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藤原ちからの欧州滞在記2024 Day 80

月曜日。朝ちょっとした異変があった。劇場で待っていると、微熱がある、と告げられる。もちろん帰っていいよと伝えるけど(そもそも寝ててもらって大丈夫だよ……)、なんとなくちぐはぐ。重大なインシデントに繋がらないようにと心配になりつつ、とにかく今は劇場側と約束のミーティングをしないといけない。すでに送った第二次滞在に向けた資料の検討項目について、ラケルとマリーナと話す。トライアルウォークの方式や日時も決め、通訳の方との顔合わせなども設定してもらえることに。
 
帰り道に、中華料理店に寄ってみる。店構えがあまりにそっけないから、デリバリーアプリの配達員が門前にいなかったら、閉店してるのかと勘違いしたかもしれない。とにかく身体が冷えてしまってる感じがして、スープものが飲みたかったので、ビーフン風のラーメンに。あれ、美味しい……しかもボリュームあってめちゃ安い……。穴場を発見したかも。胃に優しい感じの味だし、あとで萌さんにも教えてあげよう。テレビでは中国の国営メディアCCTVが流れていて、それが多民族共生やエコといったSDGs推しであることに、実里さんは唖然としている。


帰宅して、実里さんがお粥をつくる。わたしは非常食用にゆで卵を多めに茹でる。


夕方、またもサッカーの試合を観がてら町に出るも、サバラ地区のいつものバルは今日は定休日らしい……。隣のイララ地区に行ってみる。そこで当てにしていたバルも定休日で、どうしようかな。近くのバルに入ってみる。お店の人もとてもいい感じだったけど、そんなに広い店ではなく、19時頃になると常連らしきおばあさんやおじいさんが増えてきたので、彼らの席を占拠するのもなあ……と思い、前半だけでおいとますることに。外に出ると、定休日のバルのシャッターにティーンズたちがスプレー缶でグラフィティを描いている。おお、グラフィティ現場に初めて遭遇した! でもまだ白昼堂々だし、普通に路上のテラス席で別のバルの客が飲んでたりする目の前だから、隠れてやってるわけではなく、お店の関係者のティーンズとかなんだろうか。確かめたかったけど今のわたしの体力と気力では無理だった。そもそも陽気な人の多いサンフランシスコ地区と違って、イララ地区やサバラ地区ではあちらから話しかけられることは(ゼロではないとはいえ)滅多にないし、こちらから仕掛けてもちょっとやそっとでは心を開いてくれなかったりする。そしてどちらかというと(あくまで傾向として)、イララ地区では常連コミュニティの結束感というか地元感のようなものが強いように感じるけど、サバラ地区ではなんとなくひとりひとりの孤独や哀愁なものを感じることがあって、わたしはそれが気になっているらしい。
 
というわけでフランス対ベルギーの後半戦は、サバラ地区の気になってた渋いバルに入って観戦。わたしみたいに明らかに外部の雰囲気の人間が来るのは珍しいのか、店内に入った瞬間にぴりりと緊張を感じる。でも一見さんはお断りだよ、みたいな拒絶の雰囲気ではない。あ、カウンターにいるのはあの角のバルでこないだ見かけたおっちゃんじゃないか。高知にいる知り合いになんとなく似ているので、わたしは心の中でおかもっちゃんと呼んでいる。おかもっちゃんは黙々とサッカーを観ている。わたしも黙々と観る。なぜか試合終了間際だけ人が増える。そしてまた散っていく。居心地は悪くなかった。またちょいちょい来てみよう。
 
スーパーで買い物していったん帰る。帰ってみると、もはや外に出る気力は残っていなかった。2戦目はそのまま家のテレビで。

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