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国内カスタマーサクセス製品ベンダー4社徹底比較まとめ

カスタマーサクセスのIT製品を選定している知人に、「カスタマーサクセス製品がいくつかあり、どのような違いがあるか分かりにくかったので、整理して教えてもらえるとありがたい」とお話を頂きました。
そこで今回の記事では、国内の主要なカスタマーサクセスベンダー4社をピックアップし、それぞれの製品の違いや、対象となるユーザー、今後の展望予測などをまとめました。

※製品比較において作成した「カスタマーサクセス製品比較表」は無償で配布しますので、データで欲しい方は本記事の下記に設置したフォームより直接ご連絡ください。

カスタマーサクセス製品比較表

カスタマーサクセス製品比較

現状、国内のカスタマーサクセスベンダーは、

1.ヘルススコアにより顧客の状況を可視化し、ハイタッチの業務効率化を支援するもの:HiCustomer、pottos 
2.既存顧客向けのサイト(コミュニティサイト等)の管理システムを提供し、テックタッチの実装を行うもの:coorum、commmune

の2つのカテゴリに分かれます。

海外では、1のカテゴリにおいては、Gainsight、Totango、ChurnZero、Nateroといったベンダーが複数存在しており、その中でもGainsightは市場リーダーとしてカスタマーサクセス業界を牽引しています。

日本においても、2017年頃から職種としてのカスタマーサクセスが注目されはじめ、Gainsightと同じ「ヘルススコア」設計の領域でHiCustomerが先行してローンチされ、その後様々なベンダーが市場に参入し始めています。 

製品比較表では、これらのカスタマーサクセス製品のベンダーの出自や、現在実装している機能、主な対象と思われるユーザーや、今後の展望についてまとめました。

下記からは製品比較表の内容にのっとり、それぞれの製品の解説をします。
※お手元にダウンロードした製品比較表を用意しながら見てみてください。

カスタマーサクセス製品①HiCustomer 

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【1.基本情報:HiCustomer 】

HiCustomerは国内で一番はじめにローンチされたカスタマーサクセス製品で、 主にヘルススコア管理のツールです。
JavaScriptタグを自社SaaSの管理画面内に挿入し、各機能の利用頻度やステータス変更をトラッキング。
どの機能をどのくらい利用したらスコアが向上、といったスコアリングのルールを設計し、スコアの状態をチェックすることで、既存顧客の状態を見える化します。

現在は月10万円程度の価格帯で提供しており、SaaSベンダーの中では中規模の企業様が主に利用しています。

HiCustomer代表の鈴木さんはBtoBスタートアップの投資に強い、アーキタイプ出身者であり、VC業界の繋がりが深く、下記のレポートのようなVCと連携したコンテンツを時おり発信されています。

HiCustomerの投資家は、鈴木さんがいらっしゃったアーキタイプ、Coral Capital、BEENEXT(前田ヒロ氏)といったSaaSの投資実績が豊富な方々に資本参加頂いており、他の投資先と同様に今後の成長が期待されています。

【2.製品機能:HiCustomer 】

HiCustomerの基本機能は、ヘルススコアを設計したうえで、顧客のステージ管理を行う、というものです。
これに加えて、todoタスクの自動生成(カスタマーサクセスがどの顧客に何をやるべきかの通知)や、その情報のSlack連携を図ることで、ハイタッチのカスタマーサクセスの生産性向上につなげています。
またSalesforce含め、国内でカスタマーサクセス部門で用いられてるIT製品とは積極的にデータ連携を行い、ヘルススコアをリッチに作り込めるようになっています。製品連携に関しては先行ベンダーなだけあって国内ではNO,1と言えるツールでしょう。

■HiCustomerの機能一覧

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【3.おすすめユーザー / 今後の方向性:HiCustomer 】

おすすめ出来るユーザーは、ある程度いろいろなIT製品をカスタマーサクセスの現場で導入しており、それらをつなげてヘルススコアの可視化を行いたい企業様です。
連携実績はNO,1ですし、カスタマーサクセス分野ではドメインエキスパートである高橋歩さんも在籍されているので、生産性を高めるためのカスタマーサクセス組織の作り方も、ツールを介して案内頂けるはずです。

今後の展望としても、より多くのツールと連携をしながら滑らかなUIでデータを活用するような製品となっていくでしょう。

カスタマーサクセス製品②pottos

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【1.基本情報:pottos】

pottosはHiCustomerの後発として登場したヘルススコア管理ツールで、HiCustomerとは真正面から競合となる製品です。
月5万円~と低コストの価格帯を打ち出した点は魅力的で、私の回りでも稟議の通しやすさの観点でpottosの導入を決めた企業が増えています。

pottosの運営するODKソリューションズは東証2部に上場しており、ISMSも取得している企業様なので、スタートアップSaaSだけではなく、大手企業も安心して導入しやすい安心感があります。(国内の超大手企業を複数顧客に抱えるTalentA様の導入事例もあり、ITセキュリティの面でも社内に説明が付きやすいと思います。)

【2.製品機能:pottos】

pottosの製品機能は、HiCustomer含むヘルススコアツールをベンチマークした、利用状況のモニタリング機能、マイルストーン管理機能、タスク生成機能などがメインです。
HiCustomerと差別化した点は、メール配信やポップアップなど軽度のテックタッチの機能も実装し、ハイタッチに加えテックタッチ分野もカバーした機能群にしたことです。

