見出し画像

過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問68

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問68です。

------------------------------------------------
問68
72歳の男性A、無職。2年前から住宅型有料老人ホームに入居している。半年前から隣人とトラブルを起こすなど、ホーム内でたびたび問題を起こすようになった。また、以前のAの性格からは考えられないような言動がみられるようになった。1か月ほど前から、ほぼ毎日決まったものしか食べないようになった。最近は、ホーム内の掲示物を読み上げることや、相手の言葉をおうむ返しをすることが増えた。その後、提携医療機関を受診し、医師の診察や各種の検査を行った。そこで行われた神経心理検査では、近時記憶や視空間機能は正常であったが、遂行機能の障害が示唆された。
 Aの状況から考えられる病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
① うつ病
② 統合失調症
③ 正常圧水頭症
④ 前頭側頭型認知症
⑤ Alzheimer型認知症
------------------------------------------------

正解、 ④です
まずは本事例の特徴を挙げていきます。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

対人関係上のトラブルが増えた。
性格変化が認められる。
ほぼ毎日決まったものしか食べないようになった。
掲示物を読み上げることや、相手の言葉をおうむ返しをすることが増えた。
神経心理検査では、近時記憶や視空間機能は正常であったが、遂行機能の障害が示唆された。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

これらの問題に該当するであろう診断名を考えていきます。

本選択肢の「前頭側頭型認知症」の神経精神症状をより具体的に示すと以下のように分類できます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

軽度神経精神症候群:
ピック病では、潜行性に発症し緩慢な進行経過をとりますから、症状が明らかになる以前にさまざまな前駆的な精神症状を見ることがあります。
疲れやすくて集中力や思考力が低下し、どことなく不活発で、まるで抑うつ気分があるように見えることもあります。
また、頭痛や頭重感の訴えもあります。些細なことで立腹したり(易刺激性)、うつ気分や自己不全感がみられたり、態度にも落ち着きがなくなる(不穏)といったこともしばしば見られます。
パーソナリティ変化:
人柄の変化は、本病に特有のものです。
共通する特徴は社会的な態度の変化であり、発動性の減退あるいは亢進です。アルツハイマー型認知症では、少なくとも初期には、対人的な態度が保たれているのと比べると、この行動面での変化が際立っています。ときには周囲のことをまったく無視して自分勝手に行動するように見えることがあります。また、異常に見えるほど朗らかになって冗談をいったり、機嫌がよくなったりすることもあります。このようなことが続くと、もともとの性格と比べて人格の変化が生じたと見做されるようになります。
ただ、このような時期には、まだ新しい事柄を記憶する能力は比較的残っていることがあって、アルツハイマー型認知症とは違った印象を受けることが少なくありません。
特に、衝動のコントロールの障害は、欲動の制止欠如とか、人格の衝動的なコントロールの欠落などと表現され、思考において独特の投げやりな態度は考え不精と呼ばれます。
滞続症状:
しばしば、話す内容に同じことの繰り返しがあります。これは特有な常同的言語で、運動促迫が加わっています。まるでレコードが同じことを繰り返すようであることから、グラモフォン症候群と呼ばれたこともあります。
この症状は側頭型ピック病において特徴的とされています。言語機能の荒廃にはまだ至っていない段階で見られるものですが、次第に言語の内容は乏しくなります。
言語における症状:
言語の内容が貧困になり言語解体と呼ばれる状態になります。自発語や語彙が少なくなり言語の理解も困難になります。中期になると、話を聞いても了解できなくなりますし、自発言語も乏しくなりますが、文章の模写や口真似は十分にできるといった超皮質性失語のかたちをとります。
本病では、まず健忘失語や皮質性感覚失語が始まり、そのうち超皮質性感覚失語、超皮質性運動失語などが明らかになり、最も進行した段階では全失語も見られます。この段階になると、認知症に加えて、失書、失読、失行、失認、象徴能力の喪失などが出現します。
同じことを繰り返す反復言語、それに反響言語、緘黙、無表情の四徴候は本病の特徴とされています。
ピック病の認知症:
アルツハイマー型と比べると、初期には記憶障害は目立たないことが少なくありません。しかし、抽象的思考や判断力の低下は、最も初期から認められます。また、対人関係において常同的な態度をとることもあって、社会的な活動はもとより、周囲に対して適切な態度をとることができなくなります。
初期にはそれまで獲得している日常生活上での技能(自動車の運転など)は残っていますが、トラブルを生じたときに自主的な判断で切り抜けるといったことはできなくなります。しだいに記銘力の低下や健忘が、特有な人柄の変化と相まって、認知症の病像を呈するようになります。しかし、注意力や記銘力は後期においてもかなり残っていることが少なくありません。そのため、前頭側頭型認知症は、記憶よりも言語面で目立つ認知症と表現されることもあります。
精神病様症状:
神経衰弱様の症状が前駆期に見られることがあります。また、自閉的で無関心な対人的態度や反社会的と周囲から受けとめられるような行為から、統合失調症を疑われることもあります。ただ幻覚妄想を見ることは多くありません。
精神病様症状としては、進行麻痺様症状、統合失調症破瓜様症状、衝動行為を伴う妄想状態、不安でうつ気分を帯びた状態、強迫症状、身体的影響感情などが知られます。後期になると、自発性の低下が目立ち横臥がちとなります。末期には精神荒廃状態となり、原始反射をともなって無動無言状態となることもあります。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

また、行動障害型の前頭側頭型認知症の症候について記載していきます。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

病識の欠如:病初期から認められ、病感すら欠いていることもある。
自発性の低下:常同行動や落ち着きのなさと共存して見られることが多い。
感情・情動変化:多幸的であることが多いが、焦燥感、不機嫌が目立つ例もある。
被影響性の亢進:外的な刺激や内的な欲求に対する被刺激閾値が低下し、その処理が短絡的で、反射的、無反省なものになることが特徴的。
脱抑制・我が道を行く:本能の赴くままの行動で、反社会的行為につながることもある。
常同行動:ほぼ全例で認められる。
転動性の亢進:ある行為を維持できないという症状で、外界の刺激に対して過剰に反応する。
食行動の異常:食欲の変化、嗜好の変化、食習慣の変化が見られる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

これらを踏まえて、本事例の特徴を見ていきます。
まずは、性格変化などは本症に特徴的なものであり、この記述があったならば前頭側頭型認知症が浮かんだほうが良いと考えられます。

また、反復言語の存在、食行動の異常、近時記憶の問題は少ないが遂行機能(目的に対して計画を立てて実行する能力)に問題が見られるのも、前頭側頭型認知症の特徴といえます。

特に、近時記憶障害の存在や、その多寡はAlzheimer型認知症との鑑別点の一つと言えますから、ここでAlzheimer型認知症を除外することになるだろうと思います。

以上より、④が適切と判断できます。

引用URL:https://public-psychologist.systems/10-精神疾患とその治療/公認心理師%E3%80%802023-68/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?