過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問94
みなさん、こんばんは。
公認心理師受験生Kidです。
さて、掲題の通り、問94です。
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問94
WISC-Ⅳについて、適切なものを1つ選べ。
① 対象年齢は、5歳から20歳である。
② PSIの基本検査は、符号及び絵の抹消である。
③ WMIの基本検査は、数唱及び語音整列である。
④ FSIQは、言語性IQと動作性IQに分けられる。
⑤ IQと指標得点は、標準偏差30に設定されている。
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正解、 ③です。
Wechslerは、知能構造の質的な差異を知ることが重要と考えました。
知能指数には、偏差知能指数=DIQ(Deviation IQ)を用いています(偏差知能指数とは、一般的な知能指数(平均)からどの程度異なるかを示した値)。
計算式は「偏差知能指数(偏差IQ)={(各個人の点数-当該年齢段階の平均点)÷当該年齢段階の標準偏差×15 }+100」になります。
子どもの知能が何歳程度のレベルかを表す従来型IQは田中ビネー知能検査で求めることができ、この辺がウェクスラー式との違いになります。
上記の計算式より、IQは標準偏差15に設定されており、選択肢⑤の内容は間違いであることがわかるはずです。
検査の条件ですが、年齢は5歳~16歳11ヶ月が対象になっています(ここから選択肢①が間違いであることがわかります)。
ちなみに、以下のような分類になっていることも把握しておきましょう。
WPPSI:幼児向け(2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月)
WISC:児童向け(5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月)
WAIS:成人向け(16歳0ヶ月〜90歳11ヶ月)
ただし、知的障害が疑われる場合、5~7歳への適用は適切でない可能性があるので、その都度、柔軟に考えて対応することが求められます。
検査の開始問題は年齢により定まっており(「○歳ならここから始める」というのが、記録用紙にもわかりやすく記載してある)、易しい問題から順番に取り組むようにできています。
全検査IQ(FSIQ)と、4つの指標得点(群指数)の5つの合成得点を算出することになり、指標得点(群指数)は、言語記憶、知覚処理、ワーキングメモリ、処理速度の4つから成っています(上記で偏差知能指数=DIQと書いていますが、WISC-Ⅳ内の呼び方はFSIQになります。Full Scale Intelligence Quotientを略したものです)。
WISC-Ⅲまでは、全IQ(FIQ):総合的な能力、言語性IQ(VIQ):結晶性知能、動作性IQ(PIQ):流動性知能というわけ方がありましたが、WISC-Ⅳではこうした分類は撤廃され、FSIQと4つの指標得点を算出する形に変わっています(ここが選択肢④の正誤判断)。
WISC-Ⅳは、10の基本検査と5つの補助検査よりなっています。
検査項目を群指数ごとに示すと以下の通りです(数字は検査実施順序)。
◎言語理解(VCI)
2 類似:
共通点、共通概念をもつ2つを提示し、それを答えさせる。
練習で要領を掴むことができたか、簡潔に回答したか、難易度によって反応が違わないか(易しい問題にだけ反応が早いと、対連合学習が過剰にされた可能性:記憶能力の高いということを示しています)。
ASDの能力としては、得意分野であることが多い。
6 単語:
単語を口頭or文字で提示し、その意味を答えさせる。
喚語や迂遠表現など、特異的言語発達障害との関連をチェック。
言葉を発するまでの時間の長さ:長いと言語表現の困難さが考えられる。
冗長な説明は、①自信の無さ、②強迫的傾向、③言語能力の未熟さ、などの可能性。
9 理解:
日常的な問題解決、社会ルール等について口頭で答えさせる。
説明力不足or社会的知識欠如の見極め。
言語表現の苦手さを有している可能性(時間がかかる場合)。
13 知識(補助検査):
