吹奏楽パート別カレー選手権
結構はっきりしたカレーの思い出がある。弱小吹奏楽部の記憶～番外編～ということで。
中学1年生の夏休み。部員の親睦を深める意味合いで、みんなで料理を作る会が催された。記念すべき第1回のお題は「カレー」だった。
パートごとに、「楽しく作ろうね」ということで始まったのだったが、いつの間に「どこのパートが一番旨いカレーを作れるか」と趣旨が変わってきていた。パート別カレー選手権の開幕である。
このカレーというのが、かなりパートの雰囲気に寄っているというか、漠然とある「この楽器やってる人、こういう人多い」というのを反映していて大変面白かった。
私の所属するサックスパートは、実にスタンダードなカレーを作った。なんのひねりもなく、バーモンドカレーのルー中辛で（このチョイスもすごくない？）、じゃがいもにんじん玉ねぎ豚肉。先輩がじゃがいもとにんじんを持ってきてくれたので（地方あるある・実家農家）、余った予算でフルーチェを買った。めちゃくちゃ普通に旨かった。
全員そこそこ料理をやっているのであっという間に完成し、片付けは洗う・流す・拭く1・拭く2・仕舞うといったように、完全な分担作業をした。5人ってのもちょうどいいんでしょうね。
顧問の先生は「ほら～！サックスパート片付け終わって優雅にデザート食べてるじゃない！家庭科室1時までなんだからさっさと片付けちゃいなさい！」ととなりのクラリネットパートに呼びかけていた。
私の周りのサックスの人達は、根は真面目で優等生タイプばっかりだった。でも、ちゃっかりデザート作っちゃう、みたいなところに性格が出ている気がする。
時間がかかっていたのはそのクラリネットだった。買い出しから戻ってきたのが一番遅かった。人数多いしね。てかみんなあんなに器用に連符やってんのに、なんでにんじんの切り方わかんないんだよ。手元がおぼつかなさすぎる。大体こんぐらいの厚み？とか、めちゃくちゃこっちに聞きに来るので面白かった。
クラリネットパートはチョコレートと蜂蜜を入れたようで、先生曰く「あらあなたたち、美味しくできてるじゃない！」とのことだった。（先生、「音楽の女の先生」の反応すぎる。かわいいな～）
調理に時間はかかったが、片付けはスムーズだった。3年生は結構ドタバタしていたが、1，2年生はしっかりしてるのね。
フルートはクラリネットからドタバタ成分を抜いて、似たような感じである。蜂蜜を2パートで共同で使ったようだ。ここ仲良いんだよな～。フルートパートは先輩が後輩を可愛がる、という気質が毎年受け継がれていて、どことなく上品な女の子達の集まりだった。
ただそれを凌駕する遅さのパートはトランペットだった。作業が遅いわけじゃないのだが、「食べる」のに時間がかかっているのだ。なぜなら、激辛だからだ。ちょっと味見させてもらったら信じられないくらい辛くて、自分達で食うのに作る辛さじゃないだろと思った。蜂蜜をたくさんかけながら涙目で食べている。食べ始めあんな楽しそうにきゃっきゃきゃっきゃしてたのに、彼らはすっかり元気をなくしている。先生から「ちょっと、食べ物粗末にするんじゃないわよ！」と指摘が入ったので、食べざるを得ないらしい。もっともな話である。トランペットは完全・根明集団なので、「激辛作ろうぜ！」というノリになったのが、はっきり想像できた。中学生のノリでかわいいし、そういうところが彼らの愛すべき点である。
カレーの様子は見に行けなかったが、トロンボーンパートはなんならサックスより早く片付けが終わっていた。ちゃっちゃと作って、はいおしまい！って。3人よ？！各学年1人ずつのトリオで、いったい何を話しながら作っているのか見当も付かない。トロンボーンパートは歴代部長副部長が多くて、かしこ～な人が多い。みんなすごく器用だし要領が良いのね。
何してるのか分からないNO.1、パーカッション。ごめん、覚えてない。一番調理台遠いかったのよ。
サックスのもう一方の隣はホルンだった。たぶん、牛肉買ったのホルンだけだったな。ちょっと予算超えてない？？？ホルンは割とサックスと似ている印象だが、ルーはジャワカレーだったな。こう、ちょっと良いものを使ってる感じする。こだわりがしっかりある人達なんだと思う。調理は割と先輩の独壇場だったな。一番下っ端の一年生は皿洗いをしていた。
ユーフォチューバは料理が得意な子が多くて、協力して蒸しケーキを作っていた（？！）。小1時間で作るクオリティじゃない。他よりちょっと時間はかかったけど、カレーの具材は丁寧に切られているし、辛さもちょうど良く、ケーキの見栄えもふっくらと可愛らしいものだった。家庭科室いっぱいのカレー臭の中に漂うあま～い香りに、みんなうっとりだわな。彼らはよく気がつくし、面倒見が良いですからね、料理もそんな感じがしたな。
というのが、私の記憶の中のカレー選手権である。うわっ、でもさ、実際と全然違ってたら悲しいな～。結局勝敗ってどうなったんだったっけ。もう既に中学生の時の思い出って遠い昔すぎるものな～。いや、「今」が過去と最も近いんだから、忘れたくないものは、少しでも早く書き残しておこうな。