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SaaSのカスタマーサクセスを10年やって学んだ大切なこと@Salesforce米国 Brett Matthews

Salesforceは「SaaS」「カスタマーサクセス」の生みの親。SaaS事業のカスタマーサクセスに従事する方であれば必ずキャッチアップしておきたい会社の1つです。

私は日頃、Salesforceのカスタマーサクセスの取り組みをキャッチアップしているのですが、Salesforceの米国本社(カリフォルニア州のサンフランシスコ)にて10年前にカスタマーサクセスとして入社し、以後ずっとカスタマーサクセスの仕事を続けてきたBrett Matthews(ブレット・マシューズ)さんが集大成となる記事を書きました。
それは「10 Lessons from 10 years in Customer Success」、10年のカスタマーサクセスを経て学んだ10のレッスンです。

カスタマーサクセスの仕事術や、組織作り、施策、新しい取り組みなどにおいて大変参考になる記事で、内容の一部を紹介したいと思います。

カスタマーサクセスの学び1. 「変化は目前に迫っているが、価値観に忠実であれ」

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Salesforceはセールス×クラウドの領域からスタートしましたが、上記の図の通り、現在は巨大な製品ポートフォリオを有しています。直近の大型買収では、TableauやSlackがSalesforceの仲間入りをしたことで、更に領域が膨れ上がりました。
日本でも、私が前職務めていたビズリーチは人材領域やその他領域で複数の製品を有していましたし、freee、Sansan、マネーフォワードといった上場SaaS企業の多くも複数製品化しています。
製品の内容はそれぞれ異なるため、カスタマーサクセスの難易度も高くなっていきます。

ブレット・マシューズさんがおっしゃっているのは、「企業文化」の重要性です。Salesforceは製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を社会貢献活動に費やすことができる「1:1:1モデル」があります。Salesforceではどんなに事業が拡張しても、この社会貢献志向の価値観は変えませんでした。
日本のSaaS企業も、自社がどんなに大きくなっても変えない「価値観」は何か?自社が統一すべき「企業文化」は?を考えることが重要となります。

カスタマーサクセスの学び2. 「ラーニングプラットフォームの進化」

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Salesforceのカスタマーサクセスにおける核の一つが、学習サイトである「Trailhead(トレイルヘッド)」です。
ゲーミフィケーションを取り入れた学習で、製品のセルフオンボーディングを助けています。
BloombergではSalesforceにおけるカスタマーサクセス担当者のリストラについての記事をあげ、私個人は衝撃を受けたのですが、トレイルヘッドはSalesforceのカスタマーサクセスを劇的に効率化させたものとして機能していることの証でしょう。

ブレット・マシューズさんの記事を読むまで知らなかったのですが、このトレイルヘッドは「myTrailhead」という従業員育成verのサービスもあります。カスタマーサクセスにおいて社内担当者の製品理解のばらつきや、育成負担の課題を聞くことがありますが、Salesforceでは社内のカスタマーサクセス担当の育成にもラーニングシステムを活用することで組織の整合性を図っているようです。

カスタマーサクセスの学び3.「組織全体の整合性と透明性が鍵」

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Salesforce独自の目標管理フレームワークに「V2MOM」という手法があります。カスタマーサクセスに限らずSalesforceの全社員がV2MOMの型に沿って自身の目標を設定しています。
これにより、代表・役員・部長・マネージャー・メンバーなど役職問わず、かつ全部署の目標がわかるため、会社全体ないし個人がどの方向に向かって仕事を頑張っているのかがわかるのです。

ブレット・マシューズさんは、Alignment and Transparency(アラインメントと透明性)があるからこそ、組織の連携が強化されたと説明しています。
カスタマーサクセスにおいては営業・マーケティング・プロダクト・カスタマーサポートなど様々な部署連携が不可欠です。
そして連携を円滑に進めるためには、双方の理解やリスペクトが肝心です。他の部門の各社員が何の目標を持って働いているのかを理解することで良いコミュニケーションが生まれるのです。

カスタマーサクセスの学び4.「コラボレーションは必須。あらゆるツールを使いこなすべき」

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Salesforceは、Chatter・Quip・Slackといった従業員間のコラボレーションツールを自社の事業として運営し、当然ながらこれらを積極的に活用しています。CS Opsという言葉が米国でも日本でも流行りだしていますが、カスタマーサクセスの業務を円滑に進めるにはITツールの導入は不可欠です。
ブレット・マシューズさんの解説を見るに、Chatterは顧客ステージの状況共有に活用しており、顧客のステップが進んだ際にChatter上でリアルタイムに検索し把握ができるようになっています。
THE MODELでは福田 康隆さんが毎日Chatterを見て、商談の進捗をチェックしているというエピソードが紹介されていましたね。
またQuipで個社ごとのアカウントプランニングについて共有しあっているとブログには書かれています。Quipはドキュメントやスプレッドシートにチャット機能がついたもので、WEB会議ではなくチャットベースで議論するのに用いるツールです。「解約可能性が高い●●社について阻止方法を議論する」などで活用しているのだと思います。

