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カスタマーサクセスの青本を要約する~原則⑨ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める

カスタマーサクセスを勉強しようと思ったときに、最も有名でおすすめされる本は「カスタマーサクセスの青本」だと思います。

しかし、このカスタマーサクセスの青本、翻訳のせいなのか少し内容がわかりにくいです。
実際のカスタマーサクセス業務を行っている方に向けて、本の内容を要約・解釈しわかりやすく表現する必要があります。
そこで、「カスタマーサクセス10の原則」の主要なものを取り上げ、カスタマーサクセスの現場で役に立つノウハウをお届けします。

▼カスタマーサクセス10の原則:解説記事をリンクでまとめております

ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める

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ハードデータの「ハード」が付いてるのが何故かよくわからないのですが、こちらの章もカスタマーサクセスの指標管理に関する内容です。
冒頭では、カーネギーメロン大学の成熟度モデルを解説しており、このモデルから自社のカスタマーサクセス組織がどの程度成熟しているのか考えることができます。

カスタマーサクセス組織の成熟度モデル

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この図は組織の能力の成熟段階を示しています。カスタマーサクセスの業務と照らし合わせながら一緒に考えてみましょう。

「①初期」
場当たり的対応のカスタマーサクセスです。特にやり方や手順を定めることなく、とりあえずカスタマーサクセスの担当を置いておこう!といった初めのフェーズです。

「②管理された」
「初期」の状態から数ヶ月~1年ほどカスタマーサクセス業務を運用した後に、だいたいこんな流れかな、と基本的な手順ややり方が定まってきたフェーズです。

「③定義された」
カスタマーサクセスの業務手順ややり方がマニュアル等にまとまっており、新人が入ってきてもすぐに引き継ぎが出来るようなフェーズです。

「④定量管理された」
カスタマーサクセス業務の各プロセスの行動や結果を、デジタルツールなどで計測し、定量的に見ることが出来る。そのうえで具体的に目標を設定して、マネジメントが出来ているようなフェーズです。

「⑤最適化している」
カスタマーサクセス全体のプロセスや、定量的な数値から、ダメな部分を合理的に判断して修正・調整し、最適なアクションが取れるようなフェーズです。

段階が上がるごとに、組織能力の成熟度が上がっていき、カスタマーサクセスについて合理的なアクションが行えるような体制に成長していっているのがわかります。

カスタマーサクセスの成熟度とベンチャー企業の成長フェーズ

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このカスタマーサクセスの成熟度は、ベンチャー企業としての成長フェーズともリンクしています。
ベンチャー企業が上場する場合は、IR(投資家向け広報)の観点から自社の事業数値の説明責任が生まれます。
予実管理体制(目標設計と業務数値計測)が出来ているか厳しく見られるため、シリーズC~上場準備段階のベンチャー企業では会社内に数値に強い経営企画人材が配置されます。

カスタマーサクセスイベントの登壇企業様はSaaS企業として有名な会社が多いのですが、それらの企業フェーズは「シリーズC~上場準備前」のある程度会社が成熟している事が多く、会社内に数字に強い人材が複数人在籍しています。

そのため、ヘルススコアの設計が相当高度に行われてる発表も多く見受けられるのですが、世の中のSaaS企業はシード~シリーズB段階の会社のほうが多いはずです。そのため、登壇企業の発表を見ては、「ちょっとそこまでは出来ないな…」と吐露するケースや相談を最近よく目にしています。

会社の成長フェーズの違いにより、リソースからも仕方ない面がありますので、無理に有名SaaS企業の施策を真似することなく、自社の組織に合った形でカスタマーサクセスも設計していくことがベストだと私は思います。

カスタマーサクセスの定量目標のつながり

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話が少し脱線してしまったのですが、カスタマーサクセス青本の中では、「顧客の行動」「カスタマーサクセスの行動」「事業の成果」と3つの観点の指標を定量的に見ることを説明されています。

上記の図は私のオリジナルですが、顧客の頑張りとカスタマーサクセスの頑張りが合わさることで、事業の成果に繋がっていくようなイメージです。

「顧客の事業成果」を見る

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しかし先ほどの3つの指標には最も重要で抜けている観点があります。
「顧客の事業成果」です。

法人顧客が何らかのITツールを導入するということは、会社運営のうち何かしらの期待効果を考えて導入するはずです。
会社の全体の単位では「売上・コスト」になりますし、部署単位での目標もあるでしょう。また企業ですので個人単位でMBOによる目標設定をしていることも多いはずです。

顧客の事業成果のうち、何の数値にヒットさせるのか。
その観点がなければ、いくらカスタマーサクセスがあくせく活動し、顧客が管理画面のログインを繰り返しても、本質の目標からは離れてしまいます。

顧客の重要な情報を知るためには「GIVE&TAKE」

この「顧客の事業成果」はセンシティブな情報でもあるため、顧客との信頼関係がなければ教えてもらえません。

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実はカスタマーサクセス部門でよくある悩みの一つは、「自社のツールを提供したことによって顧客がどのくらい成功しているのかわからない」というものです。
SaaSで定量的に図ることが出来るのは、自社ツールの数値だけで、顧客の会社・部門・個人のビジネスの数値がどう変化しているかは直接聞かない限りわからないのです。

顧客を知るためには、テクニックやツールよりも「GIVE&TAKE」の考えのほうが重要だと私は考えます。顧客に「仕事におけるサクセス」を与えるからこそ、その分だけ「顧客の重要な情報」を得ることができるのです。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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