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カスタマーサクセスの青本を要約する~原則⑧顧客の指標を深く理解する

カスタマーサクセスを勉強しようと思ったときに、最も有名でおすすめされる本は「カスタマーサクセスの青本」だと思います。

しかし、このカスタマーサクセスの青本、翻訳のせいなのか少し内容がわかりにくいです。
実際のカスタマーサクセス業務を行っている方に向けて、本の内容を要約・解釈しわかりやすく表現する必要があります。
そこで、「カスタマーサクセス10の原則」の主要なものを取り上げ、カスタマーサクセスの現場で役に立つノウハウをお届けします。

▼カスタマーサクセス10の原則:解説記事をリンクでまとめております

顧客の指標を深く理解する

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この章の感想を正直に言います。
「あれ、これインタクト社(執筆者の会社)の宣伝記事じゃないか・・・?」
CMRRというMRR(マンスリー・リカーリング・レベニュー、毎月の売上)の改変バージョンのような謎指標(CMRRなんて使ってるシーン私は見たことがありません…)を紹介し、これらの指標をダッシュボードで見ると良いと管理画面の画像をぺたっと貼っているので、少し不親切な章だと思いました。

SaaSビジネスの指標を理解しよう

「顧客の指標」と表現されていますが、説明されているのはSaaSビジネスで用いられる一般的な指標だと思いましたので、こちらに再掲します。

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SaaSビジネスの特徴は、月額課金(サブスクリプション)であるため、前期の売上がそのまま維持されていくことです。(上記の期初MRR)

期初の数字に、新規契約、追加契約(クロスセル、アップセル)の数字をいかに積み上げていくかが重要その1です。
そして、上記の黒枠である「チャーン」(顧客の解約)があると、MRRがチャーン分マイナスになって下がっているのが図からわかると思います。
このチャーンを防いで、MRRの数値をいかに保つかが重要その2です。
※繰り返しとなりますが、MRRとは毎月得られるストック売上のことです。

これらの指標を管理して、コントロールすることが、SaaSビジネスの経営者や財務担当に求められる役割です。

指標管理のイメージ

SaaSビジネスの指標管理を行うのは、主にCEO、事業責任者、財務担当、カスタマーサクセス責任者になると思います。
SaaSビジネスに特化した米国で有名な投資家のdavid skok氏は、投資先の経営者に対して下記のようなグラフで指標管理をすることをオススメしています。

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NewMRR(新規MRR/新規契約)、ExpantionMRR(拡張MRR/クロスセルアップセル等)、ChurnedMRR(解約MRR)の3つを計算して、グラフにしているのがわかります。
※英語になると一見難しく見えますが、先述した図「SaaSビジネスの指標」と内容は変わりません。

SaaSビジネスの重要指標であるLTV:CAC比率

MRRとチャーンをもう少し別の角度で見てみましょう。
SaaSビジネスで用いられるLTVの計算式は、カスタマーサクセスの青本を要約する~原則②顧客とベンダーは何もしなければ離れるでも説明しました下記の方程式から成り立ちます。

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ユーザーあたりの月間平均売上(ARPU)を上げるためには、そもそもの製品単価を上げることに加えて、カスタマーサクセスがExpantionMRR(拡張MRR/クロスセルアップセル等の追加契約)を高める必要があります。

月次解約率を下げるのもカスタマーサクセスの役割であることは言わずもがなです。

こうしてカスタマーサクセスの力によって(MRRとチャーン改善をすることで)高められたLTVは経営上どう考えられるかといいますと、その分営業マーケティングにコストをかけることが出来ます。

SaaS経営者の中では「LTV  >3CAC」(LTV>CACの3倍が成り立つまで営業マーケティングにコストを使って良い)の方程式が有名です。
※CACとは顧客獲得コスト≒1顧客獲得あたり営業とマーケティングコスト

そう、カスタマーサクセスが頑張って指標を伸ばせば、その分営業マーケティングにお金を使える(より広い顧客に対しアプローチ出来るようになる)のです。

LTV:CAC比率の改善例:hubspot社

LTV:CACの比率は「ユニットエコノミクス(≒事業の収益性)」という呼ばれ方をすることもあります。
LTVが高く、CACが低い。つまりたくさん売上が出てコストが低い状態であれば会社経営として健全な状態となります。

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こちらはdaivid skok氏が記事の中で紹介した、hubspotのLTV:CAC比率です。
QごとにどんどんLTV:CAC比率がよくなっているのがわかります。
その要因は、MRR CHURN(月次解約率)の改善によるものです。また、AVG MRR(平均MRR)も高くなっていることがわかります。
これによってLTVは向上。CACは維持されているので、強固なユニットエコノミクスを作ることが出来ています。

このようにユニットエコノミクスが改善に向かっている財務数値に対しては、ベンチャーキャピタルなど投資家からの反応もよく、時価総額を高くする(多くの資金を調達できるようになる)ことにも繋がります。

カスタマーサクセスの頑張りは、SaaSの経営に直接紐付いてるのです。
カスタマーサクセスの青本の内容からはほとんど脱線しているのですが、カスタマーサクセスは経営であり、指標をよく理解することが大切であることが伝われば幸いです。


おわりに

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藤島 誓也:Twitterアカウント
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