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書店員日記 「返品できますか?」

返品、交換を受けつけるかどうかは書店によると思います。
当店では、基本的にはどちらもお断りさせて頂いていますが……あくまでそれは原則。ケースバイケースで受けることもあります。
 
たとえば、
「これ先週買ったコミックなんだけど。2巻がほしかったのに、間違えて1巻買っちゃって。ダブっちゃったので替えてもらえるかなあ」
なんていうのは、お断りしています。
コミックの場合は「読んじゃった。1回読めばもう要らないから次の巻と替えてもらおう」というのができてしまいます。
すべてのお客さんがそうだということではなく(むしろ本当に間違えたお客さんがほとんどでしょう)、そういうケースがありえる以上、申し訳ないですがお断りせざるをえない、ということなんです。
一方、これが1時間前に買ったばかりの「魍魎の匣」で、本当は「鉄鼠の檻」を買おうと思ったのだけれど間違えてしまった、というような場合であれば、これはもう交換するに決まっています、としか。

 でもね、コミックであっても交換することもあるんですよ。

先日のことですが。
小学生、たぶん2、3年生くらいかなあ、の女の子がコミックを返品しにきました。
 
「これって返すことできますか?」

「うーん、どうしたのかな。間違って、違う巻を買っちゃったのかな?」

「違うの、間違って漫画買っちゃったの」

「ん? どういうこと?」

「あのね。おばあちゃんにこのまえ図書カードもらったんだけど、おかあさんに漫画に使っちゃ駄目って言われてて。でも、買っちゃったから」

「そっかー。でも使っちゃった図書カードって戻せないからさ、何か違うのと替えるのでもいい?」

「うん。漫画じゃなければいい」
 
その女の子はつばさ文庫と交換して帰っていきましたが……。
令和の世にあっても、まだ漫画はダメとかいう大人がいるんだなあ。不思議。
もちろん、内容的に小学校低学年が読むにはちょっとなあというようなコミックもあるけれど、全部まとめて「漫画はダメっ!」っていうのはどうでしょう。
もちろん、その子のお母さんにもいろいろ考えがあって、普段は漫画も全然問題なく買いあたえるけど、おばあちゃんからもらった図書カードだから無難に漫画以外を買っておいたほうが……というような思惑があったのかもしれません。だから軽々に非難をすることはできないのですが。
 
店主は幼いころ、語彙の多くを漫画から得たと思っています。
両親が漫画だろうが児童書だろうが、分け隔てなく「本であればいくらでもオッケー」という姿勢で読ませてくれたおかげで、たくさんの良質の物語に触れることができました。
 
小学生の学力なんて「日本語で書かれた文章を読んでその内容を理解する」ことがすべてだと言ってもいいと思います。
それが国語だろうが社会だろうが理科だろうが。算数でさえ、説明はすべて日本語の文章で書かれています。
そして、この能力(語彙力と読解力)はたくさん本を読むことで必ず身につきます。
それがたとえ漫画だとしても、読めば読んだだけ鍛えられます。
内容さえちゃんと吟味してあたえてあげれば、漫画をたくさん読む子供はきっと読書好きになりますし、勉強も得意になると店主は思います。
(店主は教育についてはプロではないので、あくまで経験に基づく素人考えですが)
 
漫画は小説と違って全部絵で説明されているから想像力を働かせる余地がないなんて言う大人もいるようですが、店主は小説の方がよっぽど全部説明されていると思います。絵がない以上、ぜんぶ書いておかないと伝わらないんですから。
それより、絵からいろいろ読み取るの、けっこう大変だと思いますよ?
 
ぜひ、親御さんはお子さんに、ジャンルに関係なくたくさんの本を読ませてあげてください。
 
なんて、返品の話からずいぶんと逸れてしまいましたね。苦笑

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