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Salesforceのカスタマーサクセス徹底分析〜成熟したカスタマーサクセスモデルを参考にする

カスタマーサクセスを会社に導入するうえで、SaaSの生みの親であり、先端企業であるSalesforceのカスタマーサクセスの取り組みには大変感動しました。導入をスタートし、習慣的に利用できるようサポートし、Salesforceのファンへと導いていく顧客体験がとても素晴らしいです。

そこで本記事では、Salesforceが行っているカスタマーサクセスの取り組みを共有し、SaaS企業・IT企業が自社のカスタマーサクセス作りの参考になるノウハウをシェアします。

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1.なぜ Salesforceに倣うべきか?Salesforceがカスタマーサクセスの元祖だからだ。

1.1 Salesforceは「SaaS」「カスタマーサクセス」の生みの親である
実は、世界で初めて「SaaS」という概念を考えたのはSalesforce代表のマーク・ベニオフ氏なのです!
そして、カスタマーサクセスという言葉、そして組織もSalesforceから生まれたものです。Salesforceを立ち上げたときにマーク・ベニオフ氏は4つのコアバリューを定めました。そのうちの一つが「カスタマーサクセス」です。
カスタマーサクセスは1つの職能・部署が行うものではなく、全社で考えるべき理念として生まれたのです。

1.2 2010年時点ですでにカスタマーサクセス組織を設置
マーク・ベニオフ氏が自社の経営ノウハウを語った書籍「クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語」によると、本書籍を出版した2010年の段階ですでにカスタマーサクセスチームが組成されております。

※また大手企業向けのプロフェッショナル・サービスチームや、インサイドセールス組織もすでに出来上がっており、THE MODELで説明されている分業体制やフェーズ管理も構築されていたことが読み解けます。

つまり、SalesforceのSaaS経営、カスタマーサクセス作りは日本企業の遥か先をいっており、彼らに習うことでタイムマシンのカスタマーサクセス組織作りが可能です

2.Salesforceのカスタマーサクセス全体像

では、Salesforceはどのようなカスタマーサクセスを行っているのでしょうか。
2020年09月07日に日経クロストレンド様が掲載された記事に「ご契約後のカスタマージャーニー」として既契約顧客に対するカスタマーサクセスの全体像をSalesforceは掲載しています。

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2.1 契約→導入→定着→活用→更新のフェーズに合わせたコンテンツ設計
Salesforceは、THE MODELの取り組みからもわかるように、顧客のフェーズ・ステップに合わせた形でコンテンツ・ツールを細かく設計している点が特徴的です。
Gainsightが体系化したカスタマーライフサイクルもSalesforceの取り組みに近いフェーズ管理の参考モデルを図解化しています。

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2.2 ハイタッチ、テックタッチ、ロータッチの使い分け
Salesforceの着目すべき取り組みは、すでにハイタッチの取り組みは有償扱いとしていることです。言い換えれば、基本サービス(共通支援)としてのカスタマーサクセスであるロータッチ・テックタッチが整備されているとも言えます。

※なお、日本のSaaS企業は、まだハイタッチのカスタマーサクセスの取り組みが中心であり、Salesforceも初めはそこから始まったと聞いております。
しかし、2020年8月27日に公開されたBloomberg社の記事によると、Salesforceはセールスと顧客サポートのスタッフを経営合理化のためリストラを計画しているとのことです。
タイムマシンの観点であれば、「①ロータッチ・テックタッチの整備」「②顧客サポート(カスタマーサクセス)スタッフの人員削減」はいずれ日本企業にも訪れる合理的な道筋ではないかと予測できます。

3.Salesforceのロータッチ・テックタッチの取り組み

Salesforceのロータッチ・テックタッチの施策について、もう既にページは無くなってしまったのですが、「Salesforceカスタマーサクセスグループ」という1つのサイトとしてまとめられており、テックタッチとしてどのようなデジタルコンテンツを用意していたか参考とすることが出来ます。

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3.1 Salesforceのテックタッチといえば「トレイルヘッド」
Salesforceのテックタッチの根幹をなすのは、トレイルヘッドと名付けられたSalesforceのトレーニングサイトです。
トレイルヘッドは「山道」の訳であり、顧客が自らの足で歩み、スキルを獲得していく姿を表現しています。

