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ヤンキーと病人と私

全校朝礼

私は背が高く、小学校から高校まで並ぶ時は背の順で、いつも一番後ろになった。体育館で全校朝礼なんかがあると、列の一番後ろでは様々な事件が起きる。

まず遅刻してきたヤンキーが後ろの入り口から乱入してきて先生たちと小競り合いになる。そしてあいつらは遅れてきたくせにちゃんと並ばない。珍しく並んだかと思うと楽しそうにおしゃべりを始めたり、色々な人にちょっかいを出してくる。ヤンキーたちのコミュニケーション能力の高さには感心してしまう。先生たちとケンカしながらも、最後は仲良くなっていたりする。

私の後ろにヤンキーが来ることもあって、大して話したこともないのにフレンドリーに話しかけてくる。『あ、●●ちゃん白髪あるよ、抜いてあげるね。』と突然言われ、静かな朝礼中にプチっと髪の毛を抜かれてしまった。「痛いよ、やめて、抜くと増えるから。」と私がキレ気味で言い返すと、私語を慎みなさいと私が先生に怒られてしまった。

当時朝礼は立ったまま聞くことが多く、体調の悪い人はよく倒れていた。そういう人はだいたいいつも一番後ろに連れて行かれ、座って休んだり、先生たちに介抱されていた。私は必然的に救助要員として呼び出され、後ろまで急病人を運んだり、先生と病人のサポートをさせられた。ヤンキーも持ち前のコミュ力を生かして機転を効かせて手伝ってくれたりもした。

そんなこんなで朝礼の後ろではいつも何か事件が起きていて、ヤンキーがいるとそこだけなぜか学校のルールが適用されない治外法権のようになっている感じだった。

学年登山

夏に学年で登山に行く行事の時も、私は学年で1番後ろの列になった。そしてそこでもいつものようにヤンキーが列を守らず、私の後ろにやってくる。そして先生たちとケンカが始まったかと思ったら仲良さそうに話している。勝手にお菓子を食べたり、ジュースを飲んだり、とにかくやりたい放題やっている。それと同時に急病人も後ろにやってきて、介抱したり励まし合って登る。ヤンキーが暴れ、急病人が青ざめ、先生が怒り、そして私がいる。

列の始めのほうの人たちが休憩所に着いても場所が狭いため、私たち後ろの列は平地では休めなかった。そして斜面でしか休むことができずに体が斜めになりながら、ヤンキーがまた文句を言い始めて先生ともめている。列の後ろは色々と不便だと思いつつも、よくぞ言ってくれたと思った。不便な分、妙な連帯感というか、大変な状況の中、みんなで一緒に登頂できた時はとても嬉しかった。

補習授業

高校の夏休みに私は数学で赤点を取ってしまい、補習授業に出ることになった。ほとんど話したことがないヤンキーたちと一緒に授業を受けた。ヤンキーたちは寝ているか遊んでいるばかりでほとんど授業を聞いていなかった。
下校する時、駐輪場でばったりヤンキーに会ってしまい、『●●さんって補習受けるんだね、めずらしいー。』と若干ひやかしを食らった。「数学苦手なんだよね。」と言うと、『ふーん、じゃあねバイバーイ。』と言って足早にヤンキー仲間と変な音がするバイクで帰って行った。

当時私は大人しかったし、服装も地味で真面目だったため、勉強も普通にできると思われていたらしい。
私が通っていた高校は確かバイク通学は禁止だったけれど、どこまでも自由に生きているヤンキーたちが羨ましく思えた。当時は数学ができずに落ち込んでいたけれど、全く何も気にしてない(ように見える)彼らを見て、そんな生き方もあるんだなーと思った高校時代だった。


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