記憶は体に蘇る
いま私は、上半身裸の状態で柔らかいタオルの上に寝そべっている。
穴の空いた部分から目と鼻と口だけが空気に触れている。それと私の後部、体半面は天井を向き無防備だ。
指先で力強く筋肉のシコリがほぐされていく。
痛みもあるし、温もりも感じる。そして時にくすぐったい。
・・・
このマッサージは祖母のそれと非常によく似ている。
体のあらゆる箇所に指の先をのめり込ませていくやり方だ。
祖母のそれも、鋭い痛みが伴うものだった。そして時にくすぐったかった。
祖母がどこでその技量を得たのかは知らないが、祖母が触れるところはいつも1ミリのくるいもなく的を得ていた。深い所から痛みが走り、そしてその先の体の裏側や足先にまで電流が走る。体の部位はありとあらゆる角度や方向で繋がれていて、それはひとつの大きな物体であると思わせられた。
祖母の指先は神がかかっているようだった。
私は幼い頃から祖母の指先に疲れを癒やしてもらっていたし、私の父もよくマッサージをしてもらっていた。
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ハーブオイルの香りに鼻の奥を心地よく刺激されながら、温かい部屋の柔らかいタオルの上で、私はいま上半身を露わにして寝そべっている。
祖母の指先を体に感じながら、体から記憶を蘇らせながら。
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