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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 42

金曜日。Uberでビルバオ空港まで移動。てっきりグッゲンハイム美術館の横を抜けるいつものコースかと思いきや、車はベゴーニャ教会方面の山道を抜けていく。少し車酔い。ただ萌さんに初めてUberを使ってもらう機会を作れたのはよかった。いつかいざという時に役に立つかもしれない。

フライトは40分ほど遅延。ブリュッセル空港に到着。そこからFlixBusで目的地のユトレヒトに向かう作戦で、そうせざるをえなかったのは経済的な理由だけど、途中の風景を車窓から見ておきたいのもある。萌さんと実里さんには空港のカフェで休んでもらい、ひとりでバス乗り場を探しにいく。しかし誰に聞いても確証がなく、他の乗客たちも戸惑っている。そのため空港で休む時間が削られてしまったのは痛かった。空腹をかみしめる。バスは40分遅れて出発し、しかもアントワープでは大渋滞に巻き込まれる。その町ではユダヤ教徒の帽子を被った人たちの姿をあちこちで見かける。

バスの運転手はだいぶ荒くれ者タイプで、雨の降る高速で危うい車線変更を繰り返す。ぶつかったらたぶん死ぬ位置に座っているので、シートベルトをお勧めする。ふだんバスではシートベルトをあまりしたがらない実里さんもさすがにしている。安全運転でお願いしたい気持ちと、とはいえそれなりにはスピードを出してほしい気持ちとが交錯する。バスが大幅に遅延する可能性をもっと真剣に考えておくべきだった。というのも、萌さんが観たいというVR作品の観劇予定を(スロットがもうなかったので彼女のぶんだけ)この夜に入れてしまったのだった。詳しくは書かないけど、実はユトレヒトのフェスティバルのチケット確保がなかなかスムーズにいかなくて、そこにチーム内でユトレヒトになぜ行くのかということについての認識の齟齬のようなものも絡まっていたから、わたしとしてはこれでまたバスの遅延のせいで観れないというようなことが起きるのは避けたいと思ってしまった。本当は、それよりも、あらためてチーム内で認識を共有し直すことのほうが大事だったのだろうし、実里さんにはそんなに一生懸命にならなくても、とたしなめられたけど、事件もあり、移動もあって疲弊している中で、目先の懸念事項をひとつでも減らしたいという方向に気持ちが働いてしまうのを止めるのは難しかった。とにかくこのペースだと間に合ったとしても到着はギリギリになってしまう。フェスティバルのホスピタリティ担当のマディソンにWhatsAppで連絡したりしながら、現地の状況把握に努める。いろんなオプションを検討した結果、実里さんが3人分の荷物を預かっているあいだに、わたしがローカルバスの乗り場に付き添って萌さんをバスに乗せる作戦に。それが功を奏して、なんとか間に合ったけど、果たして成功と呼んでいいのかはよくわからなかった。
 
雨が本降りになる。2人分の荷物を持ってるから傘がさせず、びしょ濡れになりながらホテルへ。ホテルのグレードは結構高い感じ。湯船もある……さっそく濡れた身体を温める。少しだけ休んでから、Spring Utrechtのフェスティバル会場へ。ステファン・ノエルや、たまたまこの日だけユトレヒトを訪問している横堀応彦さんと話していたら、芸術監督のGrzegorzが登場(人によってもしくは言語圏によって、グレゴーシュ、ゲゴーシュ、チェゴーシュなど呼び方が違っている)。今までいろんな芸術監督に会ってきたけど、良い意味でここまで圧のない人は初めてかも。するとそこに誰かの声。え……イヴァ? なんでここにいるの? 2019年の上海での「IsLand Bar」に月台(Tai Collective)の一員として参加していた彼女は、今はアムステルダムに留学中とのこと。さらには北京でお世話になった元ジャーナリストのチェン・ランも現れる。今はユトレヒトに住んでいるらしい。みんなそれぞれの人生を歩んでいるんだね……。
 

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