6月の集中日

今年も上場企業の株主総会集中日が近づいてきましたね。というあいさつも最早古くさくなってしまった。今年も上場企業の定期株主総会の集中率は3割を切るそうだ。
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東京証券取引所によると、今年の上場企業の定期株主総会の集中日は6月27日。集中率は29・7%で、昨年の26・1%よりは微増するものの、1983年の統計開始以来の低水準が続く見込みだ。1990年代半ばには95%を超える企業が集中日に示し合わせていたように株主総会を開いていた時代からすると、隔世の感がある。
なぜ、6月に株主総会が多いかと言えば、日本企業は年度末の3月決算が多いから。株主総会は原則、決算から3カ月以内というルールがある。だから6月開催それも、紛糾して日程がずれ込むことも考慮して、平日最終日の前日が集中日になるのだ。
企業に利益供与を求める反社会的勢力の総会屋が全盛だった時代には、企業側も集中日に株主総会を開くメリットがあった。総会屋が出席してやいのやいのと紛糾しないためにも、「みんなで同じ日に開催してシャンシャンと締めましょう」という力学が働いていたのだ。
しかし、1990年代後半に金融機関から総会屋への大規模な利益供与が発覚し、東京地検特捜部が事件化。2度の旧商法改正を経て、総会屋は利益供与を求めただけで、罰せられるようになり、急速に勢力を削がれていった。警察庁の統計によると、2021年末の総会屋の人数は約180人。1983年には約1700人がいたとされ、40年間で10分の1に減ったという。
では、企業側にとって株主総会の重要度が下がったかと言えば、それは逆だ。「物言う株主」が増え、コンプライアンスの徹底が求められる近年は、株主総会での株主との対話が重視される。今年の株主総会でも、不祥事のために四苦八苦しそうな企業は枚挙にいとまがない。実際、某大手インターネット企業は、情報漏えいを追求され、集中日前に開いた株主総会が2時間にわたり大炎上したそうだ。
そういった企業の経営陣からすれば、裏で総会屋に利益供与をしておいて、株主総会が「シャンシャン」と終わった時代を懐かしく思い出すこともあるかもしれない。企業側の甘えや、経営陣の心の隙はさらなる不祥事を生む。
6月に向けて膿を出し切ることが、健全な経営には欠かせない。それは今も昔も変わらないだろう。

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