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僕と胡蝶さん 22(お参りに行く)

『夢をかなえるゾウ』の課題を実践していく私小説

  〇
「さて、そして遂にこの課題にたどり着くのじゃな」
「ええ。『お参りに行く』って課題はここで出てくるんですね。最初に不朽神社に行ったのはもう2か月以上前ですね。まだまだ暑いころでした」
「そうじゃの。クモ神社という名前すら無かった時じゃの」
「毎日お参りに行ってるとは言えないですが、かなり続けてますね。もう服装もすっかり変わりました」
「そうじゃの。毎日毎日、神社にやってきては『毎日ありがとうございます』とお参りして帰るのはお主の中では習慣になっておるの。しかし、今回は課題じゃからの。改めてお参りしてみるかの?」

 僕はもう何度目になるだろうかという、不朽神社への参拝にむかった。この数段の階段を昇るのにも慣れてきた。少し剥げかかった鳥居に向かって一礼をする。
 考えてみると、こんなに長いこと続けているのは珍しいことだと思う。学生時代の日記以来なのではないか。この参拝を続けることをきっかけにして、今はいろいろなことを継続できている。再び日記もつけ始めているし、毎週花を買って花瓶に飾ることも続けている。新しく始めたこともある。まだまだ考えているだけで実行に移せていないこともあるけど、楽しめていることは格段に増えている。
「胡蝶さん、いつもありがとうございます」
「おー。なんじゃ。そこまでお主の役に立てておるかの?」
「僕がこうやって継続していられるのは、間違いなく胡蝶さんのおかげですよ。胡蝶さんに報告して、胡蝶さんにツッコミを入れてもらえるのが原動力になってます」
「そうかの。確かにそうやって周りの人に協力してもらえることこそが、成功への王道であるという話も書いてあったしの」
「この後に出てくる課題かもしれませんが」
「そう思うと、どんどんと周りを巻き込んで、成功に向かって自分のストーリーを作っていくのがいいのかもしれんの。しかし、そうなるとそろそろではないか?」
「何がですか?」
「お主自身のゴールを決めることじゃよ。何を目標にするのじゃ? 何ができた時に成功したと言えるのじゃ?」
 実はそれをずっと考えてはいる。言ってしまえば、今の会社員生活を続けて家族と時間を使うというのでも幸せとは言い切れるし、成功とも言い切れる。でもそれでは何かが違うと思って、この課題を始めたのだ。
「息子に、笑顔で自慢したいんですよ。僕の人生を。それがゴールな気はします。そして自慢するためには、僕が好きなことをすることだと思ってるんですよ」
「だいぶ固まっておるではないか」
「それがですね、僕が好きなことをしていいって言われて、何をしたいのかが分からないんです」
「なんと。自分が好きなことが分からないのか」
「そうなんですよ。何をしてもいいと言われて、何をしたいのか。それを考え続けているこの数か月です」
 それを探して、なんとなるのか。この私小説の最後もだいぶ近くなってきている。


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