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谷村新司とビニール本

その文章をいつどこで読んだのか憶えていない
また何に掲載されていたのかも憶えていない
村上龍が変態に憧れていた時代だったと思う
80年代の半ばくらいだったかもしれない
名前は出していなかったが村上龍はあるビニール本製作者と出会い、その表現を称賛していた
そしてその人物の表現はいつかアンダーグラウンドから我々を撃つだろうと書いた
そのエッセイに添えるように谷村新司がそのビニール本製作者のつくったビニール本には唄がある(詩があるだったかもしれない)と述べたエピソードを加えていた
村上龍は谷村新司の音楽をクソであると否定した上で谷村新司の感性に共感していた
あれに唄をみるとはなかなかのものだと
谷村新司といえばビニ本の蒐集家だった
五千冊所有していたという
五千冊はやはり常軌を逸している
まず清水アキラ、コロッケの誇張モノマネが頭に浮かび、デュエットしながら小川知子の胸元に指を滑り込ませるやや猥褻な演出が去来する
そしてビニール本だ
所有するビニール本をジャパンアクションクラブに二百冊提供し真田広之が何よりも嬉しいと感謝したというエピソードもある
ただビニール本のモデルになった人たちがどういった経緯でそこへ至ったのかを思うと単なるほっこりエピソードでは済まされないような気もするが…

もう一つ思い出した
やはり80年代に坂本龍一と中沢新一が出演するテレビ番組で谷村新司のコンサートの映像を見ながら感想をいいあうというものがあった
中沢新一は谷村新司を見てこれ京劇だよねと嘲笑うようにいった
それに対して坂本龍一はそれは京劇に失礼だよと返した
それも半嗤いだった
その番組がどういったコンセプトで制作されたものなのかはわからない
ただ80年代にあったアジア的なものをとりわけダサいものとして嗤うという風潮に乗ったものだったと思う
二人が終始おかしそうにニタニタし続けていたのが印象的であった
このニタニタした態度は現在では杉田水脈などの差別主義者によく見受けられる

谷村新司は自民党党大会で昴を歌ったという
どう見ても右翼だ
ただ親中、容共でもあった
根底にあるのは大アジア主義
それもアジアでの平和的協調を目指していた初期の大アジア主義だ
谷村新司がどうやってそういう思想を持つに至ったのかはしらない
ただ日中の親善に貢献したのだからその後、現れた民族差別と侮中に凝り固まったネトウヨ等に比べれば遥かに善い右翼であったと思う














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