市民オペラに参加するということ 1

今から約3年半前、私はビゼーの「カルメン」の市民オペラの公演に参加した。マエストロ(指揮者)が好きな人だったから、とかいろいろ理由はあるのだが、最大の理由は「カルメン」が好きな作品で、なんとしてもそこに参加したいという強い気持ちがあったからだ。練習に通える範囲で「カルメン」をやっている団体はないかな、と思って探していると、ちょうど職場の近くの市民オペラが、次回公演に「カルメン」を予定していることがわかった。私はその団体に入団希望を出し、無事「カルメン」の舞台に乗るに至った。

ちなみに私がオペラの舞台に乗ったのはこの時が初めてではなかった。カルメンをやったのとは別の、自宅近くの市民オペラで、モーツァルトの「魔笛」をやったのが初めてで、その数年後に同じ団体で、ヴェルディの「椿姫」をやった。「魔笛」は、子供の頃、親に連れられて見に行ったことのあるオペラで、もともと好きな作品だった。練習場所が家の近くの団体が、魔笛の公演をやると知ったからには、無視するわけにはいかなかった。私は合唱は学生時代にやっていたことがあるが、大人になってからはやっていない。ちなみに演劇も学生時代にやっていたことがあるが、むろん大人になってからはやっていない。そんな状態で果たしてオペラができるかな、と思ったが、好奇心のほうが不安を上回った。

練習に参加してみると、想像を超えて楽しかった。はじめはピアノ伴奏で音を取り、歌の練習をする。それが終わると暗譜して、立ち稽古をする。私はこの時まで知らなかったのだが、オペラというのは合唱団員はただ突っ立って歌を歌うのではなく、歌がない時さえ、必要があれば舞台に出て、エキストラ的な、背景的な役割(演技)をする。私は演劇をかじったことがあるのでともかく、他の人たちもちゃんと積極的に、演技にも参加していたので驚いた。まあ勝手を知った人たちが、おそらくオペラの合唱に参加していたのであろうが。

公演本番が近づいて来ると、プロのソリストの人たちが練習に参加する。プロの人たちと一緒に舞台に上がって歌うなんて、なんてすごいんだろう、と私は驚きっぱなしだった。合間には衣装合わせがあったり、オケ合わせがあったりして、本番に向けてどんどん盛り上がるのだ。完全にお祭りだった。

ただ、ものすごく楽しいのは楽しいのだが、大変なのもまた事実だった。私が当初参加していた団体は、週2回練習があったので、仕事をしながらだと、たとえ家の側での練習とはいえ、通うのが大変だった。だから本番が終わると、ほっとするのだった。だからオペラはたまにでいい、と言うのが私の正直な感想だ。いつもやるとなると、あまりにもしんどい。だから、私が参加した公演と公演の間は、数年間空いている。毎年オペラに出る、という経験は、未だかつてしたことがない。

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