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Charles Smith ロングインタビュー 5

すでに、パート5です!ワシントン州のアイコニック・ワインメーカー チャールズスミスの最新のインタヴュー音源の文字起こしをしました。

その1はこちら

元になったインタヴューはこちらです。2時間もあります(>_<)

キングコール


(C)さて次はプリミティーヴォにする? いやせっかくカベルネを飲んだんだからプリミティーヴォは最後にして、キング・コールにしよう。


 キングコールのラベル

キング・コール2018だ。
カベルネが75%、シラー25%。キングコールはストーンリッジ・ヴィンヤード100%。さっきも話したように僕はブレンドは一切しないからこれは混醸(異なる品種を一緒に発酵層に入れて発酵させる事)している。シラーは全房で足で踏んでブドウを潰している。

中略

( I )ラベルの事について話してもらえますか?何人かの人たちがこのラベルデザインにかかわっているの?

(C)いいえ。ひとりだけ。僕の親友のリッキー・コフだけ。僕らは90年代初めからの友人で彼女はデンマーク人で素晴らしい人、ロッカーでもある。彼女はクールで、信じられない程すごい才能を持ち、ありえないくらい頑固で、しっかりと自分の考えを持っている。何度も言うけど、素晴らしい才能の持ち主なんだ。僕らは長く友人でいるけど、僕も彼女も妥協はしない人間だ。
僕がワインの名前と、だいたいのデザインのコンセプトを彼女に渡し、彼女がそれをもっと上に高めてデザインする。そして僕らは話し合い、どんどん高め作り上げていく。

このブドウが育った地の名前は“ロイヤル・スロープ”だ。僕は‘ロイヤル・シティー・シラー’をすでに造っていて、このワインにはカベルネが入っていたからこのワインを“キング・コール”と名付けた。コール(石炭)は暗さの中心の色で、キング(王)は‘ロイヤルシティ’のロイヤル(主君)からとった。そして悪魔の様なガイコツのデザインを“キング・コール”に選んだんだ。
裏ラベルには少しひねりも入れたかった。King Cole・・・KC・・・なんだかわかるかい?Kansas City Royals(カンザスシティ・ロイヤルズ-アメリカ大リーグのチーム)だよ。僕はミズーリ州のカンザスシティが大好きなんだ。カンザスシティはめちゃめちゃ良いところだ。BBQでも有名で楽しいし、食べ物も美味いしお気に入りの場所なんだ。だからこのカンザスシティへの小さなオマージュも入れたんだ。


( I )もしかして、そうかなー。とは思ったけど、当たり前すぎて言えなかったよ。

(C)実際このワインの30%はカンザスシティで売れてるよ。

( I )なんだか、ブリスケット(肉の部位)を焼いてるスモークの香りがしてきた。間違いなくバーベキューにこのワインは合うだろうね。

( I )このワインは間違いなく、今日の他のワインとは全く違うね。ワラワラらしいというか、これ以上は無いと言えるよ。

(C)まあね。このワインは100ドルするし、400ケースしか造ってない。間違いなくワイン批評誌では好評価を得て、スコアも高いだろうね。このワインは他のとは同じ様には造れない。特別なワインだ。


2022年10月9日


これは僕がワインを造り始めた頃に目標にしていたワインで、、、、その頃の人生のゴールは、年間1000~2000ケースワインを造って10万ドル程稼ぎ、可愛い女性と出会って、小さな村に住み、子供たちと一緒に暮らす。フランスやスペインやイタリアの昔のワインメーカーみたいに、いつも靴と全くあっていない靴下を履いて、シャツも似合ってないし、ネクタイもジャケットも似合わないそんな爺さんになりたかったんだ。かっこいいだろ。80歳になったらハンカチを後ろポケットにつっこんで公園のベンチに座ってる感じのさ・・・そしたら10代の若者が近寄って来て、「おい、あれ見ろよチャールズスミスだぜ。ちょっといかれてるから、あの爺さんには近づかない方がいいぜ。」なんて言ってる感じの・・・

でも全然思ったのとは、違う感じになってしまった。

ワインメーカーにはなりたかったけど、こんなに大きなワイナリーのワインメーカーになるつもりはなかったんだよなぁ。


僕はカンフーガールを生み出して、ハウスワインをつくり、両方とも売却した。
なぜって僕は金曜の夕食に、マカロニチーズと缶入りトマトスープが出て、父親が子供たちに食パンをちぎって渡すような普通の家の出身なんだ。僕は自分の身の程をわかってるし、僕の夢はワインメーカーになる事だった。
僕はワイン造りに成功し、金銭的にも裕福になり、たくさんのトロフィーをもらったけど、それでも僕の夢は単純に「ワイン」なんだ。次郎は鮨の夢を見て(2011年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画。85歳の寿司職人で「すきやばし次郎」の店主である小野二郎の姿と、伝説的存在である父に追いつくべく奮闘する長男を捉えた作品)、チャールズ・スミスはワインの夢を見るんだ。
僕は今61歳でこれからもたくさんのワインを造っていくつもりだよ。出来ればもっと美味いワインを造れるようになりたい。今日はここで、Podcastで話すことが出来て幸せだし、君たちも、どこかで聞いてくれてる人たちも楽しんでくれてることを祈るよ。これは想像以上に幸せな出来事なんだ。
僕は僕がやるべきことをやっているだけだし、僕一人でレースを走ってる。ワシントン州にやって来て、ただただ走り続けてるんだ。そして61歳になった今は、このサブスタンス・ピノノワールを造っている。
ワインの仕事って本当に素晴らしいと思わないか?

( I )いや本当にその通り!100%賛成だよ。

次はパート6です→


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