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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 26

水曜日。朝、横浜のとある人との打ち合わせ。彼とのお付き合いも10年になる。そのあいだ断続的にお互いの活動は目にしていて、もしかしたら久々にプロジェクトをご一緒できるかもしれないのは嬉しい。うまく実を結ぶといいなあ……。その件で、台北とマカオにもメッセージ。彼らも元気そうでよかった。元気でいる、ということが簡単ではない時代なのだから、ただ元気でいるだけでも素晴らしいことだと思う。

続いてステファン・ノエルとのオンラインミーティング。口頭で話すのは1ヶ月ぶりくらいかも。メールやメッセージではなかなか話しづらいことを2時間みっちり話す。8年前にマニラで知り合って以来、特にこの数年は苦楽を共にしてきた。立場やバックボーンは違うけど、お互いの違いを認めつつ歩み寄ろうというこのコミュニケーションの積み重ねに関していえば、うちら、けっこういい線いってるんじゃないかな……。昔々あるところに、アジアとヨーロッパの架け橋になろうとした奇特な舞台芸術プロデューサーが存在した、という彼の足跡がいつの日かの未来において発見されるためにも、orangcosongはもうちょい頑張って各地で爪痕を残しておこうかな、という気持ちになる。まあ彼はそんな先の未来のことは考えてないかもしれないけど。

 
そしてorangcosongアソシエイトメンバーの松橋萌もついに合流。無事に到着できてよかった。去年の秋にアソメになってから、もう半年近く、この渡航のことをどこか遠くに想定しながらコミュニケーションをとってきた。彼女にとってもこの半年は長かったんじゃないかと思う。我々の力不足で助成金に落ちてしまったりもあったけど(でも京都芸術大学の「共同利用・共同研究拠点」が拾ってくださったおかげで首の皮一枚繋がってなんとか前向きに考えることができた)、彼女にヨーロッパに帯同してもらうことで世界が変わるかもしれない、少なくともわたしたちの見える世界は変わるはず、と思って、呼んじゃうことにしたのだった。それを仮に投資と呼ぶなら、その投資の見返りがorangcosongに対してただちに直接あるかどうかはわからないけど、たとえなかったとしても世界が変わるならそれでいいじゃないかと思う。だってわたしたちは世界を変えるために活動しているのだから……。今回の旅は、世界を変える、ということについてのわたしたちなりの意味を探る旅にもなっている。今のところのわたしの感覚では、それは変革というよりは修復に近い感じがする。
 
 
ここに来るまでの、2回飛行機を乗り換えないといけない長旅ですでにいろんな出会いがあったみたいで、萌さんはすでにけっこうreadyしている感じ。さっそくAzkuna Zentroaのマリーナに紹介。マリーナとは考えてみれば3日連続で会っている。実は彼女に、サン・マメス(アスレティック・ビルバオの本拠地)で試合を観るなら北側と南側のどっちの座席を買えばいいのか、と尋ねていたのだけれど、彼女はサッカーが好きではないらしく、同僚に訊いてみるね、と何人かに訊いてもらったのだけれど判明せず、ようやくわかったところでは「どっち側の席でもいい」とのことだった。ほんとにそれでいいのかな……ホームとかアウェイとかどうなってんだろ……。しかし最安だったそれでも30ユーロする座席はすでにこの数日で売り切れてしまい、50ユーロ以上が必要になる。うーん。でも行きたいなあ。
 
宿に萌さんを案内する間も、スーツケースや鍵にまつわるいくつかのできごとがあったけど、ひとまず割愛。近所を散歩し、萌さんが興味ありますと言って入った文房具屋でジョルジーナさんと知り合う。さらに歩いていくと、路上で急に話しかけられる……あ! なんと去年黄金町に滞在していたマールさんだ。落ち着いたら連絡しようと思っていたけどまさかこんな路上でばったり会うとは! いくらビルバオがさほど広くないといってもそれは奇跡に近い確率のはず。今度コーヒーでも飲みましょう、来週展覧会のオープニングがあるから来てね、とのことで、もちろんお邪魔させてもらうつもり。
 
初日にも行ったアラブ系食堂で、萌さんと実里さんと3人でご飯。我々の再訪を店の人はかなり喜んでくれる。萌さんももりもり食べている。海外での滞在制作では食生活はかなり大事な要素になるから、ローカルなご飯を美味しく食べられそうなのはよかった。スーパーや八百屋に寄って買い物してから、部屋に戻って3人で作業とかつらつら話したりとか。3人の日記はいったんすべてこのnoteに集約することにした。萌さんも日記のスタイルはこれから模索していくみたい。


さっき買ってきた、チャコリという、バスク地方特産のスパークリングワインで乾杯。チャコリの飲み方の伝統に倣い、がんばって空中から注ごうと試みたけど、当然ながら、いくらかグラスの外にこぼしてしまう。まあ、ご祝儀ということで……。創作には困難がともなうものだし、いつもうまくいくわけじゃないし、ただ呑気に人生を楽しめるような時代じゃないこともわかってるけど、萌さんにはこの異国での創作体験を存分に楽しんでほしいし、わたしや実里さんもそうしたい。

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