 2mol → 36g の氷が残ることになる。0℃における 氷の密度は 0.197 (g/cm³) より 36÷0.197=39.2‥ したがって⑤

大問2

問1

正答:①
解法:
吸熱反応であるため、エネルギーを吸収している ②と③はすぐに除外できる。あとは、溶解する際のエネルギー図を選択すればよいので、 NH₄NO₃ + aq から NH₄NO₃aq になっているものを選べばよい。
解説:

問2

正答:③
解法:
① 温度を下げることは、逆反応である発熱反応を促進させる。誤り。
② 常識的な圧力下の800℃においてH₂Oは気体であるので、反応前後で気体分子数の変化が発生しない。したがって圧力を上げても平衡は変化しない。誤り。
③ 圧力一定でH₂を加えると H₂の分圧が上昇し、H₂を消費させる方向の反応が促進される。正しい。
④ 圧力一定でArを加えても 反応に寄与する気体分子の分圧は変化しない。誤り。

問3

正答:④
解法:
酸化数の変化から、電子が極間でどれだけ移動したかを追う。

アルカリマンガン電池
2MnO₂ + Zn + 2H₂O → 2MnO(OH) + Zn(OH)₂
Zn → Zn(OH₂) Znの酸化数は2増加
したがって、e⁻は2個移動

空気亜鉛電池
O₂ + 2Zn → 2ZnO
Zn → ZnO Znの酸化数は2増加
したがって、e⁻は2×2 = 4個移動

リチウム電池
Li + MnO₂ → LiMnO₂
Li → LiMnO₂ Liの酸化数は1増加
したがって、e⁻は1個移動

あとは 1kg の消費当たりの移動電子量を求めればよいが、律儀にそんなことせずに、4電子あたりに必要な反応物質の質量をそれぞれ求めて、質量の小さい順に並べるほうが計算しやすいだろう。

つまり、
アルカリマンガン電池
174(2MnO₂) + 65(Zn) + 36(2H₂O) = 275
275/2e⁻ → 550/4e⁻

空気亜鉛電池
32(O₂) + 130(2Zn) = 162 
162/4e⁻

リチウム電池
6.9≒7(Li) + 87(MnO₂) = 94
94/e⁻ → 376/4e⁻

よって 4e⁻を得るのに必要な質量は アルカリマンガン電池>リチウム電池>空気亜鉛電池 の順番であり、1kgあたりに得られる電気量の大きい順はこの逆で 空気亜鉛電池>リチウム電池>アルカリマンガン電池 となる。

問4a

正答:④
解法:
[HA] ⇆ [H⁺][A⁻] における各化学種の濃度変化を追う。
c 0 0
-cα cα cα
c(1-a) cα cα

今 $${K=\frac{[H⁺][A⁻]}{[HA]} = \frac{c^2α^2}{c(1-α)} = \frac{cα^2}{(1-α)}}$$
αが十分小さい場合の近似式 $${α=\frac{α}{1-α}}$$ を利用すると、
$${K=cα^2}$$
よって、$${cα^2}$$が一定となっているグラフを選べばよい。
それを満足するグラフは④しかない。

問4b

正答:②
解法:滴下量2.5mL のときの [H⁺]の値は与えられ(8.1×10⁻⁵ mol/L)、 [HA] [A⁻] の値はグラフから読み取れる(0.05 mol/L)(0.02 mol/L)のであとは $${K_a = \frac{[H⁺][A⁻]}{[HA]}}$$ の式に代入するだけである。
計算すると、②となることが分かる。

問4c

正答:④
解法:
① 基本的には、あらゆる水溶液において陽イオンの総数と陰イオンの総数は等しい。誤りではない。
② 水の水溶液における水のイオン積は常に一定である。誤りではない。
③ HA+OH⁻ ⇆ A⁻ + H₂O の電離平衡の移動によって [A⁻]が増加している。誤りではない。
④ 確かに [A⁻] は減少するが、弱酸HAの共役塩基A⁻の平衡 A⁻ + Na⁺ ⇆ NaA がNa⁺の増加により右に傾くためである。中和反応ではないので誤り。

第3問

問1

正答:①③
解法:
① アルコールは単体のナトリウムと反応してナトリウムアルコキシドを生成する。保存には適さないので誤り。
② 選択肢の通り。誤りではない。
③ 濃硫酸を希釈する際に 濃硫酸に水を少しずつ入れると 溶解熱により水が沸騰してしまい 硫酸が飛び散る危険性があるので、大量の水に濃硫酸を少しずつ溶かさなければならない。誤り。
④ 選択肢の通り。誤りではない。
⑤ 有毒な気体を扱う時はドラフトチャンバー内で扱うことが推奨される。誤りではない。

問2

正答:④
解法:
① ハロゲンの融点と沸点は周期が大きくなるほど高くなる。適当である。
② ハロゲンの単体は周期が大きくなるほど水に溶けにくい。適当である。
③ ハロゲン化銀はフッ化銀を除き全て難溶性塩である。適当である。
④ ハロゲン単体の酸化力は周期が大きくなるほど弱くなる。よってNaAt水溶液に臭素水を加えると、酸化還元反応が発生し、Atが析出すると考えられる。適当でない。

問3

正答:③(16) ④(17)
解法:ステンレス鋼は鉄ークロムーニッケル合金のこと。トタンは鉄の表面に亜鉛の被膜がある金属材料である。

問4a

正答:③
解法:各元素の酸化数の変化を追う。
Ni: NiS(+2) → NiCl₂ (+2)
S: NiS(-2) → S(0)
よって、ニッケルは酸化も還元もされず、硫黄は酸化されることがわかる。

