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Polarized Training について

世の中には様々なトレーニング方法がありますが、エンデュランススポーツをされている方に知っていただきたい"Polarized Training (POL)"という方法を紹介したいと思います。


こちらのトレーニングはStephen Seiler氏によって提唱された理論の1つで、エンデュランススポーツの選手のトレーニングデータを分析した結果、低強度 : 高強度の割合が大凡8 : 2 の割合で取り組まれていたという結果に基づき提唱された理論になります(1)。


こちらの他にも冒頭で説明したように"様々なトレーニング方法がある"と書きましたが、エンデュランススポーツ(こちらの記事の対象としては、主にサイクリスト)のアスリートが取り組むべきトレーニング方法としては

・HVT ... High Volume Training 
・THR ... Threshold Training
・HIIT ... High Intensity Interval Training
・SIT ... Sprint Interval Training

などがあります。


これまでに、数々のサイクリストを指導させていただいてますが、プロサイクリスト(またはそれに準ずる能力を持つサイクリスト)を除く、多くのサイクリストはTHR(LT/FTP付近の強度でのトレーニングがメイン)を選択している方が多いという印象があります。※国内のサイクリストのパワーデータを100件以上解析・指導したり、トライアスリートやランナーのパワーデータおよび心拍データも解析・指導していますが、大体の人はTHR。


そうした方のカウンセリングすると"FTP(Functional Threshold Power)を伸ばしたいから"という理由によりTHRになっている方が7割、残りの方は"なんとなく"という感じで実施されているようでした。※THRを知っているわけではなさそうでした。


前者の方に対して"FTPを伸ばすなら高強度のワークアウトを適度に導入する必要がありますよ"と説明すると、"私が伸ばしたいのはFTPだからそれよりも高い領域は必要ない"という方もいました。


実は、FTP強度をメインに走るよりも高強度のワークアウトを適度に入れることでFTPの向上率が高い向上するのですが、なぜそうなるかを自転車競技にまつわるPolarized Trainingをテーマにした論文を通して説明したいと思います。


論文

今回紹介する論文は、以下の論文になります。

Six weeks of a polarized training-intensity distribution leads to greater physiological and performance adaptations than a threshold model in trained cyclist

概要

12名の男性サイクリスト
年齢37±6歳 : 体重76.8±6.6kg : 身長178±6cm : PPO 4.7±0.5w /kg
※PPO (Peak Power Output) ... Rump Up Test(100wスタート/3分毎に40w向上)に基づいた最大出力 (今回の論文上ではわかりやすい様に 運動指標の定義として当論文における FTP だと思っていただければと思いますが、詳しくは有料記事にて説明します)


に対して

POL ... 低強度 80% : 中強度 0% : 高強度20%
・THR ... 低強度 57% : 中強度43% : 高強度 0%

の2種類のトレーニング方法で6週間トレーニングした結果、どの様にフィットネスが変化したかを確認するものでした。(6週間のTraining Volumeはこちら )


また、本論文における各強度の基準は以下の通りに区分されます

低強度 : 血中乳酸値2.0mmol以下 または PPO 65%以下
中強度 : 血中乳酸値2.0-4.0mmol または PPO 65 - 80%
高強度 : 血中乳酸値4.0mmol以上 または PPO 80%以上


結果

以下の様にまとめられています。

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・POL ...  LT18 ± 18w / PPO 27 ± 18w 向上
・THR ...  LT4 ± 31w / PPO 9 ± 17w 向上

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40km TTでは
・POL ... 出力 8 ± 8%向上 / 時間 2.3 ± 2.2分短縮
・THR ... 出力 4 ± 6%向上 / 時間 0.4 ± 2.9分短縮


このように、中強度の割合を多くする(THR)よりも、適度に高強度を実施(POL)した方が、

・LTパワーの向上
・Rump Up Test での PPO(最大パワー値)の向上

という効果が得られることが判明しました。


他にもPPO95%での運動時疲労困憊に達するまでの時間の遅延などの効果が得られますが、上記の2点からFTP(LT領域での運動強度)を伸ばしたいならば、THRよりもPOLを行う方が効果的という一つの証明にもなります。また、6週間の運動時間から考えても効率的といえると考えられます。


あなたはFTPを伸ばそうとしすぎて、盲目的に中強度(LT Zone)"でのトレーニングばかり行っていませんか?


具体的にどうしたらいいのか?と疑問に思う方も多いと思った方は、POLを意識して少々アクセントを加えた1週間のトレーニングプログラムを以下の記事にて無料で配布しておりますので、4-6週間ほどお試しいただければと思います。


さて、ここまでPOLの話をして書くのも何ですが…


今回紹介したPOL以外のTHR / HIIT / HVT / SIT も"各目的に対して最適なトレーニング方法である"と言えます。今回は"FTPの向上"という目的にたいしてPOLが最適そうだというお話だということを忘れないでいただきたいと思います。


では、それぞれのトレーニング方法が何に対して有効であると考えられるのかについては、また別の記事として書いていきたいと考えています。


また、こちらの記事を読んでくださっている方の多くはパワートレーニング を行っている人だと考えられるので、少しだけパワートレーニングに基づいたお話をしたいと思います。


論文をパワートレーニングに置き換える

ここからは、パワートレーニングを少し踏み込んで理解したい方向けに説明します。


今回の論文で説明した、3つの強度をもう一度確認してみましょう。

低強度 : 血中乳酸値2.0mmol以下 または PPO 65%以下
中強度 : 血中乳酸値2.0-4.0mmol または PPO 65 - 80%
高強度 : 血中乳酸値4.0mmol以上 または PPO 80%以上


こちらの論文では、運動強度の指標を"PPO"にて説明されましたが、あまりピンとこない方も多いと思います。やはり"FTPで説明された方がしっくりくる"という方も多いと思いますので、FTPに置き換えて説明したいと思います。



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