見出し画像

経営者はITを知らなくてはならない

経営者の関心ごとは、3つにまとめられる。1)利益率を上げる、2)競争力ある製品を開発する、3)市場の需要に素早く対応する、ことだ。これら3つは、社内のITシステムのありようによって、大きく左右される。ITシステムは、4つの構成要素に分かれ、それぞれの立場があるため、俯瞰して調和させ、まとめ上げるのは経営者でしかあり得ない。

だからこそ、経営者はITについて知らなくてはならない。といっても、自分でプログラミングしたり、システム構築したりする必要はない。社内システムの現場で、どのような担当者がどのような課題を抱えていて、どのような技術で課題解決ができるか、その道筋を理解して判断できればよい。


ITは経営に直結する

社内ITシステムは4つの構成要素がある。ひとつは「ユーザ」、もう一つは「IT管理者」、「ソフトウェア」、最後は「ハードウェア」だ。

ITを構成する4つの要素と「障壁」

ユーザ

ユーザが製品開発の主体である。ユーザを教育し、適切なIT環境を提供しなくては、性能の高い製品を開発できないばかりでなく、市場への投入が遅れ商機を逃すことになる。

ユーザが求めることは、自分が使いたいときに、使いたい分だけのソフトウェアライセンスとハードウェアリソースがあることだ。また、業務のほとんどの時間をアプリケーションを操作して過ごすので、使いやすいインタフェースのアプリケーションが求められる。

IT管理者

社内ITシステムの要となる担当者だ。システムに精通し、24時間365日、安定的に運用するために欠かせない。情報漏洩やデータ欠損などがひとたび生じれば、まさに経営に響いてくる。

また、良しあしは別として、IT管理をシステムサポート会社に外注する企業もある。自社で人材を賄うか、外注やSaaSを使うかなども経営判断となる。

ソフトウェア

商用ソフトウェアのライセンス料は値上がりするばかりだ。ソフトウェアは海外製が多く、円安やインフレの影響もあるだろう。ソフトウェアのコストを下げ、効率的に使用することが、利益率の向上に直結する。

どのソフトも、かつて誰かが選定して導入されたもので、使用されてきた歴史やユーザの業務や習慣にまで影響を与えており、経営の重要な要素だ。

ハードウェア

ソフトウェアと共に日々進化しており、事業に適切なものを採用する必要がある。処理速度が向上していることに加え、画像処理用のチップ(GPU)を計算に使用したり、物理的なサーバの構成に制約を受けずに仮想的なシステム環境を柔軟に構築する技術も使われるようになった。このことで事業に質的な変化をもたらす可能性がある。

またクラウドは、空調を含む電気代や設置スペースが従量課金に含まれ、需要に応じて素早く対応できるため、最近人気になっている。

ITの「障壁」

先に上げたITを構成する4つの要素には、それぞれの立場があり、お互いに「障壁」がある。

ユーザとIT管理者のせめぎ合い

ユーザは自由にアプリケーションをインストールして、思うままに使いたい。一方で、IT管理者はセキュリティ上、ユーザの好き勝手にはさせられない。どの程度のリソースをどのユーザへ割り当てるかも、事業目標に応じた判断が必要になる。

そのため、ユーザはIT管理者を融通の利かない「担任の先生」と思うし、IT管理者からすれば、主張の強いユーザを「クレーマー」のように感じるかもしれない。

ユーザが加点式でゲームをしているとすれば、IT管理者は減点式のゲームをしている。保守的にならざるを得ない。しかし、経営判断で効率的なシステムを導入するためには、「攻めのシステム」へと転換しなくてはならないときがある。ユーザにはできない、まさに経営者にしかできないことだ。

ソフトウェアとハードウェアの断絶

正直なところ、ソフトウェアとハードウェアの両方を熟知したエンジニアが少ない。僕はそのどちらの会社にも勤めたが、それぞれ独特の文化があった。それはよって立つところが全く異なるからではないか、と考える。

例えば、CAEは物理シミュレーションを行うソフトウェアだが、もちろん自然界のシステムに従うため、物理を知っていれば、結果を予想したり、筋道だって理解することができる。

いっぽう、ITシステムは、人間が規定したシステムであるため、どのアプリケーション、OSとハードウェアの組合せで稼働可能か、など経験し暗記し、最新情報についていかなくてはならない。

そのためか、IT管理者は専門的なソフトウェアをあまり知らないし、ユーザはハードウェアやシステムについて詳しくない、という状態になる。

ITの4つの要素をまとめるのは経営者の務め

ユーザ、IT管理者、ソフトウェア、ハードウェアのそれぞれの立場を知り、経営者の関心事である、利益率、競争力、タイミングの課題に貢献するようにまとめ上げる必要がある。

ITを円滑にするミドルウェア

経営者がITを知るために、ミドルウェアについて知ることも有益かもしれない。ミドルウェアは本来、アプリケーションとOSの間にあるソフトウェアの事だが、ITの4つの構成要素を考えるとき、それぞれのリソースをまとめ上げるものとして、真ん中においてもよいのではないか。

このブログでは、ミドルウェアを中心に、どのようにリソースを最適化し、経営課題に貢献するかをシリーズとして書きたい。機能性能の細かい話というより、どのような道筋でどのように価値をもたらすかに絞って紹介していきたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?