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オープンプラットホーム通信 第191号(2023.1.20)

オープンプラットホーム通信とは、福岡を拠点に活動していうNPO法人ウェルビーイングが毎月発行しているメールマガジンです。noteではバックナンバーを公開していきます。
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メールマガジンのコンセプト


オープンプラットホームとは、人、団体、組織が自由に集まり、交流し、知恵や勇気、パワーを充電し、また、旅立っていくことができる「みんなが集える場」のことです。

初めての方へ
はじめまして。
NPO法人ウェルビーイングは、人々のwell-beingの実現するために自ら活動することを目指し、全国各地で活動している人たちを結び、集まり、分かち合い、元気になるオープンプラットホームの実現を目指しています。
well-beingとは、「良好な状態、安寧、幸福」という意味です。このメルマガでは、ウェルビーイングに集う理事や会員のそれぞれのウェルビーイングな日々やアンウェルビーイングな日々を綴ったエッセーをお届けします。

喫茶去 
第90回 よいということ(9)


さてもうひとりの石田梅岩[ばいがん1685-1744]です。かれは誰しもが聖人になれる説をとりました。梅岩と云うと、庶民的な社会教育(石門心学)の普及者であり、商業というなりわいのもつ倫理性の高さ(商人道徳)を説いた実践的な教育者のイメージがつよいのですが、その『都鄙問答(とひもんどう)』1739をみると、短い問答のなかにかれの生きた人生の課題がおもいきり詰めこまれている一級の思想書であることがわかります。とくに儒学者と思われる学者との対話には、いわゆる学問に対する鋭角的なするどい批判の目とそれに即して生きる梅岩の姿勢が目にうかぶようで、こちらも姿勢を正して座りなおしたくなる気迫にみちています。うーん、これがそのまま私塾で語られたとして、京の無名の聴衆たちはよほど水準が高くないとついてゆけなかったのではないか。むしろ教化の工夫によって聞き手にうまく伝わり始めたのは、弟子の手島堵庵[とあん1718-86]の代からではないかと想像されますが、それはそれ。梅岩については1729年の開塾にあたって、職と性別を問わず、紹介不問、無料で聴講可とした破格を記憶すべきでしょう。

注目したいことが二つありました。ひとつめは孔子の「一貫」です。ふたつめ「性善」とその先の話です。とここまで書いて、三年前の「何が一貫しているのか(論語「里仁篇」)」(第52回)と「性は善であるか(孟子「告子章句(上)」)(第53回)をよみなおしてみたのがイケマセン。書きたいといま思うことが全部書いてある。うーん。すこしは成長しているかとおもったのだけれど。まあいいか。話をかえますね。つまるところ向かう先は同じでも、角度をかえてみます。

応病与薬と云います。人をみて法を説けとも、対機説法とも。総じて「方便」(巧みな方法)という仏教語でくくれるでしょう。聞き手に応じてものごとを説く仕方が異なることの云いまわしです。これらの(正しい)コトバが生きてくるのは、ところで口頭の場面でした。相手を見てそのうえでコトバをなげかけるわけだから。問題はこれが文字になると、読み手が一律にイメージされるしかない点です。受け手の資質や能力や現在の境涯(水準)のいかんにかかわらず同じコトバで表現されてしまうということ。すべての古典がこの状態で残されていますし、いちばん「方便」が必要なはずの宗教書の聖典も同じ状況です。奥に秘められて公開禁止の教義書の理由も、たんなる演出や、たんなる独占のためではなく、この「方便」がきかない非対話的状況(孤独な読書というかたちの学習)をまぬがれる方策と考えた方が生産的です。つまり問題が深くなります。

子曰く、参(しん)[曾子]よ、吾が道は一(いつ)以(もっ)てこれを貫く。曾子(そうじ)曰く、唯(い)。子出ず。門人問いて曰く、何の謂(いい)ぞや。曾子曰く、夫子(ふうし)の道は忠恕のみ。

先生が曾子をよんでいわれた。「参よ。自分の道は一本を通してきたのだぞ」。曾子がこたえた。「わかりました」。先生が座を立たれたあとで、門人がたずねた。「大先生のおっしゃったのはどういう意味ですか」。曾先生がいわれた。先生の道は忠恕、つまりまごころと思いやりとにほかならないのだ」。(貝塚茂樹訳)

このくだりから梅岩の対話相手の儒者は、忠恕という一語を孔子の思想のエッセンスと受けとります。しかし梅岩はそれを認めません。孔子は相手によって説き方をかえてさまざまな発言をしてきたのだから、忠恕という一語は曾子という弟子のひとりにとっての正解でしかありません。そのコトバのうしろのほうにある孔子の生き方にこそ「一貫」したものがあり、その手前のコトバの断片を「真に受ける」儒者の態度はまちがっていると云うのです。
悪しき意味での訓詁註釈の態度ですね。そうでない読み方、もはや語り手がいなくなった後代の学習者は、ならば、どうすればよいのでしょうか。「伝え聞き学んで知るは真の知にあらず」という『徒然草』の一節を梅岩は引いています。ん。体験と照らせということか。いちどわが身を通過させて了解せよということか。

☆☆筆者のプロフィール☆☆
関 一敏
勤務先:NPO法人ウェルビーイング・ラボ

感じ考え組み立てる 第65回 意識の下にあるもの


前回、突然に入院し、手術を受けたことについて書きました。今回はその続きです。入院して手術を受ける中で、異なる意識の状態を体験しました。全身麻酔の間は意識が無くなりました。術後の痛みの中では、痛みの世界に閉じ込められたと感じました。痛みから回復する過程では、もう一度自分の身体や心を取り戻した、と感じました。

