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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 65

日曜日。朝、秋の横浜でのプロジェクトに向けてのミーティング。ネット環境なども含めてみなさんの状況があまりよくなくて、最低限の顔合わせという感じ。それならリスケしていただいてもよかったんだけど。とにかく、またあらためて話しましょうということに。
 
あきこさんのおうちにお邪魔してインタビュー。お土産に持参するはずだった白ワインを冷蔵庫に忘れてへこむ。日曜日のデュッセルドルフはスーパーとかもほぼ開いてないから、今から買うのも難しい。夕方までいろいろシラフでお話を伺ってから、あきこさんが持っていたロゼワインなどいただく。在欧の日本人の方々に話を伺うこのインタビューシリーズ、お話を聞くのは7人目になるけれど、みなそれぞれに特殊で、誰ひとりとして似ている感じがしない。この、似てなさ、はかなり大事なことかもしれない。

わたしは若い頃の長い間、共感を大事にする文化であるはずの日本において、ほぼ誰にも自分の物語が理解されないし、興味も持たれない、と感じていた。へー、という驚きは表明されても、そのあとちゃんと物語を聞かれることはまずないし、わたし自身も語る言葉を持っていなかった。他人と自分は同じはずだ、共通点を持っているはずだ、という同質性を前提とした共感の輪の中には、わたしはいられなくて、生きていると毎日少しずつ絶望が蓄積していくようだった。
 
デュッセルドルフに滞在した9〜8年前、あきこさんから学んだのは、他人に質問することの大切さ、だった。彼女は他人に質問するのがとても上手い。それがドイツに来てから獲得した技術なのか、天性のものなのかはわからないけど、とにかく訊かれたほうはべらべらと自分の話をしてしまう。でも、ではいったい誰が彼女に質問するのだろう、とずっと思っていた。

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