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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 31

月曜日。朝、宿で3人でミーティング。現時点でのリサーチ状況を確認しての作戦会議を、2時間みっちり。そしてAzkuna Zentroaまで歩いて、芸術監督フェルナンドとラケルとミーティング。エリアのことや、「演劇クエスト」が目指すところ、その方法論などについて、意見交換。去年「筆談会」ですでにご一緒させていただいたこともあって、わたしたちとしてはとても信頼感があり、センシティブなことについても話せたように思う。感動的だったのは、リサーチの途中で出会った人たちのリストを共有してほしい、招待状を送りたいから、と言われたことで、この人たちは本気でローカルコミュニティとの関係を作ろうとしてるんだな、と感じる(滅多にない)。5月の滞在中にもう一度、今度はランチミーティングをする予定。一緒に作ってる感じがして嬉しい。すべて英語でのやりとりになるから、解散後、今のいくつかの複雑なやりとりについて萌さんにあらためて日本語で説明。それをすることでより問題点が明確になったり新たな考えが浮かんだりするから、このプロセスはorangcosong的にはかなりいいかも。
 
階下に降りてインフォメーションセンターでボルハさんに会い、Azkuna Zentroaのプログラム紹介の冊子を何冊かもらう。この冊子には、来年発表予定のわたしたちの「演劇クエスト」のこともすでに明記されているから、町の人に説明する際に大いに役に立ってくれそう。カスティーリャ語版、バスク語版、英語版と3種類ある。ボルハさんによれば、彼らは「スペイン語」という名称は使わず、あえて「カスティーリャ語」と表記しているとのこと。なるほど……。
  
3人に分かれてのリサーチ。萌さんももう1人で歩いても大丈夫そうだし。わたしは南側のエリアを攻めてみる。去年も一度そのあたりは歩いているけど、その時には見えなかったものが目に入ってくる。ビルバオのローカリティについての解像度が増してきつつあるのは感じるけど、作品をつくれる段階に至るにはまだまだ全然足りない。フェルナンドさんからも示唆のあったZabala地区は確かに興味深くて、坂を登りきったところに学校があり、見た感じ、多様な出自の子供たちが通っていそうな気配。仮にSan Francisco〜Zabala〜Iralabarri〜Ametzolaあたりを繋ぐとしたら、どのような地図を描けるのだろうか。果たしてそれは機能するのだろうか。そして、どちら向きに歩くのがよいのだろうか。


サン・フランシスコ地区に戻ると、路上でバルのおねえさんに会う。緑色の美しい服を着ている。彼女もセネガル出身なんだろうか、それとも別のどこかにルーツを持つんだろうか。あら、もう日本に帰ったかと思ってたわよ、と言われ、いえいえまだ滞在は始まったばかりですよ、へーそうなんだ、夜は店にいるから来てね、と挨拶して別れる。さらに歩いて、ラップトップを広げても安全そうなバルでPC作業。生ハムのピンチョスが絶品。しかし雨が降ってきて、急に冷え込む。実里さんと合流し、スーパーと八百屋で買い物をして帰宅した頃には、肩甲骨のあたりが冷え切っている。ほんとはバルめぐりをしたかったけど、体調の回復を最優先にして、ベッドで少し眠る。まあ、明日もバルは開いてるし……。ただ今週はずっと雨が降るみたいだ。さてどうしたもんだろう。寝ているあいだに、萌さんが帰ってくる。彼女は今日またひとつ大きな達成を成し遂げたようだ。リビングのほうから、2人が楽しそうに談笑している声が聴こえてくる。

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