問4b

正答:⑤
解法:
反応全体をみると、CuCl₂は触媒としての働きをするとみることができるので、塩素の消費量には関わってこない。
したがって、式(1) と 式(2) を合わせると、
NiS + Cl₂ → NiCl₂ + S 
となるので、NiS と Cl₂ の消費物質量比は 1:1
NiS 36.4kg は 400molであるから、 Cl₂の消費物質量も 400molとなる。

問4c

正答:②
解法:
真面目にやると時間が掛かるので最短の思考で考える。
反応式を見ると、陰極ではNiの析出と水素の発生が同時に起こる。つまり、陽極で塩素イオンが陰極に対して供給した電子がNiの析出と水素の発生に振り分けられていることになる。したがって、$${V_{Cl₂}>V_{H₂}}$$ であることが分かる。Niに振り分けられる電子の量は Cl₂ と H₂ の発生量の差に対応するはずであるから、①③④⑥は不適当。
$${\frac{P(V_{Cl₂}-V_{H₂}}{RT}}$$ がそのまま Niの析出に対する電子 2e⁻ の物質量になっているため、無駄な係数は必要ない。よって②が適当。

大問4

問1

正答:③
解法:エチレン2分子に対して酸素分子1つが反応し、Aを2分子生成する。したがって、生成する分子はエチレンから酸素が一つ増えた分子となる。よって③のみが適当。

問2

正答:①
解法:
① アミロペクチンは冷水にはとけにくい。誤り。
② 選択肢の通り。誤りではない。
③ 選択肢の通り。誤りではない。
④ 選択肢の通り。誤りではない。

問3

正答:⑦
解法:
ニンヒドリン反応はアミノ酸のアミノ基に対して反応し呈色する。
キサントプロテイン反応はベンゼン環をもつアモノ酸に対して反応し、呈色する。
ビウレット反応はトリペプチド以上のペプチドに対して反応し、呈色する。
したがって、今回は全ての呈色の条件を満たすので⑦が正答である。

問4a

正答:②
解法:
① 選択肢の通りである。誤りでない。
② サリシンはグルコースの還元性を示す、ヘミアセタール構造がサリシルアルコールとの結合でつぶれているため還元性を示さない。他の官能基も還元性を示すものではないので、したがって銀鏡反応は示さない。誤り。
③ 選択肢の通りである。誤りではない。
④ サリチル酸メチルのこと。誤りではない。

問4b

正答:②
解法:
①はβラクタム環構造を作るには炭素数が不足しており、③以降は逆に炭素数が過剰である。よって②が正しい。

問4c

正答:⑤
解法:化合物Aになる過程で、混酸によりトルエンがニトロ化されている。その後、過マンガン酸カリウムによって化合物Aのメチル基がカルボキシル基になる。この条件を満たす化合物は⑤しかない。

大問5

問1

正答:④
解法:
尿3.0mL 中にテストステロン 5.0×10⁻⁸(g)のとき A⁺の信号強度が100である。
ある選手の尿3.0mL中の信号強度は10なので、この選手の尿3.0mL中には 5.0×10⁻⁹(g) の テストステロンが含有されていることがわかる。
求める数値は 尿90mLあたりの数値であるから、求めた数値を30倍した 1.5×10⁻⁷(g)が答えとなる。

問2

正答:③
解法:
実験Ⅰで調整した溶液から100mL取り分けた溶液に含まれる Agの物質量を a (mol) とすると、実験Ⅱで調整した溶液に含まれる Agの物質量は a+5.00×10⁻³ (mol) となる。¹⁰⁹Agの物質量はこの前後で変化していないので、$${\frac{1}{2}a = \frac{1}{4}(a+5.00×10⁻³)}$$ が成り立つ。
これを解くと $${a=5.00×10⁻³}$$(mol) これは実験Ⅰの溶液100mL分の物質量なので、求める物質量(金属資料X中のAgの物質量)は 2a = 1.00×10⁻² (mol)

問3a

正答:④
解法:クロロメタンには CH₃³⁵Cl と CH₃³⁷Cl が 3:1の割合で含まれているため、クロロメタンをイオン化すると 相対質量 50と52に 3:1  の比でピークが表れるはずである。この条件に当てはまるグラフは④しかない。

問3b

正答:②
解法:質量数と相対質量の差を考える。質量数を基準として、 酸素は減 水素は増 窒素は微増である。
つまり、28から下方向にずれているピークは CO⁺ のものであることがわかり、 28から上方向に大きくずれているピークはC₂H₄⁺のものであることがわかる。よって答えは②となる。

問3c

正答:①
解法:メチルビニルケトンを右の点線で切れば 相対質量 43 と 27の断片が、左の点線で切れば 相対質量 15 と 55の断片が発生する。これらすべてにピークが存在するのは①しかない。  

ちょっとした感想

計算は少なく、一方で読み取りが多く、そういう訓練をしていないとあっという間に時間が過ぎてしまうかもしれない。
(大問5を除けば)良問が多いので、それぞれの問題にはあまり文句はない。
問題なのは大問5。冷静になれば簡単だが、受験生は基本冷静じゃないのでわけわからん問題に面食らって正常な思考ができなくなる可能性大。パターン演習系の子は特に。
去年のLambert-beerや 今年のMSしかり、大問5はこれから分析化学が固定になっていくのだろうか。次NMRとかクロマトの読み取りとかさせてきても僕は驚きません。


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