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【速報】脚折雨乞(すねおりあまごい)

2024年の脚折雨乞は8月4日(日)に行われた。

4年に一度の行事であり、2020年はコロナ禍により中止となったため、8年ぶりの開催となる。

ここでは行事のハイライトとなる「龍神昇天」の模様を速報でお伝えする。

■脚折雨乞とは何か■

埼玉県鶴ヶ島市脚折(すねおり)地区に伝わる雨乞いの行事で、竹と麦わらで作られた全長36m、重さ約3tにもおよぶ龍神が300名の男衆によって担がれ、地区を練り歩く。

その後、雷電池児童公園にある雷電(かんだがちが)池に入水し、担ぎ手によって解体される。

この「龍神昇天」をもって、雨乞い行事は終了となる。

■渡御コースについて■

移動距離は約2km
途中休憩を挟みながら渡御する

行事の前日までに白髭神社内で作られた龍蛇は、同社での修祓式の後に出発する。

製作中の龍蛇
白髭神社・拝殿。旧社格は村社
祭神は猿田彦命、武内宿禰命

その後、善能寺での修祓を経て、雷電池児童公園に到着。

善能寺・本堂
真言宗智山派。山号は安養山

同公園内の雷電社(群馬県・板倉雷電神社より勧請)での修祓により御霊を入れ、龍蛇は龍神へと変わる。

板倉雷電神社(群馬)より勧請
龍神入魂の儀に際して献水される御神水は板倉雷電神社のものが使われている

そして、雷電池へと入るのである。

本来ならば渡御の模様からお伝えしたいところだが、今回はきびしいと判断し、雷電池での定点観測に変更した。

池の周囲は龍神の渡御ルートおよび安全性に問題のある場所が立入禁止となる。

観覧場所は自ずと制限され、少ないエリアに観客や撮影者が群がる。

撮影場所を確保するためにも、早めに待機するよりないというわけだ。

待機時間に、地元の小学生によるミニ龍蛇の雨乞いが行われた
龍神太鼓の響きに合わせ、三匹の龍蛇が池を回る
龍神およびミニ龍蛇がまつる神は、産土大神&雷電大神、天水分神&国水分神、高龗神&闇龗神、級長津彦神&級長津姫神、天久比奢母智神&国久比奢母智神の十神

■龍神昇天■

15:00を過ぎて、雷電社前に龍蛇が到着した。

巨大な龍蛇もこの混雑では上半分しか見えなかった

先ほど登場したミニ龍蛇は6分の1サイズに作られているという。

本物はやはり大きい。重量約3tはダテではない。

龍神入水の瞬間
龍というよりも山が動いているようだった
全長36m
尻尾の先はいまだ見えず
これだけ大きいと方向転換も思うようにいかない
小刻みに前進後退を重ねながら進路を定める
なんとかターン
またこっちに来るぞ!
そして、最後の咆哮
男衆がいっせいに龍神に飛び乗った
宝珠に見立てた部品を奪い合い、麦わらをむしって池に投げ入れる
龍神はみるみるうちに解体されてゆく
そして後には残骸だけが残った

なぜ、せっかく作った龍神を池で解体してしまうのか。

雷電池にはヌシ(大蛇)がいる。

人の造りし龍神を池に入れ、ぐるぐる回って泥をかき分け、藁をほどいて投げ入れる。

宝珠に見立てた部品を担ぎ手が奪い合い大暴れすることで、静かな池はドロドロに汚されてしまう。

これに怒った大蛇が、天に働きかけて、雨を降らせる。

解体された龍神の魂も天に昇り、雨を降らせるというわけだ。

脚折雨乞はいわば、(人造龍神を作った)人間による自然(雨、風、雷などの自然現象を龍や大蛇になぞらえる)への挑発行為であり、祈って雨を降らせるのではなく、壊して怒らせて降らせるというところがなんともユニークで興味深い。

前回の速報でお伝えした龍ヶ崎の撞舞において、龍に見立てた撞柱を登る舞男(アマガエルに扮している)の動きが表現しているものが、「カエル二匹が龍を怒らせて雨を降らせる」ものだと読み解いた。

舞台装置の違いこそあれども、これら二つの事例は、龍蛇に挑むことで勝ち取る祈りもあるのだということを教えてくれている。

[2024年8月4日]

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