そして、普段は気づかない、自分の意識下にある様々な感じ方・考え方に出会うことができました。意識下にあるもの・無意識といえば、フロイトやユングによる精神分析的な探求がよく知られています。また無意識の世界は、夢の中に現れてることが、知られています。

意識下の世界に一歩近づく方法としては、この連載ですでに何回も取り上げている気泡緩衝材プチプチがあります。講義室で学生にプチプチを配布し、学生がそれを潰し始めたときを見計らって、「なぜ潰すの?潰したいと思う気持ちはどこから出て来るの?」と問いかけると、学生はやや驚いたような、困惑したような様子で、潰したいという気持ち・意識のさらに元にあるものが何かを考え始め、様々なユニークなことを答えてくれます。

このような、プチプチについての経験を既にしていたせいもあると思いますが、私は、今回の手術を経験する中で、「夢を見ること」や「プチプチに触れること」だけでなく、日常生活の様々な場面に、実はこの無意識への入り口があるのではないか、と考え始めました。その具体例が皮下気腫です。

さて、意識下の世界は興味深いものですが、それを探検するためには、準備も必要なことを改めて感じました。なぜ通常の意識の対象ではなく、意識の下にあるかについては、理由があるはずです。不用意に意識下に入り込むと、場合によっては、大変なことにあるかもしれません。

今回の入院を通して、意識下にある意識、「心」に向かうには、何らかの導き手が必要だと感じました。また意識だけでなく、無意識も、それを大切にし、育て続ける必要があることも感じました。私の場合は、手術後に自分を取り戻す過程の中で、小学生の頃に読んだ宮沢賢治による『銀河鉄道の夜』を思い出しました。退院後、改めてこの小説(童話)を読んでみて、子供の頃には見過ごしていた様々な魅力や深さが、この童話に埋め込まれていることに改めて気づかされました。皮下気腫とプチプチがどのようにつながったのか、『銀河鉄道の夜』のどの部分がどのように魅力的だったのかは、このたび発刊したWell-being-Labのジャーナル『感性と対話』に書きましたので、ご覧ください。

https://narrativesenses.wordpress.com/

☆☆筆者のプロフィール☆☆
守山正樹
勤務先:NPO法人ウェルビーイング・ラボ


ドクター・マコ At Home! (アット・ホーム) 第140回 「うざい」「やばい」って、分かりますか?そして使えますか?


これらの言葉は、明鏡国語辞典(大修館書店)には、載っているそうです。しかも、各項目の最後の「品格」という名の注釈欄に。これらは、2020年末に改訂された際、載ったらしい。

皆さんの中には、これらの言葉を極端に毛嫌いする方もいるかも知れませんね。

辞書は新語や俗語の採録に慎重なのか、と思いきや、割と多数の採録があるようです。

ちなみに<どや顔>=いかにも誇らしげな顔つき。得意顔。
『成功に~をする』という用例。

「どや」は「どうだ」の意の関西方言だとのこと。

特に年配の皆さん、知ってましたか?
これらはつまり、「品格ある類語」なんだそうで「改まった場面でも使える類語」を一緒に示しているそうな。品格欄の付いている言葉を探すと、ほかに「うざい」=うっとうしい・疎ましい 「いらつく」=業を煮やす・焦れる 「やばい」=危ない・危うい・剣呑・秀逸・非凡・よからぬ、などとあります。

出版元の担当によると、品格欄は今回改訂の3版で新しく設けられました。『高校の国語教員だった執筆者の提案がきっかけです。ふだん使いの語と、そうでない語があるという話から、表現力を伸ばせるように、と品格欄につながりました。

辞書の面白さを発信している「辞書ソムリエ」の見坊行徳さんは「高校生が日常的に使う言葉にいったん歩み寄り、その項目を入り口にして大人の言葉へ誘導していますね」と分析。

「やばい、でなんでも済ます若者に、きちんとした発信に使える言葉も知ってもらおうという取り組みとして評価できます」

しかし、川上も含めて、普通の会話でこれらの語を使われても、なかなか付いていけませんよね。年末の紅白で、最近の歌手が歌う歌詞も理解できないのに・・・・。だからでしょうが、報道では、今回(2022年年末)の紅白の視聴率は過去2番目に悪かったとのことです。やっぱ、全世代に通じる言葉は、現在は無理なのでしょう。

しかし、いずれは取って代わられるわけで、新語に眉をひそめるのではなく、豊かな日本語の世界に導く水先案内役を、辞書編集の創意が込められた注釈に、注目しようかな。

☆☆筆者のプロフィール☆☆
川上 誠
勤務先:川上歯科医院

編集者後記


明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

昨年収穫した落花生は、収穫後、天日干しをしていました。お正月にいよいよ食べようということになり、インターネットで調べてみました。茹で落花生の作り方がたくさん出てきますが、家族全員、パリパリの落花生が好きなので、煎ってみることにしました。

洗って泥を落とした落花生をフライパンで弱火でときどきかき混ぜながら、じっくり40-60分煎ると書いてあるので、コンロのタイマーを40分にセット。途中、何度かかき混ぜながら、40分経ったので、そろそろいいかな?と食べてもまだ湿気ている。熱効率を良くするためにアルミホイルをかけたりしながら、カリカリになるまで、結局90分近くかかりました。

煎りたての落花生は本当に美味しい!しかし、手間がかかりすぎる。ということで、その後何度か試行錯誤。その結果、アルミホイルをかけて40分くらい煎って、余熱で置いておき、冷めてから食べるのが美味しくできるようです。煎る時間などを変えながら、極めていきたいと思います。

<バックナンバー> noteで公開中
https://note.com/open_platform/

(いわい こずえ)
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編集:NPO法人ウェルビーイングいわい こずえ jimukyoku@well-being.or.jp
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