見出し画像

クチナシ

何となく始まる恋なんて嫌だ
稲妻に脳天を打ち抜かれるようにして始まった恋ではないと

甘い香りのする人がいい
宵の薄明かりにぼんやりと光る
白いクチナシが放っているような
胸の疼く香りがいい

寝床に入ってもなかなか寝付けず
黒い猫が横切ると会いに行きたくなり
欠けた月を見ると失恋してしまったような気持ちになり
寝ても醒めてもその女のことだけ

今宵は欠けた月が空に昇り屋根の上を黒い猫が横切り
寝床でなかなか寝付けずにいる

そしてクチナシの花が咲いている


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?