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「親族は成年後見人に選ばれない」は本当か

親族後見人が選任される割合が年々減少しているのは、よく知られているとおりである。

親族後見人の割合

上記は各年の新規事件において親族が後見人に選任された割合である。2012年に半分を切り、以後も減少を続けている。

これについては様々な議論があるが、以前は「親族は立候補してもほとんど選任されない」なる説が提起されていた。

しかし、この説は当時の公表統計からしてもおかしいとの指摘があった。
親族候補者が選任されないというより、むしろ親族候補者がいないというのである。

これは統計(成年後見事件の概況)のうち、申立人の種別から推測することが可能である。
申立人が本人または市区町村長である事案は、明らかに親族の支援が期待できないもので、当然親族候補者はいない。
また、「その他親族」は、申立ては行うが、その他の関与・支援は消極的なことが多い(もともと疎遠であったが、自治体等の要請を受けて申立てを行う例が多かった)。
そうしたことを勘案すると、例えば親族選任率が約48%であった2012年において、そもそも親族候補者がいない事案が少なくとも全体の3分の1はあると見られていた。

この議論は、最高裁家庭総局の統計により一応の決着をみた。
2020年2月~12月の終局事件のうち、親族が候補者となっていた事案が23.6%に過ぎなかったことが明らかとなったのである。
母集団が異なるので単純比較はできないが、同年に就任した成年後見人等のうち親族の割合が19.7%であったことからすると、親族候補者のおおよそ8割が選任されたものと思われる。

この統計発表により、少なくとも直近においては「親族は立候補してもほとんど選任されない」説が誤りであることが明らかとなった。

ただし、次の2点には留意する必要がある。
・一定の場合において、親族が選任されない場合がある(ある程度の類型が整理されている)のは事実である。
・立候補しても選任される見込みがない、制度が煩雑である、等の理由から、制度の利用を避ける親族は一定数いる。

余談となるが、この論点は、今後成年後見制度の解説記事を読む際、正確性の一つの指標となる。
この点を正確に把握できているかどうかを見ることで、記事の筆者が制度全体について本当に詳しいか、最新の動向を追えているかについて、判断材料とすることができる。

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