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シェアサイクル利用者数トップの岡崎市に聞く!東海オンエアや徳川四天王など観光資源のシェアサイクルへの活かし方

徳川家康公生誕の地として有名な愛知県岡崎市。新幹線で東京まで約2時間、大阪まで約1時間半とアクセスが良いことも特徴です。そんな岡崎市は、なんとシェアサイクル「HELLO CYCLING」の利用者数が全国トップなんです!岡崎市観光伝道師の東海オンエアや徳川四天王など、観光資源をフル活用したシェアサイクル事業の取り組みを、岡崎市の小島さん、伊藤さん、岩瀬さんと岡崎市観光協会の赤堀さんに聞いてみました。


QURUWA(くるわ)の回遊性向上や利便性の向上を目的に開始


ー 岡崎市がシェアサイクル事業を始めたきっかけを教えてください。

岡崎市 総合政策部企画課 岩瀬 聡太さん

岡崎市 岩瀬さん:岡崎市のシェアサイクル事業は2017年10月からスタートしました。岡崎市が事務局を務めるスマートコミュニティ推進協議会において、将来的なシェアリングサービス利用の可能性を検討している中で、手軽に始められるシェアサイクルに着目しました。QURUWA(くるわ)の回遊性向上や利便性の向上を目的に、シェアサイクル事業を始めました。

QURUWAとは:乙川が東西に流れる岡崎市。その中心部に位置する公共空間のそれぞれを「Q」の字で結んだエリアを「QURUWA」と名付けた。

ー 今はどのような座組でシェアサイクルを運営されているのでしょうか。

岡崎市 小島さん:現在は、岡崎市と岡崎市観光協会が連携してシェアサイクル事業を運営しています。岡崎市ではシェアサイクルを活用したまちづくりの取り組み検討や公共用地にステーションを設置する際の交渉や申請などを行い、岡崎市観光協会が現場の運営を担当しています。

観光協会 赤堀さん:岡崎市観光協会では、毎日ステーションを巡回してバッテリー交換や自転車の整理、簡易的な自転車の不具合であれば自分で修理をしています。朝5時から7時くらいまでにバッテリー交換や車両の状態確認のためにステーションへ行っていますね。車両の不具合があれば引き上げて自転車修理会社へ持っていきます。

バッテリー交換の様子

東海オンエア、徳川四天王・・・岡崎市にゆかりのある車両で”聖地巡礼”が流行に

ー 今でこそシェアサイクルの利用者数トップを誇る岡崎市ですが、いつから利用者が増えたのでしょうか。

一般社団法人岡崎市観光協会 赤堀 朝美さん

観光協会 赤堀さん:2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大した頃、公共交通機関が利用しづらく、「自転車での移動が良いよね!」という世の中の風潮があったかと思います。」

そのタイミングで東海オンエアや徳川四天王のラッピング車両について知っていただいた方が増えて、シェアサイクルであれば人と接しなくても効率的に安く移動ができる!ということで利用者が少しずつ増えていきました。

ー 東海オンエアや徳川四天王のラッピング車両は、岡崎市独自の取り組みですよね。どんなデザインがあるのでしょうか。

観光協会 赤堀さん:岡崎市の観光推進課の案でラッピング車両を開始しました。東海オンエアは岡崎市の観光伝道師のため、何か一緒にできないかという可能性を探っていました。

また、岡崎市出身のマルチクリエイター内藤ルネさんのルネガールやルネパンダのデザイン、オカザえもん、徳川四天王のラッピング車両など、岡崎市にゆかりのある車両にしています。

カラフルで可愛らしい自転車
東海オンエア号。取材中に聖地巡礼から帰ってきた方に遭遇

ー 岡崎市ゆかりのあるものをうまく活用した車両で可愛いですね!ユーザーからはどんな反応がありますか?

観光協会 赤堀さん:ラッピング車両目当てでシェアサイクルに乗る方が多いですね。ラッピング車両から順に予約中になることが多く、利用頻度も多いため壊れることがあります。SNSでもラッピング車両の投稿がある他、ステーションに止まっているところを見て写真を撮りにくる方もいます。ラッピング車両があることで、自転車自体に付加価値があると感じています。

ーラッピング車両ではどのようなところを巡る方が多いのでしょうか。

観光協会 赤堀さん:東海オンエアのマンホールが市内全域に配置されているので、自転車で巡っていただいたり、東海オンエアがよく行くお店やほてる小柳津、YouTubeで撮影した場所を巡るなどの利用が多いと思いますね。武将のラッピング車両の場合、岡崎市内の史跡巡り、岡崎城のある公園に行ったりしている方がいます。

東海オンエアのマンホール
井伊直政の自転車

データ分析や再配置を行い、日常利用者も増やす工夫を

ー これだけ観光スポットがあり聖地巡礼が流行っていると、やはり観光者の利用が多いのでしょうか。

岡崎市 総合政策部企画課 伊藤 雄太さん

岡崎市 伊藤さん:観光と日常利用の割合は過去のアンケート結果を見てみると、半々です。日常利用者を増やすためにデータ分析結果からステーション設置場所を決めることもあります。自転車の利用場所が偏ることを防ぐために、走行軌跡データを分析して東岡崎駅から1km以内の大きいマンションから自転車で通勤してる人が多いと仮説を立ててマンション付近にステーションを設置したところ、狙い通り朝はマンション付近から駅に自転車が移動しました。

