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僕と胡蝶さん 18(身近にいる一番大事な人を喜ばせる)

『夢をかなえるゾウ』の課題を実践していく私小説

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「今回の課題は『身近にいる一番大事な人を喜ばせる』です。だれを喜ばせるか、ですが」
「そんなの決まっておる。奥方じゃろ。ガネーシャ殿の言ってる通りじゃ。本当に大事な人のことをないがしろにしすぎじゃ。甘えておるんではないかの」
「そうですね。嫁さんのためにと思って何ができますかね」

 我が家の夫婦の役割分担として、朝ご飯は僕が作る。でも最近は嫁さんがダイエットで朝は野菜ジュースを飲むのみなので、ここでの感謝を示すのは難しい。でも、とりあえず、嫁さんが起きる時に昨日のお礼をするか。昨日は僕の両親が遊びにきたから、いろいろと気を使ったはずだ。それから、洗濯機をかけるか。いつもは嫁さんの分担作業だけど。あとはなんだろうか。何をしてあげたら嬉しいのかな。相変わらず『人が欲しがっていることを先取り』

してあげることが分からない。
 授乳期の娘と寝ている嫁さんを起こしに寝室へ。どうやら娘が少し前に起きたようで、2人とも目が覚めていた。
「ほら、パパが来たから『おはよう』って挨拶したら」
 嫁さんが僕の気配に気づき、娘に話しかける。娘に甘い声で「おはよー」と返すつもりだった。しかし直前まで嫁さんにできることを考えていたせいだろうか、盛大に、嫁さんの名前を甘い声で呼んでしまった。
 ひとしきり笑いまくる嫁さん。つられて笑う僕。きょとんとしつつも僕らをみて、わけもわからず微笑む娘。
「そんなに私のことが好きなの? 久しぶりに大笑いしたわ」
 なんだか予想した展開とは違ったけど、課題クリアかな? こんなに笑うことになるとは思わなかった。「昨日はありがとね」流れでお礼もしっかり伝えられた。

 その夜、胡蝶さんと少し話をした。
「随分、楽しそうに笑っておったの」
「ええ、まあ僕がおっちょこちょいだっただけですけど、なんだか楽しくなりました。いろいろと考えすぎたんですかね。これくらいのことでも喜ばせることができるんですね」
「そうじゃの。少しでもやってみたらよいのだということは、他の課題も含めて感じることじゃの。いろんなことを考えてやらないよりも、まずは動いてみることこそが重要ということじゃの」
 こうやって、ちょっとずつ自分のやれることを続けていこう。みんなで笑顔になるんだ。

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