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Dr.Martens

27日目(11月3日)

めちゃくちゃ腹を下した。今日2回中2回。打率100%の下痢はなかなか凶悪で、私の体力はごっそり持ってかれた。エルリック兄弟も驚く持っていかれかただと思う。何と等価交換だったかは分からないが、原因はなんとなく分かる。出先でお母さんが買ったミックスジュースだ。たぶん、果物と野菜をそのまま混ぜただけのむしろ濃縮してるタイプのジュースで、あまりのそのまんまさ加減に私のお腹は少々驚いてしまったようだ。素材の個性を尊重した良いジュースだったが、助長された個性は時に凶器にもなるということを覚えておこう。日本の教育現場にもぜひ飲んで欲しい。
今日私はミックスジュースを母親と飲みに出かけた訳ではない。靴を買いに行ったのだ。沖縄に履いていったスニーカーは私の記憶が確かなら中学二年生から履いているものだ。3年と半年の歳月の中で、摩耗に摩耗を重ねた。今形を保っているのが奇跡に近い。ニューバランスは全て頑丈に作られているのか?それとも私が靴に対して優しすぎるのか?私が常に3ミリ浮いてる可能性も出てきたぞ。

そんなこんなで、もう流石に新しい靴を買っても良いだろうということになった。そんな時に私の耳に飛び込んで来たのは「ドクターマーチン買っちゃえよ」の声。

ド ク タ ー マ ー チ ン

見れば分かる高いやつやん。俺の中の宮川大輔が反応せずにいられなかった。お祭り男を身に宿した私には手に余る代物だと、さっさと身を引こうとしていた。いつも全身ユニクロの奴が履いていい靴なのか甚だ疑問だった。
しかし、調べてみるとなかなかどうして魅力的だ。全体の形も可愛いらしいし、黒の革に黄色いステッチが特にグッと来た。良いものはやはり良いのだと、再認識した私は店に行くことを決意する。話は現物を見てからだと。その縫い目を俺に見せてみろと。

視界の先に店が見えた。あまり大きな店舗ではなく、店員も一人しかいなかった。だが、そこに並ぶ靴たちは尋常では無いオーラを放っていた。冷や汗が私の首を伝う。友達について行って普段行かないちょっと良い服屋に入った時の、その何倍もの緊張感。押し潰されそうになった。実際私は店の入り口で一旦Uターンした。しかしここで入らなかったら一生この店の敷居を跨ぐ事は無いという確信があったので、震える足を踏み出し、入店する。
少しして、店員が声をかけてきた。化粧がバッチリ決まった、私には威圧にも感じられるような染められた長い髪を耳にかけている。会話を2往復くらい交わしたあと、試し履きをすることになった。棚に並んでた物の、26センチを持ってきてもらった。
左足を入れた瞬間に確信した。「買い」だ。私の甲高幅広の足をしっかりと捉えてくれたのは3ホールのドクターマーチン。自分がこの靴をどんどん好きになっていくのが分かった。胸が高鳴るその過程は、恋に似ていた。

家に帰って、箱から取り出す。めちゃくちゃ良い、良すぎる。愛しい。RADWIMPSか?履くだけで人間洗浄を完了させる、地上を一緒に歩ける唯一の神様。愛せる。愛。とにかく居ても立ってもいられなかったので、履いて家中を練り歩いた。新しさ故の硬さ、それによる痛みまで最高だった。今なら最高のダンスが踊れる気がした。いや、踊っていた。何を書いているかよく分からなくなってきたが、私は最高に気分が良い。それだけ分かれば、後は蛇足だ。

最後に、私とドクターマーチンの出会いを、どうもありがとう。私は感謝する。





#日記 #ドクターマーチン

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