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マーケターの新しい仕事 「カスタマーマーケティング」とは

こちらの記事は、cmkt Advent Calendar 2020の4日目の記事です。

私は、ベンダーとしてデジタルマーケティング製品提案、メディアとして広告商品開発、人材系の事業会社としてマーケターの経験を経て「カスタマーサクセス」に携わり、ロータッチ・テックタッチを専門とするチームの立ち上げを行いました。

広告マーケティングの世界から一歩飛び出し、カスタマーサクセスに入門したから見えた世界があります。
どうやらこれは「カスタマーマーケティング」とも呼ばれているようです。

本記事では、マーケターの新しいキャリア、新しい仕事として「カスタマーマーケティング」を紹介し、マーケターによるカスタマーサクセス、カスタマーサクセスを軸にしたマーケティングといった考え方を啓蒙する内容にしたいです。

カスタマーマーケティングとは何か?

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「カスタマーマーケティング」とは何か。
実務者としての私の考えとしては、マーケター(マーケティング職種経験者)の能力や手法よってカスタマーサクセスを実現すること。
そして、カスタマーサクセスを軸とした顧客起点のマーケティングを行うことの、2つの観点で捉えています。

SaaSの登場により、単に販売をするだけではなく、製品導入後の顧客の成功までの企業がサポートしていく「カスタマーサクセス」という考えが生まれました。これにより、マーケターは販売することを第一にするのではなく、より広い範囲での仕事が必要となるのです。

カスタマーマーケティングその1:マーケターがカスタマーサクセスを行う

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まず、マーケターが「カスタマーサクセス」を行うという話をします。
マーケターの役割には様々なものがありますが、多くの会社は販売による売上を最終目標として、そこから逆算してマーケティングの施策を練っていたはずです。

しかし、SaaSにおいては初回契約での売上は小さく、複数年契約を想定した売上(≒LTV)で利益を出していかなければなりません。

そのうえでは、マーケターは単に販売のみにリソースを使うのではなく、販売・導入後の顧客体験の領域まで踏み込んでリソースを使う必要があります。

例えば・・・

・製品の新機能やイベントについてはMAを活用した定期的なメールマガジンやDMの郵送で案内する。
・既存顧客の成功した事例をイベントとして既存顧客向けに行い、ホワイトペーパーやブログとしてコンテンツを制作する。
・既存顧客向けの管理画面にチャットボットを設計し、しかるべきタイミングでヘルプサイトに誘導する。

といった取り組みです。これらは、プロダクトマネージャー、WEBディレクター、カスタマーサクセスといった職種の業務範囲内なのかもしれませんが、用いるツールは新規顧客獲得で用いていたデジタルマーケティングツールを活用するシーンが多いです。

デジタルマーケティングツールの使用に長けたマーケターは、上記の職種の方々と協力し、時には単独で、顧客体験の向上のためにコミュニケーションの仕組みの構築が求められるでしょう。

マーケターは「ミドルタッチ・テックタッチ」の担い手になる

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カスタマーサクセスベンダー大手のGainsightは、顧客規模に合わせて契約後のタッチポイントを考えるモデルを提唱しています。

この図のうち、ミドルマーケットやSMB(中小企業)に対して製品体験に関するコミュニケーションを担う「ミドルタッチ」「テックタッチ」の担い手にマーケターがなっていくケースが今後増えていくでしょう。

会社内の配置でマーケティング経験者がカスタマーサクセス部門に異動する、カスタマーサクセスの「ミドルタッチ」「テックタッチ」の運用を行ううえでマーケティング経験者を採用する、といった動きも見られるはずです。

カスタマーマーケティングその2:カスタマーサクセスを起点にマーケティングを行う

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次に、カスタマーサクセスを起点としてマーケティングを行う、という話をします。
製品の販売ではなく「成功」にコミットしていくビジネスに変換されるということは、”売れる”をもとにマーケティングを組み立てるのではなく、”成功する”をもとにマーケティングをしていくよう、マーケターの役割も変化していきます。

上記の図にあるような、

・成功している顧客の声を顧客事例として活用し、マーケティングメッセージを構築する
・成功した顧客にイベントで登壇して頂き、顧客発信のコンテンツを増やす
・成功している顧客に顧客紹介やレビューなどを依頼する

といった、顧客をベースとするマーケティング施策はより重要になってきます。

ベンダーのマーケティングは信用されていない

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「顧客を軸にしたマーケティングが重要になる」といった考え方にはエビデンスがあります。
上記はtrustradius社によるBtoBテクノロジーベンダーの購買に関する調査データです。

オレンジの色を見てください。ユーザーのレビュー、ベンダーの評判、リファラル(顧客紹介)といった顧客を起点とする経路での購買が比較的多く行われているのがわかります。

恐ろしいのは、右側のブルーの色の部分です。ベンダーのマーケティング、ベンダーが作ったケーススタディ、ベンダーが作った顧客の声、ベンダーのコンサルタント、ベンダーのブログ…こういったベンダーによってコントロールされたマーケティング施策の多くは、信用されていないのです。

このことから、顧客に最高の体験と成功をしてもらい、顧客に自ら語ってもらう(ベンダーが過度に操作をしていない)カスタマーマーケティングをしていくことが本当に重要であると言えます。

ミレニアル世代は”もっと”ベンダーのマーケティングを信用していない

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そして、こちらは先ほどのtrustradius社のデータの続きです。
青はミレニアル世代(日本だと20代前半から30代後半くらいの年齢の人々)、赤がオールド世代(40代以上)で分けられています。

これを見ると、ミレニアル世代ほど「ユーザーレビュー」や「自身によるデモ利用・フリートライアル」での購買を行っていることがわかります。
「ベンダーのWEBサイト」「ベンダーの主張」をミレニアル世代はオールド世代ほど重視していません。

当然ながら、今後のビジネスはミレニアル世代を顧客とすることが増えていくことでしょう。SaaSビジネスにおいては、営業側も顧客側も20代~30代であるケースは既に肌感覚として多くあるでしょう。

このような時代背景から、ベンダーによるマーケティングではなく、顧客によるマーケティングを真剣に考えなければならないのがお分かり頂けるはずです。


顧客に力がある時代のマーケティングとは?

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最後に、私が感銘を受けたGainsightのスライドを共有します。
クラウド、サブスクリプションといったビジネスモデルの普及から、顧客の選択権は強まってます。またソーシャルメディアによって顧客が発信する力も強くなっています。
この環境下においては、あらゆるビジネスの構造が破壊されるのです。
これは無論マーケティングのやり方も破壊されます。

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「カスタマーマーケティング」とは、SaaSやサブスクリプションの時代到来に応じて生まれたマーケターとしての新しい職種、仕事内容ではないかと私は思います。
私自身、マーケティングからカスタマーサクセスの世界に飛び込むことで、「従来マーケティングの仕事とされてきたもの」に埋没してはいけないと心から感じました。
マーケターが本記事を読んで、働き方やキャリアの考え方が変わる一つのキッカケになると、とても嬉しいです。マーケター出身者はぜひカスタマーマーケティングにチャレンジしていきましょう。

おわりに

お読みいただきありがとうございました。
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藤島 誓也:Twitterアカウント
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