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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問79

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問79です。

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問79
十分な説明を受けた上でのクライエントの自発的な合意として、最も適切なものを1つ選べ。
① プライバシー
② ディセプション
③ デブリーフィング
④ セカンド・オピニオン
⑤ インフォームド・コンセント

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正解、 ⑤です。

選択肢の解説

⑤ インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントとは「医師と患者との十分な情報を得た上での合意」を意味する概念です。

まずは医療領域(医師‐患者)におけるインフォームドコンセントについて述べていきましょう。

治療を受けるかどうかを決定するにあたって以下の3つの要素が要求されます。

医師からの情報が開示されること
自発的な選択ができるような環境でなされること
患者に治療を受けるかどうかを判断する能力が備わっていること
これらの要件は、治療関係の在り方に関する原則であり、医師と患者の対話を通して治療関係をより信頼のあるものとし、共同の意思決定を行うことで患者自身が主体的に治療に取り組んでいくことを目的とします。

医師と患者との間に存在する情報の差を可能な限り縮小させ、最終的には、実際に治療を受ける患者自身の意思や価値観などに基づいた患者の自己決定権が優先されなければなりません。

上記の通り、一般に「インフォームドコンセント」は医師による治療について行うものですが、その内容を述べていくと、検査や治療についての目的や内容、病状と診断結果(病名)、治療方針、治療内容 (投薬内容など)、予測される死亡や身体障害のリスク、見通し(予後)、検査や治療行為に伴って生じる生活上の変化、治療のために利用可能な各種の保健福祉サービスについての情報、かかる費用などになります。

これらは方針を自己決定するために必要とされる情報であり、患者は説明を元に自身の価値観に基づいて方針を選択することになります。

カウンセリング場面で行うインフォームドコンセントの内容も、医師が行うものと本質的に異なるものではありません。

金沢(2006)は心理面接におけるインフォームド・コンセントの具体的内容として、①援助の内容・方法について (援助の効果とリスク、援助を行わない場合のリスクと益など)、②秘密保持について(秘密の守られ方とその限界についてなど)、③費用について(費用と支払い方法など)、④時間について(時間帯・相談時間、場所、機関など)、⑤カウンセラーの訓練などについて(カウンセラーの訓練、経験、資格、職種、理論的立場など)、⑥質問・苦情などについて(カウンセリングはいつでも中止することができることなど)、⑦その他、の7点を挙げています。

これらは以下のように分類することができます。

援助の根拠や援助方法、予想される結果に関する説明:
アセスメントやケース・フォーミュレーションをクライエントと共有しつつ、幾つかの援助方法を提案する。 クライエントは与えられた情報と自身の価値観を照らし合わせて援助方法を選択し、その実施に同意することになる。

臨床心理学的援助の実施者である心理臨床家自身に関する説明:
有効な援助方法が複数ある場合、カウンセラーの訓練経験や専門領域等の情報は、クライエントの選択に影響を与える可能性が高い。 また、カウンセラー自身について説明することは、インフォームド・コンセントに留まらない向治療的な効果も期待できる(カウンセラー側からの適度な自己開示は相手を尊重し対等な人間であることを伝える意味がある)。ただし、クライエントの知る必要のない情報が含まれる過度の自己開示は適切な治療関係からの逸脱になるため、その自己開示が客観的に見て援助プロセスに必要なのか吟味する必要がある。

時間帯や場所、費用など実施機関やシステムに関する説明:
援助方法やカウンセラーの能力には満足しているが、平日は仕事をしているために日中の来談ができない、といった場合にはクライエントの来談可能な時間に実施可能な施設へのリファーを考える必要がある。 クライエントやその家族の経済的な負担も無視できない要因である。

インフォームドコンセントの内容はすべて説明することが望ましいが、現実的には時間の制約等があり全てを行うことが困難な場合もあります。

しかし、インフォームドコンセントでは説明に基づいた意思決定を可能にする情報が重要であるとされ、伝えられる情報には優先順位があることになり、ここで優先されるのは、その人の自由な意思決定につながる情報ということになるわけです。

例えば、リスクが気になるクライエントであればリスクに関する情報やリスクを減らす方法、費用を重視するクライエントであれば手続きにかかるコストや費用面をサポートする制度などです。

また、リスクについて積極的に尋ねるが費用面については気がついていない、など意思決定につながる可能性があるが、クライエントが目を向けていない面があれば、それを伝えることも必要になります。

もちろん、正確に伝えることが前提となるが、納得した上での意思決定に至るために、クライエントの価値観や心情に配慮したわかりやすい説明も必要となるのは言うまでもありません。

上記の通り、インフォームド・コンセントとは「医師と患者との十分な情報を得た上での合意」を意味する概念ですから、本問の「十分な説明を受けた上でのクライエントの自発的な合意」に合致すると言えます。

出自が医療領域の概念ですから、主語が「医師」「患者」というかたちになりますが、カウンセリングの領域で使われる際には「カウンセラー・セラピスト」「クライエント」と変換することになります。

もちろん、用いられる領域が変わって主語の変換があろうとも、本質的な意味としては「十分な説明を受けた上で、支援を受ける側の自発的な合意」であることに変化はありません。

以上より、⑤が適切と判断できます。

引用URL:https://public-psychologist.systems/01-公認心理師の職責/公認心理師%E3%80%802023-79/

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