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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 60

火曜日。朝の会場はホテルから歩いて5分、とたかをくくっていたら遅刻しそうになる。ニティシュが、風船とハーブを使った、渡り鳥についての短い参加型レクチャーパフォーマンスを披露してくれる。ケースクリニックと題されたワークショップは、7段階に分けてそれぞれの課題(challenges)について対話していくというもので、最初にAyakaさんのそれが選ばれる。さすが国際交流基金内部から選ばれて派遣されただけあって、堂々としている(少なくともそう見える)。内心は面食らっていたらしいけど……。彼女が勤務するブダペストの事務所は、中欧や東欧の13カ国を広くカバーしているらしい。何が彼女の課題だったかはここでは伏せるけど、今度国際交流基金の誰かに会ったらぜひシェアしたい重要な内容だった。アドバイスのターンでのわたしの「make a revolution」という半分冗談半分本気の発言は、いろんな人のお気に召したみたいで、そのあと何度かラボで引用されることになる……。

そのあとは3つのグループに分かれることになり、迷いながらも(知り合いのテーブルじゃないほうがいいかなと思いつつも)結局ササピンのお悩み相談に参加することに。東南アジアのファンディングの状況に特化したトピック。2015年から19年までアジアの各都市で主にジャパンマネーによって時間を過ごしたものとしては、彼女の問いかけに応答する責任があるようにも感じたのだった。タイだけでなく東南アジアのこのを考えたいという彼女の考えは、もっと多くの人に知られてほしいと感じたから、そう伝える。
 
ランチではチェコ人のクリストフらといろいろ話す。陽気な演劇人で、去年のラボにも参加していたらしく、今回のラボのムードメイカーみたいな面もある。ビールの缶に記されていたJežibabaという、子供を食べる魔女について話を聞く。金曜にBudweis(チェスケー・ブジェヨビツェ České Budějovice)に行くつもりなんだ、と話すと、最適な行き方を調べて教えてくれる。ブジェヨヴィツェ、と発音するのはかなり難しい……。
 
午後はファインアーツのアカデミーを訪ねる。日曜にディナーしたカフェは、どうやらここの学食みたいな位置付けらしい。先生から話を聞いた後、ふたりの学生さんからそれぞれのアトリエで話を聞く。ラボの参加者たちはここでも遠慮なく質問していく。作品のモチーフについての質問がひと通り終わってからは、卒業したらどんな目標があるのか、自分を社会の中でどう位置付けたいのか、など。学生さんは少し照れた様子でその問いに真正面から答えはしなかった。学生相手にそんな質問しなくても、という気持ちと、学生相手でも本気なのは好ましいな、という気持ちとが交錯する。
 
解散して、ホテルでいったん休んでから、みんながディナーしてるパブに顔を出してみる。アントニンの友人で、台湾から来てるらしいパフォーマンスアーティストと話す。わたしは現金を持ってなくてササピンにご馳走になってしまう。ビール一杯で抜けて、近所の中華料理屋を試してみる。チャーハンにするかダック定食にするかで迷っていると、ダック定食のご飯をチャーハンにできるよ、とおかみさんが申し出てくれたのでそれに。美味しくいただいたけど量がめっちゃ多くて、ホテルまでまっすぐ帰っても横になれないと感じて、しばらくウロウロ歩いてから帰る。近所の映画館でジブリの特集をしているのを見つける。ジブリの横断幕はたしかリュブリャナでも見た。こうやってアニメや映画は軽々と国境を越えていくのか、と思いつつ、でも実際は、軽々とではないんだろうな、誰かがそれをやってるんだよな、と想像する。

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