日常的な事柄や歴史上の人物など、一般的な知識に関して口頭で答えさせる。
誤答の共通点を模索する:子どもの苦手分野を反映している可能性。
心理的要因(不安、動機づけ、記憶)により、正答にムラが出る。
学校や家庭での学習の定着度を知りたい等の時に実施することを検討する。養育不全、不登校、学習障害の放置など。
15 語の推理(補助検査):
いくつかヒントを与えて、それを満たす概念を答えさせる。
言語表現力の弱い子どもで、文の理解力を調べたい場合などに実施を検討。
不注意な子ども、不安が高いなどで聞き返しが多くなる。
よく考えているか否かが別れやすい。
思考の切り替え(ロールシャッハのPSVに近い):第一ヒントで間違って、第二ヒントで修正できているか否か。
◎知覚推理(PRI)
1 積木模様:
積木orカードで示されたモデル通りに、制限時間内に組み立てる。
試行錯誤能力(ソーンダイク!)、当てずっぽうor方略をもって動かしているか。
回転させ続ける場合、視覚的認知が苦手な可能性あり。
4 絵の概念:
2-3行からなら複数の絵を提示し、共通特徴のある絵を一つずつ選ばせる。
防衛的な人は「わかりません」が多い(考えて・答えて・間違う、ということが他よりも明確になりやすい課題だから?)。
ちょっとルールが複雑なので、何度も同じ注意が必要な子どもは、学校でもルールがわからず同じ現象が生じている可能性あり。
8 行列推理:
一部分が空欄になっている図を見せ、その空欄に当てはまるものを5択から選ぶ。
思考のタイプ(熟慮型・衝動型)の検証。
ちょっと頑張らないと分からない問題も多いので、すぐにDKになるなら内的不穏への耐性不足。
11 絵の完成(補助検査):
絵を見せて、その絵の中で足りない部分を、指差しor言葉で答えさせる。
直観的思考を調べたい等で実施を検討。例えば、ADHDやASDの多動性・衝動性が目立つ子ども。ADHDは絵の完成は高い場合が多い。
思考が、熟慮型か衝動型か。
◎ワーキングメモリ(WMI)
3 数唱:
読み上げられた数字と同じ順序or逆の順序で言わせる。
問題は繰り返し読んじゃダメ!聞き返してくる場合は、不注意、不安の高さなどを見立てる。
思考の方略。4個程度をまとめて覚えるなど。
7 語音整列:
数字と仮名を聞かせて、数字を昇順に、仮名を五十音順に並べ替えて言わせる。
思考の方略を使っているか否か。
数字と仮名が逆になっていても正答:7歳未満や8歳以上のLDに多く見られる傾向。
14 算数(補助検査):
算数の問題を口頭で示し、暗算で制限時間内に答えさせる。
算数に対する不安、自身の無さが見えやすい(「頭の中じゃできない(そうじゃなきゃできる的ニュアンス)」など)。
指は使って構わない。
◎処理速度(PSI)
5 符号:
幾何学模様or数字と対になっている記号を、制限時間内に書き写させる。
何度も見る:視覚記憶の弱さ、慎重さなど。
見本を見つけるのに時間がかかる:眼球運動がスムーズじゃない可能性。
記号をしっかり書けない:視覚-運動協応の弱さ、筆記の苦手さ。
10 記号探し:
見本の記号が、問題の記号グループにあるか否かを判断させる。
目で探さず、首を動かして探す場合、眼球の動きが悪い可能性。
疲労が出やすい:後半落ちる。
頻繁な見比べ:視覚記憶の弱さ。
12 絵の抹消(補助検査):
多くの絵が配置された中から、動物の絵に線を引かせる。規則配置・不規則配置、制限時間有り。
疲労や低い動機づけだと、後からやる規則配置の成績が落ちがち。
符号、記号探しの得点が低いと行うことも。符号や記号探しと比べて順番が自由など、制約が少ないので。
これらの内容から、選択肢②の内容(PSIの基本検査は、符号及び絵の抹消)が間違いで、正しくは「符号と記号探し」であることがわかります。
また、選択肢③の「WMIの基本検査は、数唱及び語音整列である」は正しい内容であることがわかりますね。
以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。
引用URL:https://public-psychologist.systems/17-心理状態の観察及び結果の分析/公認心理師%E3%80%802023-94/
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