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『バロックの生活―1640年~1740年の証言と報告』 ~従来のイメージをブチ壊す、メメント・モリを地で行く時代の証言

著者: ペーター ラーンシュタイン (著), 波田 節夫 (翻訳)
出版社: 法政大学出版局 (叢書・ウニベルシタス)
ページ数: 520p
発行年月: 1988年
定価: 3,900円+税

読書メモ

オオタさんにお勧めいただいた本。これはホントに面白い本を勧めていただきました! 1640年~1740年の100年を扱っています。このサイトで扱う時代とはほんのちょっとかぶっているだけですが、挙げられている史料がその時代のものが中心なだけで、近世全体としてはある程度似たようなものだと思います。

また、第二章の部分(および他章でもけっこうな箇所)では、三十年戦争にも触れられています。 法政大学出版局の公式内容紹介にもあるとおり、「王侯貴族から農民に至るあらゆる階層の人々の暮らしを当時の手紙や印刷物,記録,自叙伝,詩,散文等の原資料によって再現し」ている内容。本文よりも引用のほうが多いのではないかと思えるほどで、イコール、この本自体を充分に二次史料としても使えます。

というわけで、表層の薄っぺらな部分ではなく、カッコよく言えば「時代の証言」とでもいいましょうか、非常に生々しい感がたまらない良書です。逆に、「バロック」を美麗建築やら絵画やら、リボンやフリルの宮廷貴族やらで捉えるような、お花畑な少女マンガ的イメージは確実にぶち壊しになります。メメント・モリを地で行く、というよりそれ以上に、とにかく何もかも汚いです。略奪・暴力・伝染病は既にデフォ、さらには排泄物から人肉食まで、不品行で不潔で残酷な場面のオンパレードです。ロマン主義に浸っていたい人には全く向きませんので、読まないのも選択肢のひとつでしょう。

ところで、本書内に何度も出てくるブランデンブルクの「ディーツ親方」は、なんでこの人何回もこんな目に遭ってるの、というくらい散々な経験を繰り返しています。(が、それをすべて書き残しているということは、そんな時代でも無事生き延びてるということでもありますね)。

オランダに関しての最も重要な引用は、1660年のアムステルダムの旅行記でしょう。ミュンスター条約とオランダ侵略戦争の間の時代、第一次無州総督時代のちょうど中頃の黄金時代の様子をかなりの長文で伝えています。

もくじ

第一章 時代の輪郭
第二章 回顧
第三章 肉体と魂
第四章 お上と臣下
第五章 職業と経済
第六章 旅と冒険
第七章 戦争

同時代の記事についてはこちら。

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