W2D5 渇症-갈증
ルナはブレスレッドを操作したのち、いったん水中へ。
身体が変身したのを察知すると、剣を握り、人間に剣を突き刺して惨殺していた戦闘兵一人に切りかかる。
ルナの剣は戦闘兵の喉に刺さる。
彼女はそのままその剣を下へと引き下ろす。
そしてその体を蹴りつけると、戦闘兵は水中へと落ちていった。
ルナはそのまま近くの兵士に剣を突き刺し殺害。
人間を解放する。
その間に戦闘兵はルナのもとへと集まり、剣を構える。
彼らの足元には魔法陣が展開され、今にも何かしらの攻撃が加えられようとしている。
ルナはすぐさま足を蹴り、その場を離れ、ウォータースライダーの上へ。
ウォータースライダーは少しばかり滑りやすいが、姿勢制御のおかげで滑ることはなかった。
ルナはそこで魔法陣を展開。
青い魔法陣を敵に照射し、その部分に銃を撃つ要領で魔法を放つ。
青い魔法弾は魔法陣の中央へと命中し、星形の魔法陣に沿って氷の華を作り出す。
氷の華は次々と花開き、戦闘兵を閉じ込める。
ルナが剣をウォータースライダーに突き刺すと、花はパリン、という音を立てて粉砕される。
キラキラ輝く結晶を、人間たちはぼんやりを見ていた。
しかしながら戦闘兵はいまだにいる。
ルナはウォータースライダーから空中回転して飛び降りると、剣を振り、斬撃で敵兵を撃つ。
敵兵は冷凍魔術の込められた斬撃により、胴体を真っ二つにされ、その場で崩れ落ちる。
さらにルナは剣を振り、近くにいた戦闘兵の首を切り落とすと、彼の持っていた日本刀を手に握る。
合わせてルナは両手剣を片手剣にモードチェンジをすると、二つの剣を握る。
そのルナの様子に驚いたのか、一瞬兵士たちは行動を止める。
ルナはまるでプロペラのようにくるくると回ると、近くにいた兵士たちを次々と切りつけ、プールの中に落としていく。
その時、ルナは自身を狙う姿を察知する。
ルナはその場で一人の兵士の背中を取り、彼の襟をつかむ。
敵兵の放った魔弾は兵士にぶつかり、兵士の内臓や人工機器をまき散らす。
ルナは敵が銃型の武器に魔力を充填している間にルナは敵めがけて剣を向け、冷凍魔弾を発射。
敵兵はその場で硬直し、落下。
他の敵兵も巻き込み、砕ける。
そして最後の戦闘兵に先ほどの兵士の剣を投げつけると、そのまま真っ赤な血液を吐いて倒れた。
「なるほどねぇ」イルカ傀儡は楽しそうに言う。
「こんなところで何している!」ルナは叫ぶ。
せっかくの休みを台無しにされた怒りもあるが、それ以上に、まったく無関係な人間を襲うことにいら立ちを覚える。
一体何があって、彼らを殺さなければならないのか。
その怒りに心のキャパシティがいっぱいになっていくのを感じる。
始めての感覚に、ルナはわずかに戸惑う。
心に正義に満たされる高揚感と、少しの衝動性。
その正体が、なんだかわからない。
「あら。あなたも感じているのかもね」イルカ傀儡は笑う。
ルナはじっと、敵兵を見る。
「目が少しばかり血走っているわね。それが衝動なのよ」
イルカ傀儡の言葉を聞き、ルナの心が少しずつ揺らされていく。
ルナはそれを振り返り、じっと内省する。
自分の中の心、そして衝動。
その正体は一体何なのだろうか。
ルナはわからず、顔を落とす。
「あら。その衝動は何かしら?」
ルナはきっと敵を睨みつける。
「何が言いたい!」ルナは叫ぶ。
「あなたのように改造されて何も処置を受けていない傀儡はね、不完全なの。身体だけは強くなっているけれど、精神は弱いまま。それを祝福てくださるのがアマテラス様とサタン様なのに、それを受けず、悪魔に自身の身体、心、霊を売った。あなたは背負わなくてもいい、衝動、感情、情動を負い苦しむことになる」
ルナはじっとイルカ傀儡を睨む。
イルカ傀儡の足元に魔法陣が展開され、ルナの身体が浮く。
心のなかに激しい情動が駆けめぐる。
この正義を敵にぶつけなければならない。
敵をせん滅させ、この世に平和をもたらさなければならない。
思考ではなく、衝動。
平和ではなく、正義。
圧倒的な力で弱きをねじ伏せ、世界を成長させなければならない。
そして太陽の力のもと、自身の力を集め、平和を実現しなければならない……。
ルナの心が少しずつ、しかし確実にひっかきまわされていく。
ルナはその気持ちをなだめるため、深い息を吸う。
そしてゆっくりと吐くと、前を向く。
――殺したい。
その衝動がわく。
「今あなたは、仇となる私を殺したいといった気持でいっぱいのはず。でも、あなたはそんなことをしたらいけない、という良心が働いて、とっても苦しいはず。その気持ちをなだめるためにどうしたらいいかしら。
ルナはその場で崩れ落ち、眼を大きく見開く。
殺意と、優しさ。
一体どのようにすればいいのか、ルナにはわからない。
「それが完全な改造を受けなかった兵士の苦しみなのよ」
ルナの目はすっかり血走り、剣を握る手には汗が浮かぶ。
するとイルカ傀儡は一組の四人連れの人間の家族をさらうと、天井まで彼らを念力で引き上げる。
「さっきかけた魔法はね、理性を強める魔法なの。きちんと改造されていれば不完全な理性なんてないから、躊躇なくしもべとして敵を殺すことができるわ。でもあなたの意識は人間。どうなるかしらね」
その言葉に、ルナは恐ろしさを感じ、眼を大きく見開く。
イルカ傀儡は魔法陣を家族の下に展開。
強い重力が発生しているのか、その場だけわずかにゆがんで見える。
「やめろ!」ルナは叫ぶ。
イルカ傀儡はその家族を突き落とす。
家族は重力に引き付けられて高速で落下し、腕や脳を巻き散らして息絶えた。
その様子を見ていた人間たちは、ルナに対して睨む。
ルナはその目に、思わず顔を落とした。
「こうやってもお前の中にある理性のせいで戦うことはできない。でも理性が外れたら、どうなるか教えてあげる」
イルカ傀儡は言うと、パン、と手を叩く。
その瞬間、ルナの心は衝動で満たされ、心だけではなく体をも突き動かす。
意識が吹っ飛び、剣を握り、これから経験しようとする肉の感触、血の匂い、死を施す喜びに心が急速に満ちていく。
その感触にルナは戸惑う暇なく支配され、剣を握り、魔法を展開。
剣の先からは氷の柱が伸び、強い冷気を発する。
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