川越汁

川越汁というものがある。
小江戸川越の地元特産品で作った味噌汁というか豚汁というかの様なものだ、と思う。

小江戸川越ハーフマラソンに参加した際にいただける事でランナーにはお馴染みだ。
11月終盤に開催されるこの大会。気温の低い中、長い距離を走り、満足のいくタイムも出せなかった僕には身にも心にもしみわたる。神の恵みと言ってしまったら過言だろうか。

しかし、この川越汁。このマラソン大会でしか食べた(飲んだ?)ことがない。他にどこに行けば食べられるのだろう。また、レシピは?
全く気にした事がない。

「救いの前に彼らを迷わせなければならない」とはバイオラ大学の福音学のカーティス・ミッチェル博士の言葉だが、極限状態とも言えるランナーの心と身体に寄り添うこの「川越汁」。やろうと思えば多くの人々を虜にし、多くの時間と多くのお金を使わせる事も出来たはずなのにそれをやらない。むしろビジネス戦略的にはやるべきなのにやらない。
言ってみれば、「売掛を一切やらないホスト」と全く一緒ではないか。



テレビでよく「やさしい味」という言葉を耳にする。

「やさしい」の捉え方が人によって異なるから厄介だ。
何でも許してくれる人がやさしい…
間違っている事は叱ってくれるのがやさしい…
何でも買ってくれる人がやさしい…

この「川越汁」。弱った人の心にもつけ込まず、こちらに食べる食べないの判断を委ね、ただそこにあるのみのノスタンスをとっている。これがこの料理から感じられる「やさしい味」の正体なのではないだろうか。


ただ、僕は他に食べられる所を知らない。


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