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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問28

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問28です。

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問28
ある授業で、読み聞かせを中心とした教授法と、イラストを多用した教授法の学習成果を比較したところ、継次処理が優位な認知的特性を有する児童生徒は前者で、同時処理が優位な認知的特性を有する児童生徒は後者で、それぞれ学習成果が良好な傾向にあった。この現象を説明するものとして、最も適切なものを1つ選べ。

① 潜在学習

② 分化強化

③ 適性処遇交互作用

④ Yerkes-Dodsonの法則

⑤ アンダーマイニング効果
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正解、 ③です。

適正処遇交互作用は、元々、クロンバックが実験心理学(処遇の効果のみを問題とする)と相関心理学(個人差の相関関係だけを問題とする。差異心理学ともいう)の統合を意図して唱えた概念です(クロンバックに関しては信頼性係数である「クロンバックのα係数」が有名)。

適正処遇交互作用が提唱される前は、「適正」は主に相関心理学の研究対象であり、当時は個人際に対する外的条件の影響は取り立てて問題にはされていませんでした。

一方、実験心理学で行われてきた法則定立的アプローチでは、個人差は条件統制下の実験的処理において、それを乱すものとして捉えられていました。

適正処遇交互作用は、これら2つの伝統的視点を統合することによって、個人差もしくは適正を実験要因とすることを可能にし、個人差要因と実験要因との間に生じる統計学的交互作用に着目することを提案した概念です。

続いて、主に教授・学習過程における適正処遇交互作用について述べていきましょう。

どんなに優れた教授法でも、その効果が学習者全員に同じ程度の学習効果をもたらすとは限りません。

この背景には学習能力というものが1つの一般的な能力として連続的に発達するものではなく、学習段階、方略、認知の型などと関連して捉えなければならないという事情があります。

適正処遇交互作用とは、このように何らかの個人の適性の違いによって処遇(教授法、学習形態、教材など)の効果が異なる現象を指しています。

能力の型(=適性)によって、与えられた指導方法(=処遇)に対する反応が異なる現象を適正処遇交互作用ということもできますね。

適正処遇交互作用で言う適正とは、具体的には、知能、性格、認知スタイル、興味関心、意欲、価値感、年齢といった学習成果に関連するものを全て含みます。

また処遇には、教師の指導法、学習内容、教材、教室環境、評価の仕方、カリキュラムなどのように幅広い事柄が含まれます。

と「多様な個性を持つ学習者の学力を平等に向上させるためには、学習者の個性に応じた教授法を工夫することが重要である」と言え、これが適正処遇交互作用の基本理念となっています。

この理論において、ある適正と相関が高い処遇は、その適性を「活用」すると表現します。

例えば、外向的な生徒(適正)に、積極的に発言させるような授業スタイル(処遇)によって、その生徒が伸びる(適性を「活用」した処遇であった)とされています。

一方で、ある適正と相関が低い処遇は、その適性を「補償」すると表現します。

例えば、内向的な生徒には、ビデオを観るような授業の方が効果が出やすい(外向的な生徒には効果が薄いが、内向的な生徒の力を「補償」することができる)とされています。

これらを踏まえ、ある適性が高い生徒には「活用」の処遇を、ある適性が低い生徒には「補償」の処遇を、という風に教授法を切り替えることが重要とされています。

こうした適正処遇交互作用の「多様な個性を持つ学習者の学力を平等に向上させるためには、学習者の個性に応じた教授法を工夫することが重要である」という基本理念は、本問の説明状況(子どもの認知特性に基づいた教授法によって、学習成果に差が出ている)に合致するものであると考えられます。

よって、③が適切と判断できます。

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