目次付きの複数記事からなる学習コンテンツがいくつも用意されており、1つのコンテンツに1時間程度の学習時間がかかります。

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各学習コンテンツの中で、Salesforceを利用するうえでの設定方法、機能の利用方法、仕事におけるメリットなどを解説しています。

また、学習のモチベーションとして「キャリアアップ」を促進しているのもポイントです。Salesforceの素晴らしい点は「どれだけSalesforceを使いこなしているかを履歴書に書く人がいる」ことです。
Salesforceはこれを大いに推奨しており、トレイルヘッドの学習者に対してWEB上でバッジの付与や認定資格の発行を行っています。

3.2 Salesforce利用者が集う「トレイルブレイザーコミュニティ」
日本国内ではサイトリリースをしていないのですが、本国の米国を中心として、Salesforceのコミュニティが出来上がっており、WEBサイトとして「トレイルブレイザーコミュニティ」を設けています。
このコミュニティの中でSalesforceの利用ノウハウのキャッチアップができるようになっています。

※Salesforceのコミュニティは「クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語」から読み解く限り、カスタマーサクセスの活動からではなく、BtoBマーケティングの活動からスタートしています。
創業以降のSalesforceのマーケティング戦略は、「既存顧客の声」と「メディア記者」という第三者にSalesforceを語ってもらうことでした。
BtoBマーケティングの施策として、Salesforceの利用顧客が増えるにつれて、徐々に顧客登壇のものを増やしていったのです。
ここで積極的に登壇したり、交流に参画したりしていた顧客が、コミュニティの原型になっていると思われます。
つまり、はじめからテックタッチでコミュニティサイトを作ったのではなく、ハイタッチで作ってきた熱量の高いファンを作ったうえでコミュニティサイトを構築したのです。

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4.Salesforceのカスタマーサクセスの指標

Salesforceはカスタマーサクセスの指標として何を追いかけているのか。
実際のカスタマーサクセスのご担当者の方から共有頂いた情報によると、「契約更新率」「活用スコアの上昇率」「施策への顧客反応率」の3つをカスタマーサクセスの指標として追っています。

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4.1 契約更新率
カスタマーサクセスの青本(カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則)によると、2005年にマーク・ベニオフ氏は自社の経営幹部を集めて、上級副社長であるデンプシー氏に語らせました。

「この事業には根本的な欠陥があり、現在の道をそのまま進んでいけばその先は破滅だ」
「犯人は、チャーン(解約)だ。現在のSalesforceの月のチャーンレートは8%だ」
「計算してほしい。毎年顧客のほぼ全員がいなくなることがわかるだろう」

このプレゼンテーションをきっかけに、全社規模でチャーンに着目し、会社として解約数とその削減の計画を立てたのです。

カスタマーサクセスにおいて最も重要な指標はチャーンです。上記にある通り、月次解約率が8%だったとしても、それを×12ヶ月続けることで、ほとんどの顧客が解約状態となるのです。

4.2 活用スコアの上昇率
Salesforceは自社製のツールの中で、各種指標をスコアリングしています。
利用状況の評価に用いるのは、製品の利用ログデータから計測した下記のような項目です。
●ライセンス有効化率、ログイン率といった製品自体の利用度
●顧客情報参照数、案件情報参照数といった主要機能の利用度
●顧客情報件数、活動件数といったSalesforceに蓄積されるデータ量

Salesforceプロダクト機能利用

個社単位でどれだけ製品を利用しているかを可視化し、利用が滞っているお客様を検知する仕組みを構築しているのです。
日本企業の中でも、同様の取り組みとして、ヘルススコアツールやBIツールで可視化する企業様が増えてきています。

4.3 施策への顧客反応率
SalesforceはマーケティングオートメーションツールのPardotを買収しております。Pardotは自社でも積極的に活用し、MAツールを介して配信したメール・イベント・資料といった情報への反応率を見ているそうです。
上記に掲載した「ご契約後のカスタマージャーニー」から見ても、下記のようなメールを特定のタイミングで配信し、テックタッチのコミュニケーションを図っていることがわかります。
●はじめようジャーニーメール
●活用促進ジャーニーメール
●満足度アンケート

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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