カスタマーサクセスの学び5.「カスタマーサクセスが軸となり顧客の成功を作っていく(カスタマーサクセスの仕事)」

ブレット・マシューズさんは、カスタマーサクセスの方法論に磨きをかけ、ツールを進化させ続けるべきだと唱えています。
また、カスタマーサクセスの仕事はこれだ!と言わんばかりに、カスタマーサクセスにおいて考えるべき取り組みについてまとめています。

・顧客が喜ぶためにするべきことの整理
・お客様の要望を実現するプログラムの作成
・業界、業種、セグメントごとのサービス水準担保
・顧客要望の把握(Salesforceでは機能要望管理にIdea Exchange利用)
・顧客リスクの把握とアラートシステムの実装
・ビジネスバリューの計測(KPIやCSAT)
・製品変更にあたっての各種調整

カスタマーサクセスの学び6.「 カロリーをどこに置くか(カスタマーサクセスのスケール)」

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記事の中では、すべての顧客に同じカロリーは割けないし、顧客にとっても関わってほしい度合いは異なる、といったことが書かれています。
最も伝えたいことは「カスタマーサクセスをスケールさせるための仕組みに投資しなさい」ということ。
セグメンテーションやスコアリングで注力顧客を分類しながら、自分で設定したい人、サポートがほしい人とサービス内容を分けましょうとブレット・マシューズさんは説明しています。
たとえば、自分で設定ができる(セルフラーニングが出来る)ユーザーに対して、Salesforceのカスタマーサクセスは、自動化されたメール配信、ラーニング兼コミュニティツールのトレイルヘッド、チャットサービスなどでサポートするテックタッチの体制を整えています。

また、Salesforceはサポートや導入支援にあたってのコンサルティングパートナーのエコシステムを各国で形成しています。テックタッチや代理店の施策によってスケーラブルなカスタマーサクセスの体制を築いているのです。

カスタマーサクセスの学び7. お客様のスチュワード(執事)になる

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基本的ながら出来ていないこととして、下記が述べられています。
顧客理解をするうえで、その会社の従業員のように顧客企業のことを理解することはカスタマーサクセスにおいて重要です。

・SNSで顧客の経営者をフォローする
・顧客のビジョンやバリューを理解する
・顧客のIRレポートを読む
・顧客の重視項目、戦略を理解する

カスタマーサクセスの学び8. 従業員のウェルネスを優先する

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ブレット・マシューズさんは下記レポートを引用しながら、体調と生産性の関連性について説明しています。
「Gallup Business Journalによると、心身ともに充実している従業員は、職場で優れたパフォーマンスを報告する可能性が13%高く、医療費が41%少なく、会社に留まる可能性が32%高い」

Salesforceは2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)の発生に伴って「B-Well Together」という健康支援の動画を社内外に配信し始めました。
ウェルビーイングの第一人者からの情報や対処法を紹介するもので、従業員とそのご家族が困難な時期を乗り超えられるようサポートしています。
お客様を支援する立場のカスタマーサクセスは、その前提として自分自身の健康を保つべきなのでしょう。

カスタマーサクセスの学び9. エスカレーションの把握と計画

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カスタマーサクセスは顧客の声の代弁者、ともよく言われますが、ブレット・マシューズさんは記事の中で顧客の声(VoC)のエスカレーションの仕組み作りについて説明しています。

・カスタマーサクセス部が積極的にエスカレーションする習慣をつける
・既存顧客に対してもエスカレーションパスを知らせる
・オンボーディング、製品の期待値ギャップ、技術問題、顧客感情などをカスタマーサクセス部が把握する
・クロスファンクショナルチームにフィードバックや情報提供をする

まずカスタマーサクセス部自体が、積極的に企業内にエスカレーションをする文化を作りながら、既存顧客が自身でエスカレーションする仕組みや、エスカレーション後の各部門/横断部門へのフィードバックをするようにすることで、顧客の声を元にした強固な組織が出来上がります。

カスタマーサクセスの学び10. 共感をもって導く

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ブレット・マシューズさんは、顧客の個人的な関係にも共感するべきだ、と唱えています。
それは家族、子供、配偶者、兄弟、パートナー、親戚・・・といった顧客の身の回りの人間関係のことで、在宅勤務が普及し始めた昨今は、仕事とプライベートのバランスが取りづらい環境へと変わってきています。
ハッとさせられたコメントとして、「家族のニーズが仕事の優先度と競合している」という説明がありました。
カスタマーサクセスをするうえで、自社ツールに関連する他ツールの利用、他業務に費やす時間が競合する、ということは理解出来ていましたが、今の時勢を考えると仕事だけでなく家族の時間も考慮して支援する必要があります。プライベートな話ですので行き過ぎは禁物ですが、家族の話を含め、顧客の話をもっと聞くことが求められるのでしょう。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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