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山にもらったこと「完全な片想い。だから、この好きは終わらない!」 〜穂高縦走編〜

つくづく思う。私は山に向いていない。
高いところが怖い、岩場や鎖場が怖い、運動神経が鈍い。
山では不眠になる(小屋でもテントでも)、トイレが近い、お腹を下しやすい、方向音痴(自信を持って間違った方向へ)。いろいろ致命的すぎる。なのに、こんなに山が好き。好きになるのに理由なんてない、無理があるほど萌えるんだ、相手がヒトであれモノであれ、コトであれ・・!

とはいえ高山に岩場はつきもの、なんとか怖さを克服したくて、クライミング講習なんかに参加するものの、毎回お話にならなくて。・・どうしたものか。そんな折、尊敬する国際山岳ガイド近藤謙司さんが、「穂高を縦走するけど参加しない?」と声をかけてくださった。2021年9月のこと。
近藤謙司さんといえば、数々の登山記録はもちろん、「一般登山者でもエベレストに」を日本で初めて実現し多くの人をエベレスト登頂に導いている、山岳業界のレジェンド。人の“登る力”を引き出す天才ガイド。そんな方からお声がけいただいて断る理由がどこに??なのだけれど、、

上高地・岳沢から入って、前穂高岳〜奥穂高岳〜涸沢岳〜北穂高〜涸沢に降りる、というコース。前穂と奥穂の間には吊り尾根がある、北穂に登頂するには奥壁バンドを越えなければならない、私に行けるの?無理でしょ!いや近藤さんがいてくれるのだから、いやいや逆に迷惑かけるよ?!けどこんなチャンスきっともうない!・・あーだこーだ一のひとり会議の結果、山への実らぬ想いをさらに深める旅が始まったのでした。

(梓川の向こう、朝日に輝く穂高の山並み。)

メンバーは、私を含む5名の参加者に対し、近藤さんに加えてもう一人国際山岳ガイドのオーストリア人の方と、スタッフで登山ガイドの方も。贅沢だわ。これで登れないわけがない、と図に乗りそうになっちゃう(苦笑)。

実は私、運動神経は鈍いけど体力はけっこうあるようで(笑)。上高地から岳沢小屋、紀美子平を経て前穂高岳までは、さほど苦なく登ることができ、

続く、吊り尾根を経由しての奥穂高岳へも、なんとか、楽しく、登頂。

一泊目の宿泊地・穂高岳山荘での乾杯に気持ちがはやります。

(しかしながら、穂高岳山荘に降りる崖がまた厳しい^^;)

山荘で乾杯を酌み交わしつつ、明日の核心部のことを話している時。近藤さんがふと「北穂に向かわずにザイテングラードから涸沢に降りてもいいんだよ。降りる人と行く人に分かれてもいいし」と・・我々の実は不安な胸中を感じ取られてしまったのか?!うん、そうですよねその方がいい、だって無理だわ怖いもの!と心で叫びながら、私の口をついて出たのは「でもケンケン(近藤さんの愛称)が行こうと言ってくれたから、ここまで来た」近藤さん、にっこり笑って「よし、全員で最後まで行こ!」結局、背中をしっかり押されてしまった。エスケープできるチャンスを自ら絶ったのだから、行くしかない、絶対行ける。

翌早朝、山荘を後にし、まずは涸沢岳へ。

「奥穂とジャンは、涸沢岳から見るのが一番綺麗だ」と、かつてあるガイドさんが言うのを聞いたけど、それをこの目で見て、感じられて幸せ。

そして、いよいよ。

白いペンキの箇所を上がればいいって・・。(苦汗)
立ちはだかる岩壁を、近藤さんは楽しげに悠然と上がっていく。

ロープを下ろしてくれ「はい、上がってきて!」って、どうやって?!?!
本当にどうやって上がったのか、全く覚えていない(恐汗)

ザイルで繋がれているけれど、もし自分が転んだりしたら前後の人に影響を及ぼすから、緊張感でピリピリ。


(みんな笑顔だけど、私はひきつってます)

絶対に転ばない、絶対に歩ききる、と呪文のように唱えながら、一歩一歩。

(遠く槍ヶ岳が、こっちを見てくれているよう)
(怖さにも慣れてくるらしい、と初体験)

やがて、やがてやがて・・!

北穂、登頂。
背後に見えているあの岩稜帯を越えてきたなんて。信じられない。
みんなとハイタッチしてても、記念写真撮ってても、実感がわかないっ。

頂上の北穂山荘で一息いれたら、ほどなくして涸沢に向けて下山開始。
あんな所をあんな思いをして上ってきたのに、もう降りちゃうのー?という気持ちと、早く落ち着ける所に降り立ちたい気持ちと(笑)。
もう始まっている北アルプスの秋を感じながら・・・

そして涸沢。ここまできたら一安心。やっと地に足がついた。
皆さん、お疲れ様でした。ありがとう、ケンケン!乾杯ー!!

(なつきすぎでしょ、私!笑)

「いつか剱岳に登りたいから、練習になった」と言った私に、「先にこっちに来ちゃったね、こっちの方が難しいよ」と、近藤さんはまた勇気をくれる。この日は涸沢小屋泊。明日は上高地に戻るんだな・・。

私にも岩は登れる、という淡い自信と、確かなガイドがいてくれたからこそで、登れるようになったわけじゃない、という強い自覚と。

こんなに苦手でいっぱいなのに、私は山が好き。
出来ないことばかりだけれど、登るたびに、こうやって自分の小さな可能性と次への希望をもらえる。
この片想い、きっと永遠です!

@2021/09/24-26  

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