日中は観光利用者が駅から岡崎市内を周遊して駅に返却する、夜は駅から住宅地に自転車が移動するというように、1日の中で自転車が複数回利用されるようなサイクルがうまく立てられています。

観光協会 赤堀さん:朝に管理画面を見ると、JR岡崎駅からイオンモール岡崎へ移動していて、しばらくイオンへ自転車が駐輪していることが多いです。イオンで働いている方が利用しているのかなと思っています。

イオン岡崎南店 西入り口

ー 市民からはどのような声が届いていますか?

岡崎市 小島さん:多くの観光客が乗ってくれているからこそ、自転車を綺麗に丁寧にして欲しいという声や、ステーションに自転車がないのでどうすれば良いかという声が届きます。シェアリングサービスのため、自分で自転車があるステーションに行く必要がありますと話をして理解してもらっていますね。このような連絡をいただく頻度が増えてきたことから、シェアサイクルという存在が浸透しつつあることを実感しています。

観光協会 赤堀さん:ステーションでシニアの方にお会いした時に、「大変だね〜儲かっとんのか?」と聞いてくださる方がいました(笑)そこへ通勤帰りに使ってる人が来て、「僕らがもっと使いますね!」と言ってくれたことが嬉しかったです。自宅付近にステーションがあると良いよね、など、市民の方々からこんなことしたいんだけどできるの?という声が増えてきました。

ーシェアサイクルの利用者を増やすために実施していることはありますか?

観光協会 赤堀さん:自転車を別のステーションへ移動させる再配置に力を入れています。朝は通勤・通学までの駅利用、日中は駅に置いてある自転車を観光客が使うことを考えると、主要な駅に自転車があった方が良いので、毎日管理画面で自転車の位置を確認しながら主要駅に自転車を戻しています。

中心市街地(QURUWA)ではシェアサイクルを使ったパークアンドライドの試験的取り組みを実施

岡崎市 都市政策部まちづくり推進課 小島 孔一さん

岡崎市 小島さん:大きなイベントがある時に中心市街地(QURUWA)に車で来る人が多いため渋滞が発生しているという課題があります。渋滞を解消すべく、QURUWAの縁の部分にあるコインパーキング等駐車場(フリンジパーキング)にシェアサイクルステーションを設置することで、中心市街地に車で行くのではなく、駐車場に車を停めて、その後シェアサイクルで来ていただき、まちを楽しんでいただくことを目標とし、まずは少しでも多くの方にパークアンドライドそのものに慣れていただくために、ある程度利用が見込まれる駐車場において2023年2月から試験的に取り組みを行っています。

QURUWA地区

QURUWA周遊の際に、車からシェアサイクルへの乗り換え誘導効果や来街者の回遊エリアの変化、シェアサイクルによる回遊人口拡大の可能性を検証し、効果が確認できた際には、コインパーキング等駐車場運営事業者と連携してシェアサイクルのステーションを増やしていきたいです。

三井のリパーク駐車場に設置したステーション

岡崎にとってシェアサイクルは”人と地域をつなぐ回遊促進の鍵 “


ー岡崎にとってシェアサイクルとはどのような存在でしょうか。

岡崎市 小島さん:キーワードは、人と地域をつなぐ回遊促進の鍵ですね。開始当初はシェアサイクルという単語自体が浸透しておらず、先が見えない事業でしたが、今のシェアサイクルは、岡崎市の交通手段として確立している状況で、観光客に加えて日常利用も多く、様々なニーズを満たせていると感じています。

まちの様子を見ていると、東海オンエアのファンがたくさん自転車を使ってくださっています。その状況が長く続いて欲しいですが、東海オンエアに帰属するのではなく、しっかりと収益を伸ばせるような新しい施策にも積極的に取り組んでいきたいです。街中の回遊促進のキーとしてシェアサイクル事業を大切に育てていきたいですね。

ー最後に、岡崎市をどのような街にしていきたいですか。

岡崎市 小島さん:QURUWA地区では、「新しい住み方・働き方・遊び方を楽しめる、これからの100年を暮らすウォーカブルなまち」を目指して様々な公民連携の取り組みを実施しており、それにより地区内の籠田公園や中央緑道、乙川周辺整備や魅力的なお店の出店など、徐々にまちが変化してきています。そういった変化にあわせて歩いて楽しく、自転車で回れて、車でも来やすいまちとして、地域の暮らしが豊かになるようなまちづくりを行っていきたいです。

そして最終的には、この地区において実施される公民連携手法等のプロセスを、市内他地区にも波及させ、市内全域において、QURUWA地区をモデルとしつつ、それぞれの地区の特色も活かしたまちづくりを行い、「みんなが幸せを感じることができるまち」にしていきたいです。


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