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2024欧州滞在記 Day 0

羽田空港のチェックインカウンターで、日数をカウントされる。シェンゲン圏の外にも行くんです、だから日数は問題ないはずです、とその証拠となるチケットをスマホで見せる。ああ、なるほど……と彼女は納得してデータを打ち込む。それでようやく北京行きの航空券が発行される。乗客たちは北京を経由してどこかへ向かう人たちが多いみたいで、カウンターでのやりとりに時間がかかるせいか、長蛇の列ができている。フランス語やスペイン語が聞こえる。中国語を話す人は思ったよりも少なく、日本語にいたってはほとんど聞こえない。
 
2018年からはずっと実里さんと一緒の旅だったから、海外ひとり旅は6年半ぶり。ひとりで旅する能力を失ってるんじゃないかと少し心配だったけど、今のところは大丈夫そう。
 
飛行機が飛び立つ直前にある人からメールが届く。考えてしまう。この2ヶ月間、悩んできたことについて。進みたい方向性は見えてきている。最後はわたしと実里さんが決めないといけないのだろう。でもその前に、もう少し丁寧に話し合わないといけない。
 
 
エアチャイナは各自のデバイスでWi-Fiに接続して映画とかを観るシステムで、それはいいとしても、電源は喰う。ようやく『ドライブマイカー』を観る。いつか観るチャンスがあるはず、とたかをくくっているとこんなにも遅くなってしまう。成田発9時の飛行機に間に合わせるにしては外が明るすぎるんじゃないかとか、この主人公とほぼ同じ仕事してるはずなのにこの違いは何だろう、こんなふうにもっと近寄りがたいオーラを出した方がいいのかな(出さないし出せないけど)とか、どうでもいいことを考えながら冒頭は観ていたものの、目薬かよ! カセットテープかよ!とドラマとして引き込まれていくうちに北京空港に到着(でも演劇のオーディションであんなことは絶対に許されてはいけない)。まだあと1時間くらい残ってるけど、次のフライトで続きは観られるんだろうか。こういう鑑賞の仕方は、古き良き映画鑑賞のスタイルからはあまりにもかけ離れているけど、これが2024年の現在地ということで甘んじていいものだろうか。
 
トランジット特典で予約しておいたラウンジは、去年感動した料理食べ放題の素敵なラウンジとは全然別のもので、がっかり。それでもシャワーが浴びられるのはありがたい。VPNがうまく繋がったので、遠隔で実里さんにも確認してもらい、さっきのメールに返信。正解はない。手探りで、少しずつ、光の見えそうな方角に進む。

何か食べよう、と思ったらレストランは19時や20時で閉店したらしい……。スタバとコスタコーヒーはまだ開いている。コスタで36元のバーガーを購入。いつかの昔に手に入れた人民元の紙幣を使う。去年、まるでゴーストタウンみたいだったこの空港は、少しは息を吹き返しているけど、電気も暗く、活気には程遠い。わたしも含めて旅人たちは、電源のある場所に虫のように群がって自分のスマホを接続し、深夜のフライトを待っている。


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