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それは私にも分かりません。

私は性自認について何度か自称を変えていて、今はバイジェンダーかつノンバイナリートランスと名乗るのが丁度しっくりくるのでそうしています。

(私は激しい性嫌悪を持っていますし、性欲が人には向かないアセクシュアルでもありますし、恋愛感情に性別は関係ないと感じているパンロマンティックでもありますが、今回は性自認についてのみ扱わせてください)


よく、トランスジェンダーの当事者からこんな話を聞きます。
MtFさんからは「幼稚園の頃からスカートを履いていて髪も伸ばしていて、女の子に混じって遊んでいました」
FtMさんからは「スカートがずっと嫌だったけど中学では校則でスカートを強制された。女子がスラックスを履いてもよい高校を必死に探していた」

私には、そういったエピソードはありません。
ただ何かに苛立っていて、なんで生まれてきたのか小さい頃からずっと考えていて、小学生の後半と、中学生の後半は不登校で、ここでは流しますが自殺未遂したりしただけです。
すべて男性の姿として、男性の表象を纏いながら。

いくらかパンチの弱いエピソードを紹介すると、中学生くらいの頃、『ザ・アーブズ シムズ・イン・ザ・シティ』というゲームに出会いました。
性別や外見を自由に設定した主人公で大都市や郊外を探索し、人と交流し、恋愛したりしなかったり、成り上がったり牢屋に入れられたりしながら悪い奴の陰謀を阻止するという筋立てのゲームでした。
私はそこで女性主人公を作り上げ、自らの分身として活躍させ、性別問わず様々なキャラクター相手に恋愛を楽しみました。
主人公のあらゆる欲求を叶えながらアルバイトや学問に追われ、街の人と交流する。
自分の人生以上に、この女性主人公の歩みを大切に思っていた時期がありました。

それは、トランスジェンダーらしい性別違和の現れでしょうか。
私はそれではしっくりこないと思います。
不登校だったり鬱屈した日々の中、ライフシミュレーター系のゲームに初めて触れてドハマリしただけでは?

他にも、高校の頃演劇部に入っていましたが、そこで主人公に的確な助言を与えるオカマ役を演じるように言われて、私の中にある何かに触れられたような気がして激しく不愉快になったことくらいです。

弱い。
エピソードがそんな劇的でもない。

そして大学に入ったり卒業したり新卒で入った会社をすぐ辞めたりバイト先を転々としたりして、28歳のゴールデンウィーク、つまり2024年現在から見て去年のことです。

ふらっとジェンダークリニックを受診し、初診のまま流れで最初のホルモン注射を行いました。

なんで?
正直、今でもわからないです。
ほのかにそのようにしたい欲求があったのは認めましょう。
けど、急にアクセルを踏み込んだ理由が分からないんです。

バイト先で班長も任されるくらいまでになったし、この調子で男として立派にやっていけるぞ、などと考えていた次の週には女性ホルモンを打っていたんです。

えぇ…?
なんで…?

ゴールデンウィークを明けてから私は少しずつ大胆になっていき、夏を凌ぐための水筒には🏳️‍⚧️トランスフラッグ柄のおばけや猫のステッカー、「Trans Rights Are Human Rights」の文字が所狭しと並ぶようになります。
ペットボトルを持つときに小指が立ってしまっても直さないように決めたり、日傘を始めたり、スキンケアに気を使いだしたり、日に数度日焼け止めを塗り直したりするようになりました。

私がそれをやりたいと思ったからやっているだけで、何故やりたいかは一切わからないです。
私に聞かれたって困っちゃいます。

秋頃にはネイルを始め、冬の入口にはスマホケースを桜柄のかわいいものに切り替えました。
私服にピンク色が混ざりだす。
職場で新しい色のネイルに反応がなかったら「乙女心を分かってよね」などと班員に軽口を叩くようになったりしました。

現場の職人さんから「猫ちゃん」だの「にゃんにゃん」だの呼ばれるようになったり、班員から肩や尻や胸を触られたりするようになったのは、尊重されていない感じがあって嫌です。
(へらへらと耐えていたら、それとは無関係に違う現場に回される運びとなり、今ではその職人さんや班員さんとは滅多に会っていないです)
侮辱的な扱いが増えてきます。

それでも私はネイルも日傘も辞めませんでした。
挙動がいわゆるオカマっぽく感じられたのかからかいの意図を込めてモノマネをされることもありましたが、それでも私はもう挙動を男っぽく治すことはしません。

なんで…?
なんでそこまで頑なになっているんでしょうか。
少し我慢すれば何一つ波風が立たず穏やかに仕事ができるはずなのに。
ガタイも良く自信有りげにハキハキ喋れるので威圧感があるらしく、そこをうまく活用すれば典型的な男としていつでも埋没できるだろうに。

そろそろブレーキを踏むべき時なのかもしれません。

そんな事を考えながら。
そして私は4月に入ってから、ピアスを開けて女性的な耳飾りを複数購入し、縮毛矯正をかけてそこで「カットは女性的な仕上がりで!」と注文し、睾丸摘出術の日取りを決めるためのカウンセリングを受けました。

だから、どうしてそこでアクセル踏んじゃうの……。

原因が分からないとしても、結果を観測して状況を把握することはできます。

もう私は止まれないみたいです。

私はやりたいことをやっているだけで、何故それがやりたいのかは分かりません。
欲求を言語化できないという意味ではなく、私の内側にそこまでの情熱があるのが全くの不本意で、かつ、その背景に心当たりもないからです。

5/12(日)に睾丸摘出を行います。

戸籍を変更したりして女性として生きる強い欲求もないのに、どうしてそんなに必死になっているんでしょうか。

誰も教えてくれません。

私も分かりません。

そんな感じです。

そんな感じなので、私はいわゆる典型的なバイナリートランスの方とは違うなと感じていて、ノンバイナリーなトランスが今のところしっくりきます。

このお話に、オチはありません。
ただ、自分の現状を書いてみたくなっただけです。

一週間後私がどうなっているか。

一年後私がどうなっているか。

それは私にも分かりません。

読んでくれてありがとう。

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