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また、救われる

9日目(10月16日)

朝ごはんはココナッツサブレだった。なんなん?よく学校行こうと思ったな。偉いぞ。その後にチョコレートを食べたが、ココナッツサブレの方がおいしかった。だって6枚入りだもの。

授業中のこと。女子の1人が教科書を忘れて、隣の人ではなく後ろの人に見せてもらっていた。それを見た先生が「わざわざ後ろ向かなくても、隣の人に見せてもらえばいいだろう」と指摘したので、その女子は隣の人と机をくっつけた。その隣の人、どんな心境だったんだ?
本題。部活がいつもより早く終わったので、美容院に行って髪を切ってきた(みんな髪を切りに行くっていうけど、髪切るのは美容師さんで、僕達は切られる側だよな)。遅めの時間だったのであまり期待していなかったが、運良くいつも担当してくれる人に切ってもらえた。
その人はハンチング帽をいつも被っていて、髪の毛があるかどうかはよく分からない。無かったとしたら、中々の皮肉だなと思う。いやむしろ人の髪を「減らしている」という認識で髪を切る怖い人なのかもしれない。人を坊主にする時はめちゃくちゃ笑顔になるとか。その場合美容院に行って坊主にする奴なんていないので、床屋への転職をオススメしたいところだ。

しかしそんな想像とは裏腹に、彼は最高のサービスを提供するプロフェッショナルだ。僕の今の髪型にしてくれたのも彼で、感謝してもしきれない。信じてもらえないかもしれないが、彼に髪を切ってもらってから髪質が一気に変わった。明らかにキューティクルが増したのだ。こちらの稚拙な要望にも快く応えてくれる、まさに痒いところに手が届く、理想的なカットをしてくれる。「お痒いところはありませんか?」など彼の前では愚問だ。
彼の魅力はそれだけではない。むしろ一番の魅力をまだ書いてない。それはシャンプーだ!私はここに断言しよう、彼のシャンプーが人生で一番気持ち良いシャンプーだったと。初めてしてもらった時、本当の至福とはこれを言うのだと、幸福の本当の姿とはこれだったのだと、人生の“答え”に一歩近づいた。そんな気がした。

具体的に書くと、まず力加減が素晴らしい。強過ぎもせず弱過ぎもせず、丁度いいラインを確実についていく。それは豊富な経験に裏打ちされた余裕とも取れるだろう。
そして、これまた痒いところに手が行き届く。かと思いきや時々焦らしてくる時がある。彼のシャンプーは音楽だ。Aメロ、Bメロ、サビと確かな構成があり、その中に幾重にも積み重なるハーモニーがある。「お前は米津玄師か」と思わず言ってしまいそうになるが、彼の困った顔は見たくないのでそっと口をつぐむ。
極め付けに最後にお湯で温められてタオル。これに関しては美容師の腕がどうこうでは無い気もするのだが、最大限の敬意を表して顔全体を拭わせていただく。圧倒的感謝。謝謝。

昨日、音楽は人を救うという旨の文章を書いたが、まさにこのことだと思う。彼の指から奏でられる旋律は確かに私を救ったのだ。私は今日もまた救われる。そして明日を生きていく。
this is 救済。



#日記 #美容院

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