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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問63

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問63です。

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問63
32歳の女性A。公認心理師にカウンセリングを受けている。Aは、実家に泊まったときのことを語った。夕食時、父親は機嫌良くしていたが、母親は陰うつで、口を開くと体調の不安をこぼすばかりで、Aにはうっとうしく感じられた。Aは母親からもう1日泊まるように勧められたが、仕事があると嘘を言って早朝に発った。その後、帰宅途中にある生花店で、母親の好きな花が目に留まり、母親宛に花束を贈ったという。
 帰宅途中にとったAの行動を説明する精神分析学の概念として、最も適切なものを1つ選べ。

① 現実検討

② 失錯行為

③ 自由連想

④ 防衛機制

⑤ 幼児性欲
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正解、 ④です。

④ 防衛機制

自我は、現実、エス、超自我という3つの領域からの刺激を受けて、そこで現実不安、エス不安(本能不安)、超自我不安(道徳的不安)という三種の不安が生じることになります。

そこで感じるさまざまな不安を防衛し、適応するために様々な防衛機制が働くことになります。

要するに、自我が不安にさらされたときに、自我を守る(防衛=defense)するために行う「こころの手法」を防衛機制と呼びます。

防衛機制の多くは、幼少期の未熟で弱い自我が、不安や不満を処理するために用いてきたものです(たとえば未熟な自我は、不安や不満をそのままの形で受けとめるという力を備えていないことが多いので、別の方法を使って不安や不満を和らげる等)。

これらの防衛機制は意識的に行われるものではなく、無意識的に、いわば反射的に行われる自我の機能ですから、これらの機制が幼少期を過ぎた後も慢性的に常用されたり、過度に用いられたりすると、自我は柔軟性を欠き、硬化してきます。

つまり、人生早期にあまりに激しい不安や不満にさらされたり、絶えず不安や不満が持続していると、自我はその防犯にしがみつき、偏った人格、歪んだ人格として固定化してくることになります。

そうなってしまうと、現実に対して直面する力は弱くなり、ますます防衛的な態度が強められてきます。

ただ、やはり防衛の本質は「工夫」であり、その命がこれまでの歴史の中で外部文化と折り合うために学習してきた成果です。

治療では、凝り固まった防衛が現実世界に何らかの不適応を招いているという状況において、「かつてはこの防衛によって救われてきたのだ」という前提を忘れず、後ろ髪を引かれながらも、その人にとって「より好ましい工夫」を構築していくことになります(「心機一転」という感じよりも、「温故知新」の精神の臨むといったイメージでしょうか
)。

さて、ここで本事例を見てみると、①母親に対する鬱陶しさを感じていた、②その鬱陶しさから宿泊の要求を「嘘をつく」という形で断った、③帰宅途中に母親の好きな花を送った、という流れです。

ポイントなのは「母親に対して鬱陶しさを感じたこと」や「嘘をついたこと」によって生じる罪悪感があり、その罪悪感が「こころに負担」を与えたため、その「こころの負担」を軽減するために「母親の好きな花を贈った」という一連の流れを説明する概念を導くことです。

つまり、母親に対する罪悪感によって「こころの負担」が生じ(すなわち自我が不安にさらされた)、この負担を軽減するために「母親の好きな花を買う」という工夫を行うことで、自我を守ったということになります。

ですから、本事例では「防衛機制」が用いられたということになり、そして、本問ではここまでしか求められておりませんが、ここで終わっておくのは寂しいので「どういう防衛機制が使われているのか」もついでに考えておきましょう。

本事例のように「罪悪感を別の行動などによって振り払う」ような防衛機制は「打ち消し」になり、日常的な例で言えば、夫婦げんかした日はいつもより多めに家事をする、子どもを叱りすぎたのでおもちゃを買い与える、などになります。

防衛機制は日常にもあふれていますから、それを理解しておくと「この人はどういうところで「こころの負担」を覚えるのか」を把握でき、そこからその人への支援につなげることもしやすいでしょう。

以上より、④が適切と判断できます。

引用URL:https://public-psychologist.systems/18-心理に関する支援(相談、助言、指導その他の/公認心理師%E3%80%802023-63/

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