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pottosの機能説明より。1と2はハイタッチの業務効率化を促進するものですが、3のテックタッチの機能を実装することで、カスタマーサクセスの業務を広くカバーしようとする製品であることが伺えます。

【3.おすすめユーザー / 今後の方向性:pottos 】

おすすめできるユーザーは、価格帯の観点からは小規模のSaaSベンダーでも導入しやすいと思いますし、大手の企業でもISMSの取得やTalentAの導入実績から社内稟議を進めやすいです。
会社としてはSEOやイベントなどにもしっかり予算をとって実施している様子を伺うことができ、今後の露出も増えていくと予想されます。
製品の方向性としては、引き続き低価格で価格優位性を保ちながら、カスタマーサクセスの広い業務の機能を実装していくことで、コストパーフォーマンスの良い素敵な製品になっていくものだと思います。


カスタマーサクセス製品③coorum

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【1.基本情報:coorum】

coorumはファインドスターグループ(スタークス)でCS製品(CScloud)のビジネス開発を行っていた今田孝哉さんが独立して作ったサービスです。

私もファインドスターと以前にアライアンスパートナーを組み、一緒にお仕事をしていたことがあるのですが、EC企業への提案にとにかく強く、ROIにコミットする勢いのある営業スタイルでした。

coorumの既存投資家を見ても、KSK Angel Fund(本田圭佑さん)やEast Venturesなど、若くて勢いのある経営者に投資するVCが中心です。ベンチャー企業らしい急成長が期待されている製品に違いないでしょう。
「遊びのような熱狂を世界中に」といった企業ビジョン、Asobica(遊び化)からも若々しさと高い成長意欲を感じられます。

【2.製品機能:coorum】

coorumの機能ですが、もともとAsobicaは最初にローンチした製品は「fever」というSMB向けのコミュニティツール(現在クローズ)で、こちらの製品がピボットして出来たのが「coorum」です。
coorumは、法人向けコミュニティサイトの制作がメイン機能となっており、ユーザー同士で質問や回答を行うことが出来る既存顧客向けのWEBサイトを作ることが出来ます。
「Facebookのコミュニティページ」や「ヤフー知恵袋」のような機能に親しく、カスタマーサクセスとしての用途では、製品利用にあたっての質問や、改善要望をユーザーに投稿してもうといった使われ方をしています。

また、自社SaaSとAPI連携を行うことで、法人顧客ごとのコミュニティ内の行動分析が可能となり、NPSを配信することで既存顧客の状況も把握することが出来ます。
費用は月10万円~90万円でSMBから大手企業まで導入している点が特徴です。

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【3.おすすめユーザー / 今後の方向性:coorum】

ファインドスター出身者は手厚い連絡によるサポートが特徴ですので、コミュニティ構築初心者などサポートを受けながらコミュニティの立ち上げを行いたいユーザーにおすすめです。効果を示しにくいコミュニティのROIについても支援頂けるでしょう。

また、代表の今田さんがいらっしゃったファインドスター(スタークス)はECに強く、実はECは定期購入の仕組みなど、旧来から既存顧客向けのCRMに明るい業界です。今後は、EC業界の先端事例を参考にした新しい方向性での顧客関係構築の機能が構築されるのではと期待しています。


カスタマーサクセス製品④commmune

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【1.基本情報:commmune】

commmuneは大学のサークルの同級生同士で立ち上げた会社で、経営陣はBCGとGoogle出身者の2人です。
もともとはD2Cのサプリメント事業からスタートした会社ですが、そこからピボットしてコミュニティの事業に変化しました。※そのため、BtoCの顧客とも現在は取引しています。
直近で多額の資金調達実施後は「顧客ポータル」とタグラインを変更し、コミュニティから拡張した機能群へのリニューアルを図ることを代表ご自身のブログにて発表しました。

commmuneの投資家はUB Ventures(ユーザーベース)とDNX Venturesで、経営陣と同じくまさにエリートな印象があります。
料金は月額25万円~でエンタープライズ顧客との取引が中心となっています。

【2.製品機能:commmune】

commmuneの機能は、コミュニティサイトの構築です。
サイトデザインも色合いやフォント設定など細かい設定ができ、エンタープライズ顧客に対するサイトカスタマイズも柔軟に行えます。
また、アンケートやポイントなどを設計して、コミュニティ内のユーザーをアクティブ化するような機能も実装されています。

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また、現在のコミュニティ中心の機能から、今後は「顧客ポータル」として機能拡張をしていく旨を発表しています。コミュニティ以外の多様な顧客接点を統合する総合サイトへ製品リニューアルをしていく意欲です。

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【3.おすすめユーザー / 今後の方向性:commmune】

代表の高田さんがBCG出身で、現在のカスタマーサクセス関連ツールの中では最もエンタープライズの導入実績があるので、大手企業でコミュニティや既存顧客施策を練る企業様にはおすすめです。
今後の方向性は上記の通り「顧客ポータル」として既存契約顧客に対する様々な連絡の窓口になっていくよう、新たな機能実装がされていくことでしょう。

おわりに

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