偶然の出会いに流されたい
始まりは何だったか。
わたしは今日、3万円ちょっとのトレンチコートを購入した。
「真夏が終わる」と天気予報士が朝のニュースで言ってのけた日で、最後のあがきかのように、100点満点の快晴。明日からは気温もおさまっていくらしい。
わざわざ駅から徒歩12分の道のり。
ちょっと汗をかきながらも、きっとでむかえてくれるとびきり素敵なコートを思えばなんのその。心だけならず、足取りもわくわくとリズムを刻むように歩いて向かう。
そう、始まりはなんだったか。
始まりは4日前のムーンスターの白いローカットスニカーを探していたこと。降り立った駅に残念ながら直営店はなく、スマホの画面でグーグルが「ここに置いているかもしれぬぞ」とおっしゃるショップの中から、小さなセレクトショップを目的地に設定して歩き出した。
その日、わたしは午前中に家を出て、決まった予定もなくのんびりしていたため、ブラブラしたかった気分だったのだ。
たどり着いたお店はこじんまりとしていたが、扱っている商品はトーンがびしっと整列していて、気持ちの良いお店だった。
しかし、ムーンスターは1足しかなかった。誤算。しかもレインブーツだ。え。
最初にお店の規模感を把握しとけばよかったのかもしれないが、そう、わたしは今日のんびりしていたので、スムーズな段取りをそこまで意識していなかったのである。
でもそこで出会ったのがトレンチコートである。店主の方の喋りのトーンが肌になじむ感じで心地よく、うっかり色々喋っていたら、マネキンが着ていたトレンチコートにふと、目が奪われてしまった。ほいほいと言われるがままに袖を通す。ハリがある生地が私の体をかっこよくデフォルメしながら、すっぽり包み込んでくれる。え、いけてる。心がうっかり奪われてしまった。
かれこれ3年は、春か秋がくるたびに今年こそは買おうか・・・なんて思って試着を繰り返したものの、良縁に恵まれなかった。それがここにきて!である。
でも、私はその日靴を探しに来たのであって、決してトレンチコートを探しに来たのではなく、しかも即決できるほど、秋服へのモチベーションは高くなかった。
ので、断わってお店を出て、ムーンスター靴を探しに出かけた。
しかし、である。心はくすぶりだした。
欲しい!!!
日曜、月曜、火曜と秋服に想いをはぜながら、イメージトレーニングを繰り返した。
そういうわけで、わたしは今日トレンチコートをかった。わー!!!
余談だが、帰り道、道端の古いお菓子屋さんでキクスイのポテチも買ってしまった。
そう浮き足立ったのである。
人生はころころと転がってもいいのである。面白がれれば。
あー、早く着たい、トレンチコート!
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