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パン、パン。どれにしよう?

内地のスーパー、それなりの規模の一支店であるならばいまはたいていインストアベーカリーがある。工場から生地を出荷して店舗のオーブンで焼けばその焼きたての匂いがお客を呼ぶし、だいたいが粉もん、原価を考えれば既製品を仕入れて売るよりは有利なものだ。
が、いまの住まいのエリアは人口の割に商業がまったく栄えていない場所で、最寄のスーパー2軒にはこれがない。暑さに弱く、お勉強コンテンツ販売の機巧猫《からくりねこ》の仕事も基本は自宅で完結、自分自身のお勉強も自室で、となれば、街をでる用事がない限りパンを食べない生活が続くということになる。
もともとがパン好きではまったくないからこそそれが続けられるのだが、あまりに食べられないものはやはり恋しくなってくるのが人情で。

かつて住んでいた島にはパンがなかった。商店は二軒あるのだがその商店にとって、接岸できるとは限らない貨物船で「生鮮品」であるパンをどれだけ仕入れるかは賭けのようなものである。
この一年旅してきた、北大東島、南大東島、天売島、焼尻島それぞれでパンがどれだけ売られているかも観察の対象だった。そこそこ選択の自由がありそうだったのは人口千人を超える南大東で、600人の北大東、250人の天売、150人の焼尻では予約販売(誰々さん、と書かれた札が貼ってある)だったり、個人で本島の店から「輸入」したりのようだ。

出張などで島をでた機会にごっそりパンやらコンビニスィーツを買い込み、回りに配るのがそのころの習慣だった。人口千人を切っている島ではきっと似たりよったりの状況だろう。
人口はその数百倍なのに、商業的にしょっぱい場所(もともとは零細工場&寺町、いまはタワマン銀座)で暮らせているのもそれを思えば…というところか。不思議なものである。

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