過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問76
みなさん、こんばんは。
公認心理師受験生Kidです。
さて、掲題の通り、問76です。
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問76
15歳の女子A、中学3年生。保健室の養護教諭Bより、スクールカウンセラーCに不登校傾向のあるAへの支援の依頼があった。Bによると、Aは入学以来、友人や担任教師などとあまりコミュニケーションをとろうとしない。Aの保護者は、学校によるAの支援に協力的ではない。Aは、登校時には昼休みに保健室へ来室しBと何気ない会話をすることがある。Bは、最近Aの様子として、Bとは話しにくい内容があることに気がつき、CにもAに関わってもらいたいと考えるようになった。
Cの現時点での対応として、適切なものを2つ選べ。
① Aの担任教師にAの最近の様子を尋ねる。
② 保健室でAと会い、Aと面識を得るようにする。
③ 保健室でAと会い、Bに何でも話すようにAに勧める。
④ Aの保護者にカウンセリングを受けるよう働きかける。
⑤ 保健室でAと会い、Aの担任教師と話をするようにAに勧める。
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正解、 ①と②です。
① Aの担任教師にAの最近の様子を尋ねる。
もともとの事例文で感じられる気がかりの一つとして「保健室の養護教諭Bより、スクールカウンセラーCに不登校傾向のあるAへの支援の依頼があった」という内容があります。
つまり、Aへの支援はどの程度の範囲で行われることなのかが不明であるということです。
通常、どのような支援であれ、SCは管理職の管理責任の下で活動することになります。
ですから、「養護教諭Bからの支援の依頼」ではあっても、そしてその支援内容が軽微なもの(例えば、偶然を装って保健室で話す等)であったとしても、管理職の了承の下で行われることが重要ですし、こうした支援を管理職が把握していないというのは問題があるわけです。
また、管理職が把握していることが大切な理由として、学校がチームとして対処していくということが挙げられます。
「養護教諭Bからの支援の依頼」ではあっても、Aの担任がそのことを知らないということはチームという視点から言えばあり得ないことです。
Aの支援を行うにあたり、管理職および担任が「Aの支援にSCも加わっていく」という事実を、まずは共有することが前提となります。
上記のような学校組織内での支援を考える上で「管理職や担任がSCの参与を知っている」ことが大切なわけですが、実際の支援にあたっても担任との連携は不可欠となります。
担任ともコミュニケーションを取ろうとしないとありますが、現時点では、それが担任の関わりの問題ではなく、Aの何かしらの特徴や特性が影響していると見なすのが妥当であり、「担任教師などとあまりコミュニケーションをとろうとしない」という一文をもとに担任との連携を控えるのはあり得ないことです。
担任教師にAの教室での過ごし方、担任と「関わらざるを得ない状況」もあるはずなのでそういうときのAの様子、そうしたAに対する担任の見立てなどを聞いていくことが大切になります。
例えば、客観的に見ればかなり孤立傾向のあるAですが、自身が孤立している状況、一人で過ごすことが多いだろう状況に対して、A自身がどう思っているのか、その辺が担任から見るとどのように見えるかは重要な情報になります。
担任が見るAは、より社会的な状況におけるAであると言えますが、養護教諭の前で見せる姿は担任の前よりも社会性は薄れるというのが一般的ですから、そうした状況間の状態像の違い、言動の違いを見ておくことも重要になります。
なお、この「社会性の強弱」について「どちらの姿が大切か」という議論は意味がありません。
どちらも重要な姿であり、その両方を同時に見ておくことが支援上重要ですし、多角的な支援を行うにあたっても欠かせません。
本当は家庭状況という完全プライベート状況での様子も知りたいところですが、「Aの保護者は、学校によるAの支援に協力的ではない」以上、現時点では今ある情報で対処していくことになるでしょう(その場合、家庭での情報が抜けているという事実を常に認識しておくこと)。
いずれにせよ、組織の一員として支援を行っていくためにも、Aへの支援を行っていくためにも、担任との連携は欠かせませんから、担任に最近の様子を尋ねることはごく自然な対応の一つと言えるでしょう。
以上より、①は適切と判断できます。
② 保健室でAと会い、Aと面識を得るようにする。
Aが「登校時には昼休みに保健室へ来室しBと何気ない会話をすることがある」という状況が崩れる可能性があることをしてはなりませんから、この状況を崩さずにSCの介入をどう工夫するかが大切になります。
ポイントなのが、「保健室は誰もが来室して良い場所である」という前提です。
他の生徒や教員、SCも役割上来室することが自然ですし、そうした「自然」な状況の中でAとSCが関わりをもてるようにすることが、今ある「Aの保健室来室」という学校とAとのつながりを削らすに行える支援だと言えます。
こうしたアプローチを実行する前には、養護教諭Bに対して「他の生徒がいるときのAの反応」「教員がいるときのAの反応」などを細やかに確認し、Aがそういう時に芳しくない反応をするのであればSCをどう入れていくかを検討することになるでしょう。
例えば、Aが来ているときにフラッとSCが行って挨拶をしてそれですぐに退散する、何かしらの話題を振っても大丈夫ならどういう話題をするのか、などを考えていくことが重要になるでしょう(何気ない話をしていくAに対しては、あまり内的な話題にならない方が良いでしょうね)。
いずれにせよ、「Aが保健室に来室している」という状況は、現時点で学校とAが唯一つながっている場所であると言えますから、この状況を支援の母体として、その状況を崩さないような支援方針を検討していくことが前提になります。
ですから、選択肢③や選択肢⑤のようなアプローチを行えば、この「支援の母体」を侵しかねず、Aが学校とつながる唯一の場所が失われるリスクがあるのです。
保健室での関わりという「支援の母体」を侵すことなく、控えめに「保健室でAと会い、Aと面識を得るようにする」というくらいからスタートして、養護教諭B以外の人間とも関わりを持つことができるというのが、現時点で目指すステップになるでしょう。
以上より②が適切と判断できます。
引用URL:https://public-psychologist.systems/13-教育に関する心理学+法律/公認心理師%E3%80%802023-76/