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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問80

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問80です。

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問80
バランス理論に最も関係が深い人物として、正しいものを1つ選べ。
① A. Binet
② F. Heider
③ G. Le Bon
④ J. B. Watson
⑤ S. E. Asch

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正解、 ②です。

② F. Heider
認知的斉合性理論(人間の身体には不均衡状態が発生すると、自発的に均衡状態を回復しようとする機能(恒常性)が備わっている。人間の認知システムにもこのような恒常性が備わっていると考える理論のこと)の1つで、Heiderが提唱したのがバランス理論です(ちなみに、フェスティンガーの認知的不協和理論も認知的斉合性理論の一つです)。

バランス理論はX-O-P理論とも呼ばれ「対象人物もしくは知覚者(P)‐特定他者(O)‐態度対象(X)」の三者関係の斉一性を考えており、他者存在が態度形成に関与する可能性を指摘しています。

上記で言う「三者関係」とは、P‐O、P‐X、O‐Xの関係を指し、肯定評価(+)と否定評価(-)を表す情緒関係と、所有(所属)を表すユニット関係を想定しています。

この理論は、人は単純で一貫した意味ある社会関係に動機づけられており、三者関係がゲシュタルト心理学的に斉合した均衡状態を志向すると考えます。

情緒関係での均衡は、特定人物が肯定的関係にある他者と態度対象に対し合意する場合、もしくは否定的関係にある他者と態度対象に対し、合意しない場合に達成され、否定的関係が0か2になります。

不均衡状態は、否定的関係が1または3になることで生じます。

不均衡状態になれば不快感が生じるため、人はこの不快を解消するように動機づけられ、最小努力で均衡が実現するように行動するわけです。

上記は理論的に書いてありますが、単純に言えば以下のようになります。

例えば、自分と恋人と煙草の関係で考えていきましょう。

自分と恋人の関係が肯定的(+)であり、その両者が煙草に対して肯定的(+)もしくは否定的(-)であれば、その関係は均衡(バランス)状態であるため、不快感は生じないため、この三者関係を変えようとする力は働きません(上記の「否定的関係が0か2」というのは、-の数の話です)。

逆に、自分と恋人の関係が否定的(-)の時に、互いが煙草に対して肯定的(+)もしくは否定的(-)であると、「嫌いな人と煙草に対する情緒態度が同じ」という気持ちが悪い状態になる、すなわち不均衡(アンバランス)になるので、態度が変えようとする力が働くということですね(煙草が好きなら嫌いになり、嫌いなら好きになって吸い始めるとか)。

他にも、自分と恋人との関係が肯定的(+)で、自分は煙草が嫌いなのに(つまり、P-Xが否定的(-)である)、恋人が煙草を吸っている場合(つまり、O-Xの関係が肯定的(+)である場合)、不均衡状態が生じて気持ち悪くなります。

こういう時に起こるのが「痘痕も靨(好きな人のあばたは、えくぼに見える)」と呼ばれる現象で、単純に言えば、それまで自分が嫌いだった煙草に対して認識が変わって好きになるということです(これが上記の「最小努力で均衡が実現するように行動する」ということの意味です)。

単純に言えば、三者の+と-をすべて掛け合わせて、+になればバランス状態、-になればアンバランス状態なので変えようとする力が働くということです。

上記のバランス理論の他にも、Heiderは1960年代から1970年代にかけて数多くの関連研究を生み出した帰属理論(本来あいまいなはずの因果関係を特定の原因に帰属させること。ある事柄の原因を特定の原因に帰属させる帰属過程がどのように行われるのか理論化したもの)でも有名です。

Heiderは、人間の行動は基本的に能力や意思などの内的な要素と状況や偶発性などの外的な要素の二つに帰属することが可能であり、行動はこれら内的要因と外的要因が相互に関係していると論じました。

対象となる人物の内面に原因があると推論する場合を内的帰属、社会的・物理的環境や課題自体あるいは運・不運のような対象となる人物の外部に原因があると推論する場合を外的帰属と言いますが、そうした考え方を創案したということですね。

以上のように、本問のバランス理論にもっとも関係が深い人物として、選択肢②のHeiderが正しいと判断できます。

引用URL:https://public-psychologist.systems/07-社会及び集団に関する心理学/公認心理師%E3%80%802023-80/

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