検事正逮捕で見せたメディアの底力
発行部数減少で全国紙・地方紙問わずに経営難がささやかれて久しい新聞業界。そんな中、久しぶりに新聞の底力を感じさせるスクープだった。
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大坂高検が、大阪地検トップの検事正を務めた弁護士のK容疑者を、女性に性的暴行を加えたとして準強制わいせつ容疑で逮捕したのは6月25日のことだった。K容疑者は「関西検察のエース」として知られ、大阪高検次席検事や最高検刑事部長などを歴任。当然、逮捕の一報に在阪のメディアは大騒ぎになった。
一方、探偵旧知の在阪記者によると、事件を巡る大阪高検の対応は不可解極まりなかったのだという。本来であれば、各社を集めて逮捕会見を開いても妥当な事案だが、A4用紙1枚を各社に配布。ナンバー2の次席検事が各社個別に報道対応しただけだった。さらにいつどこで、誰に対して性暴力加えたかという容疑内容については、被害者のプライバシーを理由に一切非公表にした。当然、各社からは検察内部の「身内びいき」で事件の幕引きを図っているのではないかと、疑念が噴出したという。
準強制わいせつ罪とは、酒や薬などで抵抗できない状態で、相手に性的暴行を加えた場合に適用され、いわばデートレイプのような事案に適用されるケースが多い。2023年6月の刑法改正で不同意性交罪に統合されている。そのことから類推すれば、逮捕容疑となった事件は23年6月より前にさかのぼり、K容疑者が何らかの方法で被害者を抵抗できない状態にしたことはうかがえる。当初、各社の報道もそういった「見立て」にそった薄い内容だった。
そんな中、事件に迫るスクープを放ったのが朝日新聞だった。ウェブ記事と26日朝刊で、事件はK容疑者が検事正に在任中の2018年2月~19年11月に、酒に酔った当時の部下に性的暴行を加えていた疑いをスクープ。しかも、事件が起こったのは検事正の官舎だったと報じたのだ。
当然、新聞、テレビを問わず各社がこの報道を後追い。それらの報道によれば、K容疑者は定年を前にした2019年11月に「早すぎる」退官をしており、事件隠蔽のために検察内部で隠蔽を図ったのではないかという見方さえ出ている。
かつて大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を暴いたのも奇しくも朝日新聞だったが、報道の最大の役割は権力の監視だということを久々に思い出させてくれる記事だった。
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